いくつになってもどんなになってもカッコつけたがる
特にここ最近は乃木坂46ばかり聞いている。サブスク配信されているから手を出しやすく、あっという間にほぼ毎日乃木坂漬けだ。先日旅行で旭川に行った道中は「サヨナラの意味」を聞き続け、泣いていた。そして何よりみんなかわいい、一度興味が向けば日に日にメンバーに詳しくなっていく、そして日に日にみんな卒業していく、全くついていけない。世の中の時間は若く美しく、そして輝く人たちを中心に流れていることを否が応でも突きつけられる。
生来の天邪鬼が祟って思春期の殆どを海外のよくわからない音楽に捧げてきた。バンド活動に明け暮れロックだメタルだ、オルタナティブロックだパワーメタルだと言っているうちはまだよかった、ある一時、今となってはマイノリティでありたい一心で聞いていた(しかし今思えばただの消費者にマイノリティも何もあったものかと思う)民族音楽とか、辺境国でガラパゴスな発展をしたディスコ音楽とか、遊牧民の奏でるオーケストラのような音楽に傾倒していたあの頃、当時聞いていた音楽には怖いもの見たさや得体のしれない物への興味はあったかもしれないが一過性のもので、特定のグループやバンドへの入れ込みは薄かった気がする、強いて言えばバルカンビートに傾倒していた時にほぼ毎日聞いていたシャンテルくらいだろうか。要はそういう音楽を聴いている自分になりたかっただけかもしれない。
兎にも角にも、久々に毎日のように音楽を聴いている。毎日何かを聞いていると人に会うときにも耳にイヤホンがぶら下がっているので音楽の話になったりする、恥ずかしげもなく乃木坂46を聞いていると受け答える。私は昨今の社会がここまで多様性を認めてくれるとは知らなかった。単純に乃木坂46の人気知名度のおかげだろうか、さすがレコード大賞だ。そして何より10年に及ぶ活動における彼女たちの努力の賜物だろう。最高に尊い。
他人に許容されるとうれしいもので聞かれてもいないのにべらべらと、何の曲からハマったとかあのアルバムが好きでとかあの曲は誰それがセンターで卒業曲でと喋り始める。聞かれてもいないのに。誰も聞いてもいないのに。音楽性の良さであるとか、結句秋元康の作る音楽が現代日本人には嫌になるほど良い音楽として反応してしまう、「自分が乃木坂46を聞いている理由」をそんなところにもっていきたいのだ。
だがまぁしかし、そんなわけない。聞き始めた理由など整った容姿の若い女性アイドルがズラリと並ぶ壮観さに心躍ったからにすぎないことも、ちょっと昔音楽やってたという自負心からあくまでも自分は音楽側の人間だという雰囲気を出したい、そして何よりかっこつけたい一心で直前まで自分語りに必死になっていたことも。だいたい一番好きな鈴木絢音さんはそこまで表題曲に参加していない、こないだは選抜入りしていて本当にうれしかった、世界で一番かわいいと思う。
隙あらば自分語り、平素から気を付けていないと気付いた時にはちょっと冷や汗をかくとこまで来ていることが多々ある。素直になって恥ずかしい思いをするようなフェーズはとっくに超えている、中年が斜に構えてかっこつけている姿なんか、当の本人がいなくなってから笑いものにされるだけだ。
「メンバーが端から端までめっちゃ可愛い」「乃木坂工事中に出て話してる時と写真集のグラビアのギャップが最高」「最近もう楽しいことが無いから若くて可愛い女の子の青春を応援したい、破滅的に金を使いたい」
つまるところ好きな理由を並べてみればこんなところだ。音楽はついでと言ったら言い過ぎだが、別のグループが歌っていたら好きになっただろうかとも思う。とは言え音楽も聞いている、今度出るベストも買う、5枚くらい。
振り返ってみればこれまでハマってきたものも入り口は変なところにあった気がする。素行が悪いと預けられた群馬の田舎で他にやることも無いからと部屋にあったフォークソングのCDを聞き、金がないのにオシャレの真似事がしたくて古着ばかり買うようになり、憧れの先輩に近づいて接点を持ちたい一心で楽器をはじめ、貧乏で娯楽が無いから酒を飲みサウナに通い、田舎の生活に馴染むため車を買い、運転して行った先でやることが無いからキャンプして釣りを覚える。もしかしたらこれからまた変な事にハマるかもしれない。最近は未だに橋本奈々未が好きすぎるせいでショートヘアーという理由だけで動画をよく見る、鍵盤屋SAEKOばかり見ている、もしかしたらそのうちライブ配信に投げ銭をすることが趣味になるかもしれない。
何事も没頭しているときが一番楽しいのは明白で、周りの目を気にしだしたら話は変わってくる。脇目もふらず好きなものにただまっすぐ自分の欲望のまま生きられたらどれだけ素晴らしい人生かと、そんな生き方をしたかったものだ。改めて振り返る、直情的にすぐ流されてばかりで一心不乱に頑張れたことなどあっただろうか。一生懸命な若い人を見るとそんな自分を恥ずかしく思い後悔の念が堪えないが、せめて輪に入りたいなどという勘違いだけは起こさないよう自制するのが精一杯だ。
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