#聴いてみた ベートーヴェンの「交響曲第7番」
NHKFM[「音楽の泉」のベートーヴェンの「交響曲第7番」を聞き逃し配信で聴いてみた。
曲目
「交響曲 第7番 イ長調 作品92」 ベートーヴェン作曲
(管弦楽)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、
(指揮)アンドリス・ネルソンス (36分10秒)
<ユニバーサル UCCG-40091/5> 2017録音
🖋曲解説にて
「七重奏曲 変ホ長調 作品20から 第5楽章 スケルツォ」
ベートーヴェン作曲 (合奏)ウィーン・ヴィルトゥオーゼン
(3分12秒)
<ポニーキャニオン PCCL-00301>
ベートーヴェンの7重奏曲からスケルツォをお送り致します。7重奏、編成はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット、ファゴット、ホルン、弦楽器4人と管楽器3人による7重奏曲ですね。この曲は1800年4月、ベートーヴェンの交響曲第1番が初演されたコンサートでお披露目されました。
曲解説(奥田佳道先生解説からの抜粋)
今朝はベートーヴェンの交響曲第7番をお送り致します。
(♪~)第1楽章の主題がヴィヴァーチェ 八分の6拍子 で始まったところをお送り致しました。タータタッ タータタッというくっきりしたリズムが聴こえました。長い、短い、短いという音の単位、ベートーヴェンの交響曲第7番に生命感、躍動感をもたらすリズム動機です。1813年、ベートーヴェンが43才になる年に初演されたドラマティックな交響曲第7番は当時の聴衆のみならず19Cロマン派の多くの作曲家に感銘を与えました。フランスのベルリオーズ、ドイツのメンデルスゾーン、シューマン、リスト、そしてワーグナー、みんなこの交響曲に魅了されました。19Cから20Cの世紀転換期にはグスタフ・マーラーも十数回この交響曲を指揮しています。因みにワーグナーは彼の著書の中でベートーヴェンの交響曲第7番について「この交響曲は舞踏の聖化、(聖化は聖なるものへ達するという意味ですね)舞踏の聖化そのものである。その最も高度な本質からして舞踏である」と述べています。Beethovenn は交響曲第5番ハ短調、通称「運命」そして交響曲第6番ヘ長調「田園」で、音の動機、モチーフの緻密な展開を極めました。さあ、次の交響曲をどうするか。何か新しい作曲技法が必要になるとベートーヴェンは考えました。そう考えるところが奇才たる所以でしょう。 彼が着目したのは美しい旋律に躍動感を与えるリズムでした。 交響曲の4つの楽章にそれぞれくっきりとしたリズム動機を織り込み、音楽に破格の推進性をもたらす、これが狙いで、その狙いは完璧に成し遂げられます。
アレグレットと書かれた第2楽章の冒頭 を聴いてみましょう。
(♪~)味わい深い調べに寄り添うリズム動機。四分音符と八分音符を交えたターンタタ ターターというリズムが誤解を恐れずに言えば執拗に繰り返されます。 そもそも交響曲の第2楽章を落ち着いたテンポのアンダンテやアダージョではなくアレグレットとした事自体、ベートーヴェンは革新的 、時代を切り開いています。
続く第3楽章は ベートーヴェンをベートーヴェンたらしめる激しいスケルツォ、トリオと呼ばれる中間部の作りが又素晴らしい です。
(♪~)スケルツォ 楽章の中間部を彩る牧歌的なニ長調の調べ、田舎風とも言えます。この調べはオーストリア、シュタイアーマルク地方の巡礼地マリアツェルに伝わる巡礼歌と何か関連があるかも知れません。
そして最後第4楽章はアレグロ・コンブリオ生き生きと速く ベートーヴェン が最も愛したイタリア語の速度表情語で書かれた興奮のフィナーレ、後ほどお楽しみになさってください。
ベートーヴェンの交響曲第7番は1813年春 、彼のパトロンで ピアニスト、作曲家でもあったルドルフ大公の邸宅で演奏された後、その年の12月8日に当時のウイーン大学の講堂で行われたチャリティーコンサートで公開初演 されました。フランスナポレオン軍との戦争で負傷した兵士に救援物資や軍資金を送る為のチャリティーコンサートでした。 それまでに行われてきたベートーヴェン主催の新作コンサートと異なり当時のウイーン音楽界の総力を結集したコンサートで腕に覚えのある音楽家が演奏に参加、又はコンサートに協力者として名を連ねています。
メトロノームや自動演奏機の製作者メルツェル、ベートーヴェンを崇拝し後にメンデルスゾーンと交遊するピアニストのモシェレス、コントラバスの名手ドラゴネッティ、後にフランスグランドオペラの担い手となるマイヤベーア、そしてヴァイオリンの近代奏法を考案したシュポア、イタリアのギタリストでチェロも弾いたジュリアーニ、こうした顔ぶれが演奏、又は演奏会開催に協力しています。因みにこのコンサートでは戦争を描写したウエリントンの勝利も演奏され交響曲第7番以上に喝采を博したようですが、そちらにはフンメル、サリエリ、それにベートーヴェンの弦楽四重奏曲を数多く初演したヴァイオリニストのシュパンツィヒも参加していたようです。ベートーヴェンの交響曲第7番はウィーンフィルハーモニー管弦楽団の歴史を彩ってきた作品でもあります。ウィーンフィルは 1842年3月に宮廷歌劇場の監督オットー・ニコライの指揮で、最初のコンサートを行っていますが、交響曲第7番はそのメインプログラムでした。そして1860年1月に行われたウィーンフィルの第1回定期公演のメインもベートーