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北海道の廃線跡探訪 第98回 万字線(3/3)美流渡~万字炭山間


1.ごあいさつ

ご訪問ありがとうございます。

北海道の廃線跡探訪 第97回 万字まんじその3 美流渡みると万字炭山まんじたんざんです。

この区間も路盤は消失しているところが多いですが、万字駅舎が郵便局になっています

なお、これからの投稿予定路線などは、初回記事にありますので、そちらをご覧ください。

2.美流渡

1/5万地形図「夕張」昭和53年第2回編集に加筆

美流渡は万字線沿線随一の市街であり、開業時からの駅の規模も大きく、
北炭美流渡礦(のちの北星炭鉱)や東幌内炭鉱からの石炭積み出しで賑わっていた。しかし、閉山により駅構内は縮小され、かつては映画館もあった市街も、建物がかなり少なくなっている。

駅跡には美流渡交通センター郵便局などが建ち、旧構内を縦断する道路の反対側は公園となり、広かった構内を思わせる。

①元の美流渡駅構内に建つ美流渡交通センター 2012年11月撮影

旧栗沢町共通の記念碑は公園内にあり、万字交通センター同様、踏切警報機とセットになっていたが、2014年には警報機はなくなっていた。

①踏切警報機があったころの記念碑 積雪期は近づけない 2012年11月撮影
①公園内にある記念碑 2023年11月撮影
①同 裏側の解説 2023年11月撮影

旧栗沢町内の記念碑は、美流渡・万字・万字炭山(万字交通センター)に建てられている

駅名標を模した意匠はすべて同じだが、列車のイラストは微妙に異なっているのがおもしろい。

ここの機関車は、かつて万字線で石炭列車を牽いていたD50形にみえるが、テンダーが3軸なのは不思議。

全体のデザインといい、イラストといい、なかなかツボを押さえたつくりになっている。

交通センター横には車止めが残され、これが駅の唯一の痕跡となっている

①唯一の駅の名残の車止め 2023年11月撮影

交通センター2階に栗沢町が設置した万字線資料室は、岩見沢市奈良町(幌向川対岸)の万字線鉄道資料館(空き家の炭住を利用し、岩見沢市が設置)と統合され、朝日コミュニティ交流センターの旧国鉄万字線鉄道資料展示室となり、いつでも見学できるようになっている(前回参照)。

3.美流渡~万字

美流渡市街の先で道道とクロスした万字線は学校の横を通り、第5幌向川橋梁へ向かっていた
ここには廃止後もしばらく橋脚が残っていたが、いまでは前後の築堤が残るだけになっている

第5幌向川橋梁 建設工事列車を牽くのは7200形
1914(大正3)年鉄道院北海道建設事務所発行『万字線建設概要』より(以下、古写真は同じ)
②美流渡方から第5幌向川橋梁跡(対岸の築堤)を望む 2020年4月撮影
 ②第5幌向川橋梁 橋脚や橋台が残っていたころ 1991年4月撮影

橋を渡った先の路盤は、農地となり消えてしまったところも多くなる。

代替バス路線である北海道中央バス万字線は、2008(平成20)年美流渡~万字間にある毛陽もうよう交流センターで打ち切られ、「万字線」を名乗りながら、万字地区へは行かなくなった。

③毛陽交流センターで発車を待つ、北海道中央バス 2012年11月撮影

たしかに旧万字線沿線の乗客は少なく、2012年11月に乗車したときも、始発の岩見沢バスターミナルではほとんどの席が埋まっていたのが、岩見沢市街ですべて降りてしまい、毛陽交流センター終点まで乗ったのは筆者だけだった。

接続する栗沢町の無料バス(バス路線廃止区間の代替として運行していたフリー乗降のワゴン車)も、乗ったのは筆者だけで、終始乗降はなかった

栗沢町が岩見沢市と合併した後も、この無料バスは維持されていたが、2022(令和4)年4月には、岩見沢~万字間のコミュニティバス東部丘陵線となった。
2024年12月改正ダイヤでも毛陽交流センターまで5往復(1往復は休日運休)、万字までも3往復あり、公共交通が完全になくなってしまうような、旧特定地方交通線沿線に比べるとまだ恵まれているといえる。

毛陽交流センターの先から、路盤はヤブになって現れ、クルマでも走れる農道となっているところもある。

③毛陽交流センターから美流渡方を望む 遊歩道が路盤か 2024年10月撮影
④農道となった区間 万字方を望む 2014年10月撮影

道道との踏切はS字状に曲がっていた道路が直線化され、北側に移った路盤は消えている。
やがて路盤が現れ、万字線沿線に多いリンゴの果樹園の農道として使われている。

⑤北側に移った先で現れる、作業道となった路盤 2014年10月撮影

営業当時の空中写真にはこの先に小鉄橋が見えるが、取材時はヤブがヒドくて接近できず、道道から離れた路盤は、動物避けの鉄網に阻まれる。
さらに、道道が大規模につけかえられたため、路盤は川の対岸になってしまう。

