ナメクジの恋
なめすけには、好きな娘がいる。ねこのルナちゃんだ。大きくつぶらな
ひとみでじーっと見つめたかと思うと、さっと視線をそらす。
そこが何とも魅力的。僕は一瞬でルナちゃんのとりこになった。
(もう一度会いたい)はやる気持ちで、3日かけてルナちゃんのところに想いを伝えに行った。
僕が意を決して
「付き合ってください」
と言うとルナちゃんは
「あなたのように粘っこくて重たい人は、嫌いなの」
とあっさり断られた。それは事実で、僕は返す言葉もなかったんだ。
「私はね、好きだと言ってくれるたくさんの人たちと、軽やかに楽しく
お付き合いをしたいの。ほら見て、私のファンがいっぱい。みんな私を
『かわいい。君が一番だ』といってほめてくれるわ」
すごすごと帰っていくなめすけ。ショックで帰りは5日も
かかってしまった。
それから始めた『粘り気除去作戦』
その1 ドライヤーの風を体に吹きつける。
その2 日焼けサロンに行く。
(これはワイルドさも増すという利点あり)
作戦を実行しているうちに、粘り気をなくすこと=生命の危機
ということに気づいた。
そこで発想を変えた。
その1 ねばなば仲間の『納豆』『なめこ』『根昆布』と付き合う。
その2 幼なじみのなめみちゃんに告白する。
その1はどう考えても現実的ではないので、その2を選択する
ことにした。
翌日なめみちゃんに尋ねた。
「僕と付き合ってくれない?」
すると、
「うん、いいわよ」
とあっさりOKしてくれた。
「なめみちゃん、僕がルナちゃんを好きだったのは知っていたよね。
それでもいいの?」
「かまわないよ。なめすけ君は、最後にはわたしのところに来るって
思っていたから」と にたーって笑った。
「えっ!」
一瞬、恐ろしい考えが頭をかすめた。
なめみちゃん、最近スマホを買ったって、いってたな。
つれなかったルナちゃんとなめみちゃんが、裏でつながっていたら?
失恋の痛手から,なめすけが自分に告白することを予想していたら?
いいや!そんなことは、まさかあるまい。
純粋でかわいい、なめみちゃんに限って。
なめすけは一瞬浮かんだ妄想をふりはらい、なめみとともに
歩き出した。
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