香里園で欠かせなかった名店たち。
お盆期間中なので、実家がある大阪に帰省している。
大阪の寝屋川という街で生まれた。
最寄駅は「香里園」という京阪電車の急行が停まる駅だ。
そして生まれてこのかた、社会人として働き出すまで20年近く暮らしてきた。
だからといってこの街にめちゃくちゃアイデンティティがあるわけではない。正直なところ。
でも、よく通っていたお店や、大好きだった食べ物はある。
なので、その3つを振り返ってみたいと思う。
先に断っておかなければならないのは、いずれの3つのお店も残念ながら今は営業していない。
お盆なので、故人に思いを馳せ、大好きだった味や店の感じを思い出してみたいと思う。
一つ目、アートタウンの精肉屋が作るコロッケ。
これは、最初は友達のおばちゃんが買ってきてくれて自分の食べたのがはじまりだったと記憶している。
他のコロッケにはない、肉の甘みがあってめちゃくちゃ美味い。
そして、一個50円というとてもりーずなぶるな価格だった。
それゆえ、中学や高校のクラブ帰りにお店に寄ってよく食べていた。
そして、この帰省したタイミングでこの店が入っていた「アートタウン香里」に行ってみた。
建物からして昔のおもむきはなく、新しい建物になっている。
中に入り、元々肉屋があった場所に行ってみるが、そこにはお店はなかった。
どこか他の場所に移ったのかもしれないと思い、ショッピングセンターの中をぐるっと一周してみるが、それっぽい店は見当たらない。
仕方なく、元々お店があったところには、お惣菜屋さんがあったので、そこで丁寧にお惣菜を盛り付けている店員さんに「元々ここにあった、精肉屋さんってどこにありますか?」と聞いてみた。
するとその店員さんは一度だけ目を合わせて、その後は目を逸らした状態で「もう、辞めはりました。」とシンプルに答えた。
あのコロッケの味を味わえないのはショックでならない。
二つ目は、定食屋「菊水」である。
香里園の駅から、淀川の方にむかって3分ほど歩いた場所にある、昔ながらの定食屋さんである。
何を食べてもボリュームがあって美味しいのだが、なかでも「スタミナ定食」が絶品だった。
豚肉と玉ねぎともやしで炒められた料理に、千切りキャベツが添えられており、一緒に食べるのがいつもの食べ方だ。
甘ったるくなく、それでもって、シャキシャキした玉ねぎともやしの食感が残っており、大盛りご飯との相性が抜群だった。
お昼どこで食べようかと考えた時の候補にあがってくる名店である。
その前を通りかかったら、BISTROみたいな店になっていた。
あのスタミナ定食を食べられないのは本当に残念でならない。
三つ目は、誰もが認める街中華の殿堂「大三元」である。
4年ほど前に惜しまれつつ閉店してしまったが、あそこの中華が食べれないのは残念でならない。
晩年はインターネットの発達もあって、遠くの人からも認知されて行列を作っていたが、何を隠そう小学校1年生から通っている私からすると、大三元と共に生きてきたといっても過言ではない。店内は、カウンター8席ほどと、4人掛けのテーブル席が2つとこじんまりした店内である。
厨房からは、大将が鍋をふる音が聞こえてくる。
メニューは個別の席にはなく、壁に黄色の画用紙にわかりやすく書かれている。
このメニューも私が通う間に2回ほど綺麗になった。(値段とかは変わってなかったと思う。)
特徴といえば、やはりその「量の多さ」にある。
特にご飯物は、普通を頼んでも、成人男性がやっとのこさ食べられる量の、普通の店の特盛レベルの量が出てくる。
そして、そこにプラス100円すれば「大盛り」にすることができて、大盛りともなれば食べ盛りの啓光学園のラガーマンじゃないと完食できないほどの量がでてくる。
ある時、唐揚げとご飯類を頼んだけが、あまりの量に唐揚げを残さなくてはならなくて、もったいないので、空になった2段式の弁当箱に入れて持って帰ろうとしたら、一段に唐揚げが一個しか入らなかったぐらい唐揚げもでかい。
そしてもちろん量だけがうりなわけではない、味も一度食べたら、もう一度食べたくなるクセになる味なのである。
いつも東京から帰省するタイミングで必ずよっていたのだが、今はあの味に出会うことができなくなってしまった。
香里園に帰ってくる理由の7割がなくなったと言っても大袈裟ではない。
大三元の味を引き継いでいる店があれば、是非教えて欲しいものだ。
こうして、僕を作ってきてくれてきた景色が呆気なく灰になってしまった。
僕の舌と記憶にはしっかりと刻まれているのである。