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長編文学小説・MとRの物語

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Mというのは、あの、三島由紀夫さんのことです。三島由紀夫さんが現代によみがえり、女子高生とともに小説を書いていく、というお話です。ファンタジーっぽいですが、純文学です。
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2017年11月の記事一覧

53「MとRの物語(Aルート)」第三章 15節 ジン・ジャン(月光姫) その1

いつもありがとうございます。 今回は執筆に、すごく時間がかかってしまっていました。 どこまで書くか、何を省くか。小説の解説回では、その判断が難しい。 タイトル絵は、私の想像する、「本多君の頭の中のジン・ジャン像」です。 (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第三章 15節 ジン・ジャン(月光姫)その1  それから2週間ほど、Rは「豊饒の海・第三巻 暁の寺」の読書に没頭した。と言っても、授業はしっかりと受けたし、母親に代わっての食事の支度は、ずっと続けていた。ただ

54「MとRの物語(Aルート)」第三章 15節 ジン・ジャン(月光姫)その2

例えネタバレになるとしても、 ラストを少しでも、引用せずにはいられない。 私が嫉妬した、M氏の極め尽くされた最高峰ともいえる文体の片鱗を、 ご賞味ください。 (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第三章 15節 ジン・ジャン(月光姫)その2  Rは引き続き、第三巻の読書に没入していた。苦労した一巻、二巻とは違って、どんどんページを消化していく。しかしRはその内容に、もどかしさを感じていた。まるで森の中を当てもなく小走りで彷徨っているようで、ストーリーがあまり進ん

55「MとRの物語(Aルート)」第三章 16節 スパゲティ・カルボナーラ

第三章は、流れ的に、今回で終りのつもりだったんだけど、 気付けば第17節に、続く感じに。なぜそうなったのか。 たぶんその答えは、「女神」が知っているはず。 (目次はこちら)  その夜、母と二人で夕食(Rの作ったスパゲティ・カルボナーラ)を食べながら、豊饒の海三巻読了と、ご褒美の指輪の話をした。そこでRは、Mからもらった指輪が、母親がこっそり用意していたものだと知った。 「ええ?! そんな! Mさんと内緒ごとなんて、ひどいよ!」 母親は、ぺろ、と舌を出して言った。 「

56「MとRの物語(Aルート)」第三章 17節 三保の松原

今回は少し、あわただしい執筆。 推敲すれば、もっとよくなるかもしれない。 でも、今は先に進むことを重視しよう。 この先どうなるのか、私自身、興味深々なのだから。 (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第三章 17節 三保の松原 「海鮮丼とお刺身、おいしかったね!」 Rが言った。 「うん、来てよかった!」 Rの母が言った。 そのあと二人とMは、「豊饒の海・第四巻 天人五衰(てんにんのごすい)」の主人公の一人、透(とおる)の勤めていたと言われる通信所の、モデルとな