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瑞原明奈はMリーグそのものである(1)

 Mリーグにおける推しの選手やチームを問われた時、少し、躊躇う。
 チーム単位では「箱推し」としたいが、やはりパイレーツかサクラナイツというところに落ち着いてしまう。どちらにも、素晴らしい死闘を経ての涙の優勝というドラマがあり、個人的にはMリーグ名場面史のワンツーだ。小林剛VS魚谷佑未/堀慎吾VS近藤誠一。そのどちらにも立ち会って居た多井隆晴、黒子に徹しきった沢崎誠と滝沢和典。みながプロ、であった。
 では、どちらのチームが上位かといえば、以前記事にもしたがパイレということになる。自身が生粋の天鳳民であるという理由は大きい。

パイレーツの思い出|カイエ (note.com)

 このあたりもはや理屈でなく、本能に訴えかけての判断になるが、やはり順位表を見たときにどちらが上の方が「ぐっ」とくるかで測ると若干、海賊たちに軍配が上がるのだ。

 同様に、個人の推しに関しても本能に闘わせるしかない。
 例えば、岡田と東城が同卓している時にどちらに肩入れしているのか、堀と小林では??などなど。しかし、そんな心の勝ち抜きトーナメントにおいて勝利するのは、いつも瑞原明奈という選手なのだ。
 いや、架空のトーナメントなど開催するまでもなく、この間、毎年ローソンで販売される正月くじで購入したのは「パイレーツ」だったし、そのカテゴリから「瑞原明奈の大吉」を引き当てたときは、喝采を叫んだのだった。ヘッダー画像参照。
 要するに、私の推しは、どうあってもパイレーツの瑞原明奈らしいのだ。どこか屈折した、むず痒い感情になるのは、私がミーハーであると思われたくないミーハーだからであろう。ちなみに大学の遠い後輩でもある。

 麻雀そのもの

 2023-2024シーズン。伊達朱里紗が開幕から4連勝を果たし、そのあまりの強さに「麻雀そのもの」と最大級の賛辞を得たことは、おそらく白鳥プロあたりが広め「その研」でも配信ゲストの紹介フレーズとされたことからも、知る人は多いだろう。伊達ちゃんは、麻雀そのもの。いやあ、かっこいい。
 かつてヤンキース時代の田中マー君が「THE GAME」と称されたことがあったが、それに比肩し得るかっこよさだ。「そのもの」というのが良い。
 別の修辞技法として、

 麻雀を愛した人間は山ほどいるが、麻雀に愛された人間はそうはいない。

 というものがある。野球・将棋・格ゲー・・「麻雀」の部分は、様々に代替可能だ。数多の創作で斯様なレトリックは用いられてきた。かっこいい。この言い回しもかっこいい。伊達はこれにも当て嵌まりそうだ。まだプロ入り4年とかだぞ。末恐ろしすぎる。
    反面、悔しさもある。嫉妬に近い感情だ。

 麻雀がそうさせた

    さらに私が最近感銘を受けた修辞として、先頃、最高位を連覇した竹内元太の「麻雀がリーチさせた」という発言がある。
 第48期最高位決定戦の15回戦目に、ダブリー一発ツモ裏3というとんでもない和了を決めた竹内最高位の、試合終了後のインタビュー。
「ダブリー、あれ一瞬ダマテンにしようと思ったんですけど危なかったですね。流れ的にはあがれないかと思ったんですよ。その前の自信あるリーチが空振りしまくってたんで」
「だけど、麻雀だからしょうがねえってリーチしたら、あんなんなりましたね」
僕はリーチしないんですけど、麻雀がリーチさせた感じですね」

   なんと美しい表現だろうか。しゃべりの巧さも知性も感じさせるし、それでいて悪ガキのようなあけすけ感もある。背も高い。完璧なインタビューではないだろうか。
 麻雀そのもの。麻雀が◯◯させた。
 麻雀という本来客体である大文字の物質が人と対置され合一され、あるいは人をして使役せしめている(?)。レトリックの魅力に撃たれ、ちょっと何を言っているか分からないが、要はそんな文章は現実的に破綻しているのに、妙な説得力やかっこよさがある。ということだ。そこに痺れる憧れる。だから私も最近、よくこの言い回しを用いている。

「俺はそんなつもりはなかったがね。ただ、麻雀が3ラスを引かせた」
「大好きな麻雀が怖くなったんじゃない。麻雀が、大嫌いな俺を恐れているんだ」

 命題における逆や対偶の例文ではない。やはり日常使いは難しいか。
 それではこれらに倣って、ここに新たなレトリックを提唱してみよう。

 瑞原明奈はMリーグそのものである

 どういうことか。
 何も私の最推しだからでも、今や瑞原が麻雀界のみならず「闘うママさん」としての女性のアイコンだからというだけに止まらない。
    ここで参考までに、瑞原のMリーグを簡単に振り返っておこう。
 プロ歴わずか9年。9年といっても、多くの、特に男性プロはそれまでに10年近い麻雀の経験があるはずだ。家族にも友人にも職場にも麻雀との縁がなく、たまたま目にした放送対局から観る雀になり、天鳳で腕を磨いて一気に上り詰めた様子は、まさに男性では考えにくいシンデレラストーリー。いや、むしろ今後このモデルケースで多くの若者が輩出されていくだろう。その意味では先駆者ともいえる。
    ちなみに伊達選手もほぼプロ歴=雀歴だと思われる。われわれ世代が「流れ」だの「雀鬼流」だので学んだ似非知識をショートカットし、おそらくはプロ直伝で実戦的に純粋培養されたのが、伊達ちゃんという、麻雀そのものの正体だ。この、高速道路を利用するかのようなスピード勉強法も当然、ネット麻雀時代・動画講義時代には、マジョリティになるだろう。
 瑞原の話に戻そう。

→(2)へ続く

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