
はじまりは、この湾処から
ここは沖縄の小さな湾処(わんど)。ここで、2024年の夏、十日ほどの間に、立て続けに、大きなガーラを三度かけました。が、残念なことに、一度目は針を捻じ曲げられ、後の二度は、釣り糸を切られ、逃げられてしまいました。それはそれは強い引きで、なんとか太刀打ちしようとしたものの、あっけなく逃げられました。
それからというもの、この場所に通い詰め、種類の異なる大型魚や中型のガーラは釣れましたが、目指すガーラの大型が釣れることはありませんでした。季節は移り、水温の下がる11月頃になると、ガーラの群れはこの場所を去ってしまいました。
あのように強く引く大型のガーラを、同じこの場所で釣り上げたい。その思いで、それからの半年ほどの間、色々、調べものをし釣り方を考えたり、道具を工夫しルアーを投げる練習を繰り返したりしてきました。簡単ではない具体的な目標に取り組み続けることで、それまで見えなかったことが見えるようになり、考え方が変わったり、できなかったことができるようになったりしました。目指す大型ガーラが釣れるかどうかはわかりませんが、今では、そうしたプロセスの方が楽しみになってきました。
ここでは、そうしたプロセスの楽しみを綴っていきたいと思います。釣りというのは、魚がかかってやり取りをしている時間よりも、魚が釣れていない時間の方が圧倒的に長い遊びです。私のやるルアー釣りは特にその傾向が強く、数時間の釣りのうち、実際に魚をかけてやり取りする時間は、数分にも満ちません。それでも釣りが楽しいのは、魚を釣り上げるまでの時間が楽しいからです。村田基さんという有名な釣り師の方が、今までで一番つまらなかった釣りは何ですかと聞かれて、「入れ食いの釣りです」と答えられているのを聞いたことがあります。その通りだと思います。一日で百匹釣れる釣り堀よりも、釣れるか釣れないかわからない湾処を私は選びます。
釣り人は、釣りあげた大きな魚の自慢話を聞かせたがりますが、他人の自慢話を聞かされるほど退屈なことはないと思います。だから魚を釣るまでのプロセスに傾注して話をしていこうと思っています。たぶん?でも、釣れた時はちょっとだけ自慢させてください。長い苦労が報われたのですから。
私は今年で65歳になります。年を取ると大きな目標を達成することよりも一日一日を充実して過ごすことの方が大事に思えるようになってきました。そうした意味で、目標をもってプロセスを楽しめる釣りという楽しみをもてたことが、とても役にたっていると感じます。釣りの好きな方だけでなく、私と同じような年齢の方とも交流できたらと思っています。