むかご飯
ヤマノイモを掘って食うと旨いので、
庭に生えたものを育てている。
しかし、生えてほしくない場所にも生える。
伸びて伸びて伸びまくって、樹木を覆う。
宿の木を枯らしてしまいかねない。
だから、生垣となっている躑躅の植え込みの中から生えたものは
昨年、芋をせっせと掘った。
しかし、ツツジの根っこが縦横無尽に張っているので、
うまく掘り出せない。
どうしても途中で折れてしまう。
芋の上の端が成長点だろう、
そこを取れれば来年は生えてこないだろう。
なんて思ったら、甘いんである。
また生えてくる。
どこまで掘れば二度と生えてこなくなるくらいのダメージを与えられるのか。
なんせ、芋が全体でどれくらいの大きさ長さに成長しているのか、
全体像が見えないのだから、分からない。
私の腕を全部突っ込んで届く限りまで掘り出しても、
耳の穴に土が入るくらい地べたに這いつくばって掘り出しても、
また翌年にするすると芋蔓が伸びてくる。
おそろしい。
だから、生えて欲しくない場所にヤマノイモが生えてきてしまったら、
芋が長く成長してしまう前に掘り出す必要が有る。
とは言え、見落としも有れば、
上記のように、いくら掘ってもまた生えるということも有る。
※
芋のように長々と書いているが、要するに、
駆除しそこねた芋からイモヅルが伸びまくり、
我が家の生垣や庭木を覆い尽くしたのだ。
夏の間、それを見て見ぬふりし続けた。
いやひどい藪。
葉が黄色くなったら、芋を掘る適期である。
今はまだその手前だ。
※
むかごがたくさん付いている。
わーい。
じゃない。
恐怖である。
これが地面に落ちたら、またしてもこぞって芋が育つのだ。
種もたくさん付いている。
半円が三枚組み合わさったへんなのが、
あの薄っぺたいのが実なのだ。
薄っぺたの間に種が入っている。
薄っぺたの間に入っている種だから、
更に薄っぺたい。
こんなのが地面に落ちたら、見付けにくいことこの上なく、
そっからまたしてもぞろぞろと芋が育つのだ。
※
せめて、見えやすいむかごは取ろう。
食って旨いのだからむかごは取ろう。
庭仕事しながら、ひょいと手を伸ばして、
生のままポリポリサクサクやるのも旨い。
あいや、別にそんなに特に美味ってんでもないけど、
食感が良くって、独特の香りがするので、楽しい。
いつもそうやってつまみ食いをしていた。
しかし、今年はバカに豊作である。
芋欲に目のくらんだ私が芋蔓をずいぶん放置したせいも有るが、
剪定が行き届いたおかげで芋蔓にも陽当たりが良く、
盛んに繁ったことも有るだろう。
直径2㎝を超すものも多い。
※
2週間ほど前には、甘辛く炒め煮にした。
サイズが小さいと、皮の苦みとゴワゴワした食感が強いので、
味を強めにしたのだ。
今日は大きめのものを、炊き込みご飯にした。
米2合強、むかご100g弱、塩小さじ4/3。
ご飯の炊ける匂いに、むかごの香りが混じって、いい感じだ。
ホクッとした歯触りに、かすかにトロみが混じる。
旨い。