北海道の廃線跡探訪 第76回 標津線(9/9)奥行臼~厚床間
1.ごあいさつ
ご訪問ありがとうございます。
北海道の廃線跡探訪第76回 標津線奥行臼~厚床間です。
この区間は奥行臼駅がほぼそのまま保存されているほか、路盤は厚床フットパスとなって整備されているところもあり、風連川橋梁などは圧巻です。
なお、これからの投稿予定路線などは、初回記事にありますので、そちらをご覧ください。
2.奥行臼
奥行臼は別海町指定文化財として、駅構内が営業当時のまま保存され、末期には撤去されていた貨物側線も復元されている。
建物も、駅便所・保線トロリー小屋や詰所があり、さらに春別駅の風呂場も移築保存されている。
もちろん、線路やホーム、通信柱や駅名標などもそのまま。
車輌がないのでガランとしているが、なまじ色あせた車輌があるよりは、かえって営業当時を彷彿とさせる。
構内は手入れが行き届き、一見廃駅という感じはしないが、傾いた通信柱や錆びたレールを見ると、もう列車は来ないのだと実感される。
営業当時との違いは、駅舎のアルミサッシが木製窓枠に戻され、車寄せにあった駅名板がない(板自体は元の待合室内に保存)のと、保存関係の看板がある(駅舎にもつけられている)くらいだろうか。
文化財として、当時の雰囲気を残すため、極力よけいなものは設置しないという方針なのかもしれない。
内部も、駅事務室は別として、待合室に記念スタンプが置かれ、写真類が飾られているのが目立つ程度。
建物もごく一部がなくなっているが、営業末期にはすでになかったのかもしれない。
標津線廃止から30年以上、よくぞここまでよい状態を保っていると感心せざるを得ない。
駅前近くには国指定史跡旧奥行臼駅逓所もあり、ちょっとした歴史的景観保存地区のようになっている。もちろん移築したものではないから、存在感は抜群。
3.奥行臼~厚床
奥行臼を出ると、路盤は湿地帯や牧草地のなかを突っ切っているが、並行する道路はおろか、クロスする道路もない(地形図に描かれた奥行臼の南の旧国道はなくなっている)。
ようやく風蓮川の手前でマトモな道路が国道から分かれ、その道路と直交する路盤が確認できる。
奥行臼方はひどいヤブだが、風蓮川の手前までは農地への作業道となっている。
作業道の先は放置状態だったが、2012年ころ根室フットパス「明郷パス」として整備された。
風連川橋梁は、現存する標津線の橋では最長で、ガーダー12連181mもあり、営業当時では第2標津川橋梁の269mに次ぐ長さだった。
以前は、中間部に保守用通路がないので、橋を渡りきるのは困難だったが、フットパス化にあたり、建築現場用足場板と単管を使い、手すりもある立派な通路がつくられ、標津線の時刻表と写真も掲示されていた。
風蓮川を渡ると根室市となる。
築堤となった路盤は、湿原のなかを一直線に通り、訪問当日は高曇りの空で、暑くもなく寒くもなく、さわやかな風が湿原を渡る絶好の廃線跡日和だった。
つづいて風連川避溢橋梁となる。
ここにも注意書きがあったが、それには「逃益橋(とうますばし)」とある。なんのことかと思ったが、「避溢橋」のまちがいと思われる。
この避溢橋梁はIビームを連ねた低い橋だが、ここにも足場板と単管で通路がつくられている。
避溢橋梁を渡った先も歩きやすそうな路盤が一直線に続いていた。
湿原を抜けた路盤はやがて林のなかを通り、国道243号とクロスするが、国道は直線化され踏切の跡はない。
路盤は牧草地や森を突き抜け、国道44号の厚床跨線橋に至る。
跨線橋には「標津線」のプレートも健在、奥行臼方はヤブが濃くなっていたが、厚床方はそれほどでもない。
道道1127号の踏切跡には、クルマの侵入防止なのか、路盤に枕木の柵が造られ、根室フットパスの標識が設置されている。
それによると、標津線跡を厚床駅・酪農喫茶へと歩いて行けるようである。酪農喫茶は、さきほどの標津線の国道踏切の近くにある。
厚床跨線橋から眺めた感じでは、歩くのはそう簡単ではないような気もしたが、2024年現在の根室フットパスの案内でも、厚床パスとして載っているから、歩けるのだろう。
厚床方は、ほどなく根室本線との並行区間となる。
厚床駅は無人駅となり、標津線廃止後改築された駅舎には、現在根室交通の窓口しかなく、一見バス待合所のようになっている。
駅舎側ホーム1番線と島式ホームの海側は根室本線が使用していたが、現在では島式ホームは使われなくなっている。
標津線が発着していたかつての2番線は、線路が撤去され、土留めも崩されている。
広かった構内にあった機関庫などの建物もすべて姿を消し、分岐駅として栄えた面影はなくなっている。
駅舎側の1番線には、標津線分岐駅だったことを示す記念碑と解説板があり、かすかに「標津線ここにありき」を伝えていた。
今回はここまでです。
おしまいまで読んでくださり、ありがとうございました。
次回は函館本線支線(南美唄支線)です。