将来の可能性を残すために
大学病院にかかって初めて主治医と話した際、直ぐに生殖外来にかかることになりました。
過去の記事を参照:病は人を選ばない|乳がんサバイバー (note.com)
生殖外来に行ってみると、わたしのように治療を目前にしている人のみならず、不妊治療をしている方など、お若い方が多くいらしたことに驚きました。当事者になってみて、初めて知ることが多すぎました。
妊孕性温存治療
妊孕性(にんようせい)という言葉は、当時初めて聞きましたが、妊娠するための力のことを意味しています。
わたしがかかっていた大学病院は、「神奈川県がん患者等妊孕性温存治療費助成事業における指定医療機関」でした。薬物療法(特に抗がん剤治療)や放射線治療は、生殖機能が低下する又は失う恐れがあるため、卵子凍結もしくは受精卵の凍結を行うことで将来の妊娠の可能性を残す手段があります。わたしは独身でしたので卵子凍結の選択を行いました。
通常、月経時に1つ排卵が起こります。半年くらいかけて卵子は作られているようです(驚きですね)。
可能な限り多くの卵子をとるために、1つと言わず卵子を多く育てるためにホルモン注射を毎日行うため、病院に通いました。注射位置は腕かお尻か選べましたが、わたしはお尻にしてもらっていました、特に意味はなくなんとなくですが、お尻の方がお肉があるので痛くないかなという単純な理由です・・。
卵子が育ちすぎてもダメ、育っていなくてもダメなので、卵子の成長具合を見ながら採卵日を設定してもらい、最後の注射のみ採卵日・時間から逆算して(病院がやっていない時間帯のため)自分で注射を行いました。
日に日に育つ卵子(という感覚はあまりなかったですが)手術や治療の前だったため体力はありましたが、下半身が重いという感覚はありました。
採卵は日帰りの手術で静脈麻酔なため、気付いたら終わっていましたが、子宮のあたりが痛い重い感覚がしばらくあり、その間は病院で横になって安静にしているように言われていました。
採卵数19個、うち成熟卵数12個という結果となり、12個の卵子を凍結するに至りました。証明も出してくれます。
わたしの場合は手術が先で、その後抗がん剤治療となったため、もう一度採卵に挑戦ことが可能なスケジュールではありました。産婦人科医の友人経由、不妊専門医に見解を聞いてもらったところ、何個あれば十分というものではないが(可能な限り多くの卵子を残しておいた方が良く)もう一度できるならした方が良いというアドバイスもありました。
しかし当時のわたしの体力と精神力(特に精神力の方が大きい)からは、一回の採卵で終了と判断しました。その判断が正しかったかどうかは今でもわかりません。というのも、人工授精→妊娠→出産までいく確率は7%とかなり低く、12個の卵子を凍結しておいても1人産めるか産めないかという確率になります。
都道府県によって助成が異なります
大学病院においても教えてくれましたが、居住地域によって助成が異なりますのでチェックすることをおすすめします。経済的に負担になることは間違いなく、しかしそのために将来妊娠の可能性を諦めてしまうことはとても残念なことです。特にAYA世代の若い方々は、活用できるものはしていただきたいと思いましたので、わたしは神奈川県の助成を受けましたが、参考に残しておきます。
提出する書類は、以下3種類でした。医療機関にも署名捺印してもらう必要があり、全ての書類が揃い次第「神奈川県 がん・疾病対策課」に郵送手配しました。
①神奈川県がん患者等妊孕性温存治療費助成事業申請書
②神奈川県がん患者等妊孕性温存治療費助成事業に係る証明書(妊孕性温存治療実施医療機関)
③神奈川県がん患者等妊孕性温存治療費助成事業に係る証明書(原疾患治療実施医療機関)
なお、助成額は妊孕性温存療法に要した医療保険適用外費用であり、精子は2万5千円、精子(精巣内精子採取)は35万円、胚(受精卵)は35万円、未受精卵子は20万円、卵巣組織は40万円が上限となっていました(注:2021年当時の情報です)
わたしは未受精卵子でしたので、20万円の助成を受けました。2回まで助成が受けられますが、わたしは1回のみで終了としました。
実際にかかる費用
妊孕性温存療法に要した費用は、医療保険適用外です。実際にわたしがかかった費用は合計495,840 円でした。そのうち、20万円補助が出た形です。
○卵子の採取に要した費用(検査や排卵誘発剤代などを含む)374,840 円
○凍結保存に要した費用(凍結処置料、初回の凍結保存料など(更新料は含まない))121,000 円(注:凍結する数によって金額は変動します)
一年に一度、更新の際に更新料金が発生します。保管は47歳までとリミットがあります。果たしてわたしは妊娠や出産までたどり着けるか、人生はまだまだ続きます(と信じたい)。