歴史の混交的な進展は、何に帰着するのか。

 国家・民族・血統。この三位一体の世界は、正しく言えば、原始世界においてのみ成立した。それは、ヒトニザルとサピエンスの境目であったとも言える時点であり、そこにユートピアの原像があった。領域は、他の領域を知らないがゆえに、領域になりえた。
 人間史は、この原初から離脱していくにつれ、三位一体を喪失する。それぞれのカテゴリーが複雑化していく理由は、ひとえに、領域同士の接触にある。文化、技術、血筋の交錯によって、人間史が動き始める。戦争は触媒となり、平和をも支配する。
 しかもこの混沌は熱力学第二法則を連想させるほどに、ストカスティックである。相乗的に、次代の大戦争への動力が高まりを見せていく。誰もそのタイミングを予断できない。そして次の瞬間には、破局的な戦争の火の粉が上空から降りかかる。

 混乱はこの世界の唯一の形態であり、歴史にはくっきりと打ち付けられている。


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