SOPHIA

松岡充。

人生で最初で最後、私はバンドマンを好きになった。


緑のハネに顔を埋めた

キメ顔の松岡充が表紙の音楽雑誌を
兄の部屋で見つけた時

目が離せなくなった。

なんて美しくてかっこいい人なんだ。

ずっと見てられる。

その雑誌のソフィアのページは穴が開くほど読んだ。

関西弁なのがまた私の心を鷲掴みにした。

私より背が高く、体重も多い。
そしてかっこいい。
歌が上手い。
幼い私には理想的な恋人だった。

兄のカセットをひたすら聞き、

そのうちポスターを部屋に貼るようになり

何度そのポスターにキスしたことか!!!

リップスライムという文化放送のラジオを聞くために深夜まで起きててカセットの録音と再生のボタンを同時に押し損ね、寝てしまった夜はもったいなかった。

録音を押せた時に限って全部聞くまで起きてられたり、

私はソフィアを追いかけていた。

ある日ラジオで

ミュージックステーションで歌い終わった後

「リップス リップス リップス」

と言うと約束したあとのミュージックステーション。

松岡充が乱れる呼吸の中、リップスと3回呟いたのを見た時

全身の血が煮えたぎるように熱くなり

やってくれた!!彼が大好きだ!!!これが恋なのか!!!!という思いが

全身を貫いたのを覚えている。

まるで私と彼だけの秘密の合言葉のようだった。

ただ、中学生だったこともあり

お金を使って追いかけることはあまりできなかった。

今でも鮮明に覚えている。

お正月、お年玉でライブビデオを買うと決めていた。

お年玉は10,000円。

親からのみ。

その10000円をほぼ使ってしまう金額だったが

何よりも欲しかった。

正月は家庭にお金がないからなのか、
パチンコに行く金がないからなのか、
何かやなことでもあったのか、
前日にパチンコで大負けしたのか、
お金がらみのことで両親はよく喧嘩をしていた。

母親は正月から不貞寝をしていて
「この家に正月なんて来ないんだよ!!」と怒鳴り
私をTSUTAYAへ連れて行ってはくれなかった。

父親にどうにかお願いして渋々連れて行ってもらった。

やっと買えた私だけのライブビデオ。

正月、テレビの前から離れることができなくなった。


あの時の私に言いたい。

SOPHIAが30周年になったよ。

あの頃から私も歳を重ねた。

その分、ソフィアのみんなも歳を重ねた。

同じ時を生きてきた。

アーティストもファンも、一緒に歳をとった。

気持ちはあの頃のままでも

ステージと客席で向かい合った時に

お互い歳をとった姿を思うと

なんだか愛おしい。

SOPHIA、ありがとう。
ずっといてくれてありがとう。
私の愛の始まりは間違いなく
松岡充だった。

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