建設当時のポンポロムイ川橋梁手前の路盤

万字線は万字の手前の奔幌向川ぽんほろむいがわ橋梁で界川を渡り、再び旧栗沢町へと入る。

建設当時のポンポロムイ川橋梁

万字鉄橋といわれていた橋は完全に撤去されているが、その万字方の広場には、万字線建設工事でなくなった人の供養塔がある。

⑥万字方から奔幌向川橋梁跡を望む 2014年10月撮影
⑥供養塔 「有縁無縁」のはずだが「有緑無緑」になっている 2014年10月撮影

橋を渡るとすぐ万字市街への道路と交叉する。舗装面には線路の跡がはっきりが残っていた。

⑦踏切跡 万字方を望む 2014年10月撮影

かつて万字市街の道の両側には商店や民家が建ち並んでいたが、年々減り続け、今では数えるほどになってしまった。
それでも寺は残り、髪の毛が伸びる「お菊人形」で知られる万念寺もある。

万字線建設当時の万字市街 左に万字駅の給水塔が見える
建設当時の万字停車場 開業当初、転車台はなかった

万字駅舎は万字仲町簡易郵便局に転用、待合スペースは便所となり、改札口も塞がれているが、よく面影を残している。
旧改札口から続く階段を下りていくと、ホームに出る

⑧万字仲町簡易郵便局となった旧万字駅舎 2014年10月撮影(タイトル写真は2024年10月撮影)
⑧旧改札口から下のホームへ降りる階段 2014年10月撮影

広かった構内には草木が茂っているが、崩れかけたホームの一部や階段附近は草刈りがなされている

⑧ホームから駅舎を望む 2024年10月撮影
⑧階段の前後だけ草刈りされたホーム 2023年11月撮影
ホーム前から美流渡方を望む 2014年10月撮影

元構内には、なぜかあちこちに踏み分け道(けものみち?)があったので、転車台や給水塔の跡があるのではと期待したが、なにもなかった。

⑧万字の給水塔 背後に転車台も見える 1979年5月撮影

旧駅舎の横にある駅跡の記念碑に描かれた機関車は、かつて旅客列車を牽いていたC11形に見えるが、なぜかテンダーのようなものがついている。まあ、こうした意匠にあれこれいうのもヤボだけれど。

⑧記念碑 裏面は美流渡のものと同じ 2014年10月撮影

4.万字~万字炭山

1/5万地形図「夕張」昭和53年第2回編集に加筆

万字を出た路盤は、幌向川を渡る道路橋を潜っているはずだが、万字線営業当時とは道路や橋も変わり、跡はよくわからない。

道路橋を過ぎ、万字炭山へ向かう道路とクロスした後は、丘に沿って路盤らしい痕跡が見え、道路に並行すると万字炭山駅となる

⑨道路と交叉した後に現れる路盤 万字炭山方を望む 2014年10月撮影

万字炭山は開業時は旅客は扱わず、石炭や炭鉱資材などの貨物専用駅だったが、10年後の1924(大正13)年9月に旅客も扱う一般駅となっている。

建設当時の万字炭山停車場 のちに市街のできた丘上から撮影している
北炭万字礦は万字線開業までは、索道で山を越え夕張まで石炭を輸送していた

万字炭山の旧駅舎は2013(平成25)年6月通りがかったとき取り壊し中だった。
あまり趣のある駅舎ではなかったが、いざなくなってみると残念ではある。

⑩旧万字炭山駅舎 すでに空き家になっていた 2012年7月撮影
⑩住宅として使われていたころの旧万字炭山駅舎 1989年10月撮影

駅舎は土台だけになったが、貨物ホームは残り、構内全体の状況は以前と変わりはない。
幌向川には選炭場への側線の橋台も残っている

⑩万字炭山駅舎跡  2014年10月撮影
⑩貨物ホーム跡 2014年10月撮影
⑩営業当時の万字炭山 駅舎は画面中央奥 旅客ホームはかなり離れた万字方にあった
1979年5月撮影
⑩上写真と反対側から見た旧万字炭山駅構内 中央左が旧駅舎と貨物ホーム 1989年10月撮影
⑪選炭場への側線の橋台 2014年10月撮影

万字炭山駅の記念碑は、かなり離れた丘上の万字市街にある万字交通センターの一隅にあった

記念碑は倒れていたが、自然に倒れるとは思えないうえ、傷もついていなかった。廃止から四半世紀以上経ち、営業当時の万字線を知る人が少なくなり、記念碑のある場所が駅跡と誤解されるからだろうか。

個人の住宅となった駅跡には記念碑が建てられなかった、少しでも目立つ場所に設置したい、などの事情があったのだろうが、やはり場所が違っていては意味がない

⑫倒されていた万字交通センターの記念碑 2012年7月撮影

2014年には記念碑はなくなり、踏切警報機と転轍テコだけが単なるモニュメントのようになっていた

⑫なくなった記念碑 2014年10月撮影

万字炭山森林公園として頂上まで登れるように整備されたズリ山や選炭場の一部、万字炭山の元炭住、そして万字炭鉱創業者の朝吹家の家紋に由来する「万字」の地名だけが、わずかに炭鉱があったことを伝えている。

今回はここまでです。

おしまいまで読んでくださり、ありがとうございました。

次回は、渚滑しょこつです。


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