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初秋の思い出

ふとベランダに立つと、夜空の満月が申し訳なさそうに輝いている。
生ぬるい空気と、時折頬をかすめる海風。
どこからともなく聞こえてくる虫の声。

秋が来たんだな。

雲がかりの月に照らされながら、海の方をボーっと眺める。
この時間って、こんなに静かなんだ。
日中の雑音は消え、静まり返った空気感を満喫する。
贅沢な時間だ。

大きく深呼吸をし、少し背伸びをする。
目をつぶって、遠くから聞こえてくる微かな虫の音を楽しむ。

そういえば、田舎に住んでたときは、騒音のような大合唱だった。

人が少子化で減ってるみたいに、虫も減ってるのかな。
好きでもない輩のいらぬ心配をしてみる。

秋の風物詩といえば、紅葉狩りが思い浮かぶ。
赤ちゃんの掌みたいに、小さくて真っ赤な葉っぱが好きなんだよね。
ブリキの箱にたくさん集めてた幼少期を思い出す。

拾ってきた紅葉を机の上に並べては、満足気に伯父に見せつけていた。
丁寧に一枚ずつ整列させては、自己満足していた。
芸術作品のようだと、大きな紅葉がわたしの頭を覆いつくす。
大きな存在に包まれ、守られ、大自然に生かされている日々に感謝さえしていた。

しばらくして伯父が亡くなった。
目の前に横たわる小さな身体。
病名はない。
老衰だった。

今のわたしと同じくらいの年齢だ。
無職、独身、酒、煙草。
ストレスが限界に達していたようだ。
生きることに悩み果て、心身共にボロボロになった。
安らかに眠る仏から伝わってくるのが分かる。

よくここまで頑張った。
息子の亡骸をやさしく撫でながら、声を押し殺し、大粒の涙を流す祖母の姿が印象に残る。

母より先に逝くなんて...。とは一言も口にはしなかった。
ただ一緒に生を共にできたことの感謝、よく頑張ったとの賞賛。
そして、無事に天国に行けるように必死に願う姿は、聖母マリアのようだ。

祖父は戦死している。
身寄りのない祖母は、女手一つで三男一女を育てた。
そのうちの一女が、わたしの母だ。

幼い頃の母は、それは貧しい生活を強いられたという。
住む場所はあれど、食べるものすら十分に与えられない時期もあった。
教育など贅沢中の贅沢だ。
大学に通う費用などあるはずもなく、高卒で就職をする。

お金はなかったが、心は満たされていた。
家族と一緒に過ごした日々は忘れない。
兄たちが貴重なドロップを分けてくれたこと、一緒に山でザリガニをとって遊んだ日々。
疲れたらおぶって下山してくれた。

母の言葉が頭を過る。

初秋はそんなことを思い出させてくれる。

さて、今年はどんな秋にしようか。
構想を立てながら部屋に戻る。


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