見出し画像

BRICSの脱ドル化が進むとどうなる? “共通通貨ナシ”宣言の真意とアメリカへの影響


はじめに

BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は、世界経済の重要プレーヤーとして注目を集めてきました。さらに最近ではエジプト、エチオピア、イラン、インドネシア、アラブ首長国連邦なども加わり、その存在感はますます拡大しています。


一方、アメリカではトランプ前大統領が「もしBRICSがドルを置き換える動きをするなら、BRICSからの輸入に100%の関税をかける」と激しい警告を発しました。しかし、BRICS側は「共通通貨を創設する計画はない」と明言。では実際、なぜアメリカはそこまで“ドル離れ”を嫌がるのか? この記事では、BRICSの脱ドル化の背景と、共通通貨が作られない意図、そして米国債との関係などを分かりやすく解説します。



1.BRICSの脱ドル化って何?

脱ドル化の意味

脱ドル化とは、国際貿易や金融取引で米ドルを使う割合を減らし、自国通貨や他の通貨を活用する動きです。ロシアへの制裁や米国との対立などから、BRICS諸国がドル依存を下げようとしているのは有名な話ですね。


BRICS諸国が目指すもの

二国間・多国間での自国通貨取引を増やし、為替リスクを低減

国際決済の際に、米ドルに頼らずに決済できるようにする

米国からの制裁リスクを回避(米ドル決済網へのアクセス制限を防ぐ)


こうした取り組みによって「ドル一極支配」からの脱却を図ろうというわけです。



2.「BRICS通貨は作らない」クレムリンの真意

ロシア報道官がきっぱり否定

ロシア大統領府の報道官は「BRICS諸国が新たな共通通貨を作る計画はないし、議題にも上がっていない」と明言。BRICS内でも同様の否定的なコメントが相次いでいます。


脱ドル化はするけど共通通貨は作らないワケ

1.メリット以上に対立リスクが大きい

米国との対立を一気に深めるほどのメリットが今のところ薄い。

2.自国通貨で十分やれる

各国が自国通貨の相互利用を増やすことでも、ある程度ドル依存を減らせる。

3.投資プラットフォーム重視

あえて“通貨”よりも投資面の連携に注力することで、BRICS圏内の経済成長を確保しやすい。


3.BRICSが注目する“投資プラットフォーム”とは

デジタル資産を活用したプラットフォーム

BRICSでは、新興市場(南アジア、アフリカ、南米など)への投資を促進するため、デジタル資産を使ったプラットフォームを構築しようとしています。これにより電子決済や資金調達がしやすくなり、各国の経済協力が深まる見込みです。


穀物取引所や相互投資も検討中

BRICS穀物取引所:農産物の価格を安定させ、食料安全保障を強化する狙い

相互投資プラットフォーム:エネルギー、技術、インフラなど幅広い分野での資金調達を円滑化


こうした取り組みは、単に“ドルをやめる”ためというより、“BRICSでの経済成長と安定”を重視した動きと言えます。


4.トランプ前大統領の「100%関税」発言

どんな内容?

「もしBRICSがドルを置き換えるような動きを本格化させたら、BRICS諸国からの輸入品に対して100%の関税を課す」というもの。とても強硬な姿勢ですが、トランプ氏らしく“交渉カード”として使っている面もあるでしょう。


なぜそこまで強く出るのか?

ドルが国際通貨として君臨していることは、アメリカの経済力と政治力の根幹。貿易・金融の中心にドルがあるからこそ、米国は世界的な影響力を保ちやすいわけです。これを揺るがされるのは、アメリカにとっては死活問題ともいえます。


アメリカ国債の需要が減るとヤバい?

ドル離れは米国債離れに直結する

国際貿易で「ドルがいらない」となると、各国はわざわざ米ドルを保有する必要がなくなります。つまり、「米ドルを確保する手段」であるアメリカ国債への投資需要も減ってしまう可能性が高いのです。


米国債に頼れない=アメリカ政府も資金調達が難しくなる

アメリカ政府は国債を発行して資金を調達し、社会保障やインフラ、軍事など多方面にお金を回しています。しかし世界中が米国債を買ってくれなくなると、国債をスムーズに発行できなくなる。結果として、アメリカが大盤振る舞いで経済にお金を注ぎ込むことが難しくなるわけです。


だからこそ、共通通貨による“急激な脱ドル”は絶対避けたい

BRICSが一気に“ドル離れ”を加速するような共通通貨を導入すれば、米国債の需要が一気にしぼんでしまう恐れがあります。そうなればアメリカの経済運営は一気に苦しくなる。だから米国としては「BRICS通貨はなんとしても阻止したい」と考えるのも無理はないでしょう。



5.それでも共通通貨は「ない」?

急激な変化を起こさずにジワジワと

BRICS諸国は、ドル依存をゆるやかに減らしていく方法として、自国通貨の相互決済や投資プラットフォームの拡充を選んでいるようです。これは急転直下のドル置き換えを避けつつ、将来的にドルへの依存度を低めたいという現実的なアプローチとも言えます。


米国はどう対応する?

もしBRICSの脱ドル化が本格化し、米国債の需要が目に見えて減り始めたら、アメリカはさらなる制裁や関税強化などの対抗策をとる可能性があります。トランプ氏の「100%関税」発言は、そうしたシナリオを想起させるものであり、今後の国際関係を揺るがす火種になり得るでしょう。


6.まとめ

BRICSの「共通通貨はつくらない」という姿勢は、米国との直接対決を回避しつつも、脱ドル化の流れを着実に進める戦略と見ることができます。一方、アメリカとしては、ドル需要が落ちると米国債の買い手も減り、国の財政基盤を揺るがしかねない事態に。だからこそ、BRICSの動きには敏感にならざるを得ません。

今後、BRICSが投資プラットフォームや自国通貨決済をさらに推進することで、世界経済のパワーバランスがどう変化するのか。アメリカは実際に“100%関税”のような強硬策をとるのか。ドル支配の終わりを意味するのか。目が離せない状況が続きそうです。



参考情報

クレムリン報道官「BRICS通貨の計画なし」

トランプ前大統領の「100%関税」警告

BRICSのデジタル資産投資プラットフォーム構想

BRICS穀物取引所・相互投資プラットフォーム検討

米国債需要とドル支配の関係

BRICS加盟拡大(エジプト、エチオピア、イラン、インドネシア、UAEなど)


BRICSの脱ドル化は一朝一夕には進まないものの、ゆっくりと着実に既存のパワーバランスを変えていく可能性があります。今後の国際経済の大きな注目ポイントとして、ぜひウォッチを続けてみてください。

いいなと思ったら応援しよう!