見出し画像

2024年ワダデミー賞 ブックス部門候補作

ようやく12月らしく寒くなってきました。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
何を着てよいのか悩む時期が続いていますが、体調にはお気をつけください。

去年のワダデミー賞を読み返してみると、ちょうどシステマ川崎のクラスを始めたところでした。
結局川崎からは離れてしまったので、名前は残しつつも思った以上に今年は開催できませんでした。
クラスの名前についてもシステマ・ノマドでいいんじゃない?と言われますが、場の偉大さを感じている身としては、場所を固定してやりたかったのと、地名が付いていれば誰かしらに受け継げると思ったからなのですが、今のところ上の2つの理由に関しては上手くいっておりません。

ただ名前はともかくも、ちょいちょいクラスに参加してくれる方がおり、非常にいい時間を過ごせている事は間違いありません。クラスの参加者は長く続けている方が多いので、色々と試しがいがありつつ、クラス自体が勝手に進行していく感じもあり、とりあえずはいい雰囲気でできているように思えます。
次にいつできるかは未定ですが、また近いうちに開けたらなと思っています。

それでは、ブックス部門の候補作発表です。
全部は紹介しませんが、悪しからず。

【マンガ部門】
「僕のヒーローアカデミア 堀越耕平著」
「呪術廻戦 芥見下々著」

ついに「ヒロアカ」が終わってしまいました。「呪術」も25日に最終巻2冊同時発売なので、ワダデミー賞発表の頃にはそちらも僕の中でも完結になります。(単行本派です)
今年の4月に「ヒロアカ」の40巻と「呪術」の26巻が同時発売され、同日に読んだ時には心が引きちぎられそうで、単行本でこの威力なのに週間連載で読んでいた人はどうやって正気を保っていたのか不思議なレベルでした。
今回はなぜか「呪術」がクリスマスに発売なので、最終巻を同日に読まずにすみ命拾いしました。
今年は珍しくクリスマスが楽しみです。

ヒロアカを読んでいるといつも“The Dark Knight Rises”のセリフを思い出します。
”A hero can be anyone. Even a man doing something as simple and reassuring as putting a coat around a young boy’s shoulders to let him know that the world hadn’t ended.“
些細な余計なお世話が、誰かを救うこともあるのかもしれません。

【映画関連部門】
「女の子が死にたくなる前に見ておくべき サバイバルのためのガールズ洋画100選 北村紗衣著」

年末になって、今年は映画関連の本をほとんど読んでいなかったなと気づきました。
この賞自体なしでもいいかなと思いましたが、最近読んだこの本は良かったので載せておきます。
タイトルは少し物騒ですが、単に少し変わり者による映画紹介の本ですので、女性でなくても楽しめるかと思います。もちろんタイトルに沿ったテーマがあるにはありますが、配信のオススメでは出てこない映画も多く、何本か観てみたい積観映画が増えました。

【エッセイ・その他部門】
「身体はトラウマを記憶する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 ベッセル・ヴァン・デア・コーク著 柴田裕之訳」
「なぜ働いていると本が読めなくなるのか 三宅香帆著」
「五感の力 未来への扉を開く グラバア俊子著」

「身体はトラウマを記憶する」
長い積読期間を経て、ようやく読み終えました。
内容もさることながら、本自体がそもそも重く、持ち運びに苦労したため、積読期が長くなってしまいました。
本は手元にあるだけでもいいと思っている人間なので、積読に対しての抵抗がないのも理由の一つかもしれません。
さて、この本はさまざまなトラウマ症例と回復事例をもとに、脳と心と体のそれぞれの繋がりを紐解き、トラウマからの回復方法を示してくれる1冊です。
呼吸や動きから自分を知ることが回復に繋がる、というのは重要な示唆ではないでしょうか。
前述した通り、重い(厚い)本ですが、十分に読む価値があると思います。
呼吸による回復の部分はとても良かったので、少しだけ本文から抜粋して紹介します。

“不快な記憶やぞっとするような記憶を呼び起こしている最中にも穏やかに呼吸し続けることを学び、体を比較的リラックスした状態に保つことが回復のために欠かせない。(中略)呼吸に意識を集中していればいるほど、得るものは大きい。(中略)呼吸を続けて、空気が肺を出入りするのに意識をむけながら、酸素は体を育み、生き生きとした物事に携わっていると感じるのに必要なエネルギーを組織に行き渡らせる役割を果たしているいるのだと思ってもいい。”
前回の記事でも呼吸について触れましたが、呼吸の大切さを感じる今日この頃です。

「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」
筆者自身の忙しく働いている時期に本が読めなくなった実体験を基に、過去の日本人はいかに本を読み、時代の変化とともに、いかに本が読めなくなっていったのかを探る1冊。社会の変化による歴史的な側面と、そもそもの読書がもつ特性の側面から、筆者なりの解決策を提示する1冊。
他者の文脈というノイズに触れる余裕が、社会の寛容さをもたらすのかもしれません。

