🌈🌈🌈【映画：PERFECT DAYSの音楽シーンと木漏れ日万華鏡ノートからの断章】🌈🌈【PERFECT DAYS】9Music plus1 & 9 Stories/パーフェクト デイズ 9ミュージックplus1 & サリンジャーの 9ストーリーズ ルー・リードのperfect day】木漏れ日万華鏡デイズ

1.朝日のあたる家 アニマルズ アメリカのフォークソング/バナナフィッシュにうってつけの日/ニューオリンズにある朝日のあたる家でバナナフィッシュが食べられる話なんてどこにもない。/おしゃれなタイトルにもかかわらずサリンジャーの主人公は戦争のトラウマで自殺する。英語タイトルはA Perfect Day for Bananafish❗️何とパーフェクト・デイなのだ。若き日バンド・リードギターだった15歳の頃、朝日のあたる家は僕にとってベンチャーズだった。ファズマシンでギター🎸の音をわざと歪ませて弾くのがかっこ良かった。エリック・バードンのあのアニマルボイスの替わりに歪んだロックギターサウンドが心地良い時代のシンボルだった。ロックギター少年にとってファズマシンとワウワウマシン(クラプトンもクリーム時代よく使っていた)でブルージーなフレーズを弾くことが理想だった。アニマルズの朝日のあたる家では例外に、キーボードソロがメインでありロックキーボードのお手本的なサウンドになっていたといえる。(ベンチャーズ版もやはりキーボードソロをたっぷり入れていた)イントロのアルペジオだけで初期のディランも継承していたオリジナルの民謡からロックへperfectに変身したことが確認できる。アニマルのようにシャウトするエリック・バードンが1日の仕事の始まりに車の中でかかる面白さ。主人公、平山が時おり通うスナックでママを演じた石川さゆりが日本語で歌うお色気がある【朝日のあたる家】も秀抜だ。

2.Pale Blue Eyes ベルベット・アンダーグラウンド/笑い男/ベルベット・アンダーグラウンドの中に笑い男と言われるほどに楽天的ムードの男がいた試しはないが。ベンダースはルー・リードとベルベットアンダーグラウンドがお気に入りのようだ。確かに彼等だけ2曲入っている。ニコ入りベルベットアンダーグラウンドははじかれたようだが、家出して転がり込んできた主人公、平山の姪の女の子の名前は【ニコ】だった。ちなみに、【平山】という名前は小津映画の主人公にひんぱんに出てくる名前とのこと。そして映画のタイトル【PERFECT DAYS】はルー・リードの【PERFECT DAY】からだろう。日本の映画監督・小津安二郎とベルベットアンダーグラウンドとベンダースが三角形に繋がっているようだ。

3.the Dock of the Bay オーティス・レディング/小舟のほとりで？書いたのかわからないが、オーティス・レディングはソールミュージックのベテラン大御所だと思っていた自分は馬鹿だった。何と彼は26歳の時、飛行機事故で亡くなっていた。つまり、彼のすべての作品は20代前半の若者ミュージシャンの作品なのだ。しかし、何という成熟度だろう。僕の大好きなWhat's Going Onのマービン・ゲイは父親に銃殺されている。ソールミュージックのビッグネイムは悲劇的な人が多いのか。ローリングストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガーにおいて彼は何と8位なのだ❗️映画に使用されたthe Dock of the Bayは飛行機事故の3日前に録音されたという。素晴らしい、合掌。

4.Redondo Beach パティ・スミス、ヴィヴィアン・ウエストウッドに捧げる曲/コネティカットのひょこひょこおじさん/ パンクの女王がパンクファッションの女王・ヴィヴィアン・ウエストウッドに捧げて唄った曲なんて良すぎるような。映画の中でカセットで聴くNYパンクの女王は本来なら日本人の日常になじまないはずだが主人公・平山がトイレ清掃業用のワゴンの中で若者2人を乗せて聴くと、短編ロードムービーの一場面に見えてくるから不思議だ。。パティ・スミスの歌い方はどこかジョニー・ロットンに似ている。どこか不貞腐れたような匂いが漂う。

5.Walkin' Thru The SleepyCity Rストーンズ/対エスキモー戦争の前夜、ストーンズのメンバーがエスキモーの前でR&Rを演奏したなんて聞いたことがない。ストーンズの曲にしてはどこかCMっぽくヘビーなストーンズファンには支持されにくい曲だが1曲1曲が短編ロードムービーとしてこの映画をとらえた場合ハマっている。夜の東京にも合っているから不思議だ。いくらいい曲でもサティスファクションなどこの映画にはそぐわない。主人公、平山はささやかな人生を歩んでいるのだが一瞬一瞬の流れを美的感性豊かに味わうことにかけては一流の人物だろう。過去がある人がややレイドバックして現在を坦々と生きている彼にはやや影はあるがどこか木々が太陽を浴びて静かに揺れているような音楽が似合うようだ。

plus1.青い魚、唯一の日本語の曲。金延幸子 。彼女の名前は日本ではあまり知られていない(若き日、中川五郎や久保田麻琴や西岡たかし等とフォークシーンにいたようだ)が、ヴェンダースも高崎氏も愛聴していたとのこと。彼女は来日したポール・ウィリアムズと結婚し、渡米したので日本で知られることはなかったようだ。しかし、何とSF作家のフィリップ・K・ディックと知り合いで彼の勧めで再び歌い始めたという。日本のジョニー・ミッチェルといわれたこともあったという。【み空】という幻の名盤の中の1曲が映画で使用された【青い魚】だった。日本人女性のシンガーソングライターの先駆けの人のようだ。運転する平山の横顔とよぎる街角の風景にも合っているのはさすがベンダースな選曲だ。

