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#聴いてみた モーツァルトの弦楽5重奏曲ト短調
NHKFM「音楽の泉」のモーツァルトの弦楽五重奏曲ト短調を聞き逃し配信で聴いてみた。
曲目
弦楽5重奏曲 ト短調 K.516
スメタナ弦楽四重奏団(弦楽四重奏) 、ヨセフ・スーク(ビオラ)
作曲: モーツァルト
(33分12秒)
<コロムビアミュージックエンタテインメント COCO-73067>
🖊曲解説へ
弦楽5重奏曲 ハ長調 K.515から 第4楽章 アレグロ
エベーヌ弦楽四重奏団(弦楽四重奏) 、アントワーヌ・タメスティ(ビオラ)
作曲: モーツァルト
(7分10秒)
<ワーナー 5054197213328>
ただ今の弦楽5重奏曲ト短調K.516のおよそひと月前に書かれたハ長調の弦楽5重奏曲のフィナーレを今をときめくフランスの音楽家たちの演奏でお送り致します。
曲解説(奥田佳道先生解説からの抜粋)
🖊今朝はモーツァルトの弦楽5重奏曲ト短調をお送り致します。
(♪~)アレグロの第1楽章が始まった所、胸を打つフレーズ、奇跡の調べと言っても良いですね。
敢えて音楽の特徴をお話ししますと、半音階、同音反復、休符を活かした創り、となるでしょうか。
調性はモーツァルトにとって宿命の調性とも言われるト短調。
今の部分から交響曲第40番ト短調の第1楽章、第4楽章を思い浮かべた方もいらっしゃるかも知れません。
弦楽5重奏はモーツァルトより13才年上のイタリアの作曲家ボッケリーニが愛したジャンルでした。
優れたチェリストだったボッケリーニは弦楽4重奏にチェロを追加した弦楽5重奏曲を沢山書いています。
それに対し、モーツァルトの弦楽5重奏曲はアンサンブルや室内楽の要となる中音域のビオラを追加したスタイルです。
モーツァルトは全部で6曲の弦楽5重奏曲を書いています。
1つは管楽セレナードからの編曲ですが、全て弦楽4重奏に1つビオラを加えた編成、つまり第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、第1ビオラ、第2ビオラ、チェロという編成になります。
モーツァルト、そして彼の親友でもあったミヒャエル・ハイドン、有名なハイドンの弟ですが、この2人がビオラを加えた弦楽5重奏曲を書いたことでこの編成が弦楽5重奏の基本となりました。
しかし、シューベルトのようにチェロを加えて素晴らしい弦楽5重奏曲を書いた人もいますし、ドボルザークはコントラバスを交えた弦楽5重奏曲も書いています。
さて、モーツァルトの弦楽5重奏曲ト短調へ参りましょう。
曲は1787年5月にウイーンで書かれました。
モーツァルトこの時31才、創作の背景については例によって何も分かっていません。
分かっているのは自作目録に記された1787年5月16日と言う完成の日付だけです。
モーツァルトはそのおよそ1か月前の4月19日にハ長調の弦楽5重奏曲K.515を書いています。
そして更に以前作曲した管楽セレナードを弦楽5重奏曲ハ短調に編曲しています。
彼はこの3曲を出版しようとしました。
作曲の次の年、1788年4月上旬のウイーン新聞にヴァイオリン2、ビオラ2、チェロの為の新作の弦楽5重奏曲の予約注文を受け付けるという広告も出しています。
しかし、予約者は非常に少なかったようで、出版は延期するとの再広告も出しています。
弦楽5重奏曲の傑作が書かれた1787年と言えば、アイネクライネナハトムジーク、そして歌劇「ドン・ジョヴァンニ」が完成した年、お父さんレオポルトの体調不良と死が伝えられた年、弦楽5重奏曲の広告が出されたその翌年1788年と言えば、交響曲第39番、第40番、第41番ジュピターが書かれた年でもありますが、ウイーンでのモーツァルトの人気は音楽の深まりと反比例するかのように陰りを見せ始めていました。
尚、モーツァルトは弦楽5重奏曲の傑作を書く直前、1787年4月上旬、お父さんのレオポルトの具合が良くないことを心配し、「人が死ぬと言うことは人生の最終目標であり最善の友であり安らぎと慰めを与えてくれるもの」との手紙をお父さんにしたためています。
曲の第2楽章メヌエットを少し聴いてみましょう。
(♪~)ト短調によるメヌエットの始まったところ、明るく優美な舞踏楽章のメヌエットではありません。
響きは柔らかですが、内面的には激しく、後の時代のスケルツォに通じるかのようです。
続く第3楽章はアダージョ、変ホ長調、弱音機を付けた弦楽器の音色、慈愛に満ちたフレーズに抱かれる楽章です。
後ほどお楽しみになさってください。
最後の第4楽章はアダージョの序奏を伴うアレグロの音楽、エレジー、哀し気な歌、ト短調のフレーズに導かれ快活なアレグロ、ト長調の音楽が聴こえてきます。
短調と長調の鮮やかな対比はモーツァルトのお家芸、オペラの様でもあります。
今朝はプラハの音楽家達による歴史的な録音でお送り致します。
🖊モーツァルトの弦楽5重奏曲ト短調を聴いてみて
まず、ビオラの存在感が何と言っても素晴らしい。
弦楽器の中でもビオラ推しの私にとっては嬉しい放送回となった。
又、奥田先生解説の中で
「短調と長調の鮮やかな対比はモーツァルトのお家芸、オペラの様でもあります。」
というご説明があったが、なるほど!と(他の作品も含めて)モーツァルト作品の魅力を再発見できた回ともなった!