【小説】1人勤務の恐怖体験
「ラッキー、今日1人勤務じゃん!」
1人勤務をはじめてからというものだいぶ慣れてきて余裕というものが出てきた。1人で勤務ということもあり気楽なのでとても好きだ。
ただし、1つ問題があるとすれば深夜に1人勤務があるということだろう。それ以外はとても良い。
「よし、この時間に色んなスマホのログインとかスタミナ消費とかやっておかないとな。じゃないと時間がもったいないや」
1人勤務の時はスマホをいじっていてもとくに誰かに怒られることなんてない。だからこの仕事が一番好きだ。
自分はすっかりとスマホゲームに夢中になっていた。
「さーてと、そろそろ巡回の時間かなー? まあやってもやらなくても良いんだろうけど一応やっておくかー」
自分は待機室みたいなところから飛び出て建物の巡回をすることになった。
「それにしても今日はやけに冷えるなー。寒いから早いところ戻りたいぜ。とりあえず10分回ったらすぐに戻ろう」
自分はスタスタと建物の中を回っていた。
「それにしても妙に不気味なんだよなー。昼間と夜とじゃ同じところでもまったく別に見えるぜ」
怖いので待機室前の廊下の電気をつけておくことにした。そして待機室へと戻っていく。
「さーてと、次は何をやろうかなー」
ガタン! ガタン!
「な、なんだ今の音は? ま、まあ気のせいだろうな。この建物も古いみたいだしな」
最初は何かの気のせいだと思った。きっとネズミが歩いてぶつかったり風の音だったりとかそんなものだと思っていた。
ガタン! バタバタバタ! シュー!
「ちょっと待て、もしかして何かいるのか? クソ、今日は本当によく冷えるぜ」
人がいるかもしれないと思った途端に寒さが増したような気がした。それに気のせいに思っていたことも気のせいじゃない気がしてきた。
あんなによく思っていた1人勤務だったのに今は早く朝になって誰か来てくれ!と思うようになっていた。
ガタン! バタバタバタ!
「クソ…。音がしているからなんだ。絶対に見に行ってなんかやらないぞ…」
めちゃくちゃ怖い。1人勤務なのに間違いなく自分以外の誰かがいる気がする。しかも物音が遠くからとかじゃなくて本当に部屋のすぐ隣とかそんなところから聞こえてくるのだ。
心臓がバクバクして冷や汗がしてくる。なんとなく磨りガラス越しに見える廊下を見てみる。
「えっ、どうしてだよ…」
廊下の電気が消えていた。
「おいおい、ここって自動のセンサーで勝手に電気が消えるとかあったかぁ?」
こういう微妙なのが一番怖い。いるのかいないのか分からない境界線でずっとビクビクしている。
でも電気が勝手に消えるなんてやはり変だ。
クソ…。暖房がついてるはずなのにどうして寒い…
1人勤務の夜がこんなに辛いとは。そしてまたふと気になって廊下が少し見える磨りガラスを見る。
「え…」
誰かが覗いていた。そしてスーッとその顔は引っ込んだ。心臓が一瞬止まったかと思った。
この仕事絶対にもうダメだ。さっきのが何かの悪い夢であって欲しい。その夜はずっと恐怖心を抱きながら過ごすことになった。
そして朝になった。
「おはようございまーす」
「あっ、おはようございます…」
「なんだよ元気なさそうだなー」
「あはは…。まあ…。それじゃあ帰りますね…」
「おう、お疲れ様!」
次の日、辞表を持って即日退職をした。