6.Perfect Day ルー・リード/ド・ドーミエ=スミスの青の時代/ルー・リードにとってベルベット・アンダーグラウンドの時代はバラの時代か青の時代か。日常風景にも陰影が深く刻まれたようなイメージがある彼の曲はさりげなく主人公・平山に似合っている。ヴェンダースならではの流石の渋いタイトルと選曲だ。ルー・リードの曲とベルベット・アンダーグラウンド名義の曲2曲は選曲されたがヴェンダースの(ルー・リードとニコは仲が悪かった)配慮なのかニコ&ベルベット・アンダーグラウンドの曲はない。その代わりなのか(確かニコはドイツのモデル出身？アンディ・ウォーホルがやや無理やりボーカルにするため連れてきた経緯があったらしい)主人公、平山のところに家出して逃げ込んできた姪(彼の妹の娘)の女の子の名前は【ニコ】だった。結局、ニコの名前は映画の中での十分に生かされることになった。

7.Sunny Afternoon Picture Book キンクス/エズミに捧ぐ 愛と恥辱のうちに。キンクスについてはあまり知らないと思っていたが【You Really Got ME】という何度も何度も聴いていたストリートロックのお手本のような曲が彼らだった。キンクスは、【UKロック史上最も過小評価されたバンド】といわれるが、ザ・フーと共にUKパンクロックの源流というなかなかのポジションのバンドなのだった。映画のなかでは平山が部屋にいるときかかる曲はややポップな曲なのだがシンプルで簡素な彼の畳部屋が一瞬カラフルな空気に変わる。ヴェンダースのセンスが光るとき。車の中でかかるときは短編的断片的ロードムービーに、畳部屋でかかるときは簡素な空間の色彩に。

8.Brown Eyed Girl ヴァン・モリソン/愛らしき口もと目は緑/ヴァン・モリソンはマーティン・スコセッシのThe Bandの解散コンサートの映画にディラン、クラプトン、ニール・ヤング、ジョニー・ミッチェル等と共に出演していた。あの晩年のイメージが強いので若くスリムな彼のお顔と声がみずみずしい。Perfect Daysの主人公である平山は、このみずみずしい彼の声を車の中でカセットで聴くたびに若い自分を思い起こしているのだろうか。誰もがそんな曲を持っている。毎日の一見単調なルーティンライフの中で。

9.Feeling Good 二ーナ・シモン/テディ/その昔、テディという名の隠れ家的いかしたバーがあった。が、二ーナ・シモンをかけていた覚えがない。僕は二ーナ・シモンのHere Comes The Sunが大好きなんだが残念だった。Feeling Goodのリリックはシンプルだが彼女が唄うと奥ゆきがあり違って聴こえるから不思議だ。映画の締めくくりは何とジャズシンガー、二ーナ・シモンだった。JAZZで締めるとは、長廻しで主人公の平山が車を運転しながら泣いているようだが同時に微笑んでもいるような不思議な表情で朝焼けの東京の街をいつもどおり仕事場へ向かうところでこの映画は終わる。エンディングをややブルージーなJAZZで締めるとは何という粋な選曲！このPerfect Daysは実際、音楽を友とした断片的ロードムービーととらえることもできるだろう。繰り返しの単調なルーティンライフの日常の中での、断片的ロードムービーとそんな日々の合い間に現れる【木洩れ日モーメントの美的瞬間】何が起こっても起こらなくてもFeeling GoodのPerfect Daysなのだ。
It's a new down
It's a new day,
It's a new life for me.
and I'm feelin' good
(Nina Simone)
夜が明けて、新しい一日が始まる、私は私の人生を生きる、最高の気分だわ　ずっとこの瞬間を待ってたの(ニーナ・シモン)

🌈🌈🌈【木漏れ日万華鏡ノート/ヴィム・ヴェンダースの映画PERFECT DAYSに思う断章】
just a perfect day/渋谷の公共トイレの清掃業を営む主人公、平山の生活は、東京下町での最先端デジタルテクノロジーどころかTVもない部屋での単調なルーティンライフだが常に新鮮な小さな喜びに満ちている。(霧時雨　富士を見ぬ日ぞ面白き、UnperfectだがPerfectなのだ、に近いか)若き日から聴き続けたカセット音楽と古本の文庫本で文学を読むのが楽しみ、木の好きな平山は自身を重ねるかのように木々の写真をよく撮って人生は風に揺れる木のようだ。(彼は変わりばえのしない日常を生きながらも【ただそのまま】にレイドバックし都市生活者として解脱する【木洩れ日モーメント】への道を見つけたのだった。)
【この世界は本当は沢山の世界がある。繋がっているように見えても繋がってない世界がある。】彼は若き日の成功したビジネスマンだった過去を何らかのカルマによって捨て、あたりまえの都市の日常生活の中から解脱する道を見つけたのだった。一見禅モンクのように規則正しいルーティンライフだが実は一瞬一瞬の今を生きる喜びに満ちた色彩にあふれた墨絵のような人生なのだ。元々、【クリエイションはPerfectなのだった！】世界は一瞬一瞬を生きる喜びに満ちている。

木漏れ日万華鏡ノ➖トから