「五感の力」はTwitter(現X)で教えてもらった本です。五感の、どの部分を主に使っているかによって、同じ時空間を共通していても、思っている以上に体験している世界は異なる。ということに気づける本です。自分にとって当たり前なものほど、実は人と異なっている可能性もあり、伝えることの難しさとともに、伝わらない仕方なさにも理由が見つけられるかもしれません。
システマをやってると、言っている意味が理解できないことがままありますが、感覚→言葉として発せられたものを、言葉→感覚に落とし込むのはかなり難易度が高い(というか無理)のだと思います。言語化は言語化で必要ですが、感覚は感覚で受け取ることの方が自然なのかもしれません。
(それができれば苦労はしない?)

【実用部門】
「ウォール街のランダムウォーカー バートン・マルキール著 井出正介訳」
「ユニクロ 杉本貴司著」
「日本製鉄の転生 巨艦はいかに甦ったか 上阪欣史著」
「ユダヤ人大富豪の教え 本田健著」

今まであまり企業に関する本を読んだ記憶がないのですが、今年読んだ「日本製鉄の転身」、「ユニクロ」はどちらも面白かったです。
人に歴史あり。
法人である企業にも、携わってきた人々の歩みがあるのだと再認識しました。
「ユニクロ」は柳生さん自身ではなく、柳生さんに近しい人から柳生さんの人生とも言える「ユニクロ」を紐解いていく作りになっていて、本人が語るよりも人物像が浮かび上がってくるように思えます。

【小説部門】
「君の膵臓を食べたい 住野よる著」
「方舟 夕木春央著」
「爆弾 呉勝浩著」
「恋文の技術 森見登美彦著」
「イクサガミ 人 今村翔吾著」

「君の膵臓を食べたい」は数年前に映画化もされ、かなり話題になっていたのですが、読まずにいました。なんとなく、そろそろ読もうかと思い手に取ると、やはり面白かったです。癖のある、少し屁理屈っぽい会話劇が昔の自分が話しているように思えて、親近感が湧きました。悲しい面もありながら、ほっこりもさせてくれる物語でした。

「方舟」
僕はどんでん返しにあまりびっくりしないタイプの人間だと思っていましたが、これは衝撃を受けました。地下の密室で話が展開するので、1人で読んでいるとそれだけで怖くなってくるのですが、ラストの衝撃はフィンチャーの“セブン”に匹敵するくらい心を抉られます。
少しの間、人間不信になるレベルです。
ネタバレ厳禁なので早く読んでください。

「爆弾」は帯に『読んでくれ、止まらないから。』と書いてあるのですが、まさにその通りにページをめくる手を止められず苦労します。抜群に面白い。
ただ、読み終えた後に残るものがないんですよね。サイコパス×天才の構図はちらほら見るのですが、対決自体は面白くても後に残るものがないんです。そこが残念というか、そこまで求めるのがいけないのか。
こんなこと言っていますが、続編の「法廷占拠 爆弾2  呉勝浩著」もオススメです。

「恋文の技術」は手紙の文章だけで話が進む一風変わった小説です。手紙が絡むストーリー好きとして有名な私ですが、こちらは主人公の書く手紙のみで進行するのに、なんとなく返信も想像できるように作られており、よくできた小説だなと思いました。
なぜか主人公の文通相手として森見登美彦自身も登場するという大胆さは森見登美彦らしいとも言え、地に足つかなすぎて浮いていってしまいそうな、おふざけたっぷりの小説でした。

そして、「イクサガミ 人(じん)」!
Netflixで近々実写ドラマ化公開予定のイクサガミの3冊目。ドラマの主演は岡田准一です!
天、地、人の3冊で終わるかと思いきや、来年もう1冊出ることが決まりました。
嬉しいやら、待ちきれないやら。
明治維新後の日本で始まった蟲毒という、散り行く侍たちによる東海道サバイバルレース。
1冊目の「天」から堪らなく面白いのですが、3冊目の「人」は蟲毒の終盤に突入していきます。生き残っているのは化け物級の強者のみ。激しさを増す生き残りを賭けた戦いの中でも、今村翔吾らしい人を諦めない登場人物の姿勢に心打たれます。今回の「人」では甚六という主人公の義弟が良すぎて、スピンオフで甚六を主人公にしたものを書いて欲しいレベルです。
甚六の使う奥義が皮膚感覚で動くことによる技(技?)なのもとても良いです。
貪狼。
僕も練習中です。
京都から始まった東海道サバイバルレースもついに東京に入り、最終巻「神」に繋がる。
ドラマも最終巻も楽しみすぎます。


今年は例年以上にいい本に巡り会えたように思えます。
来年も良き出会いに期待しつつ、年内も乗り切りたいと思います。
ではまた。

いいなと思ったら応援しよう!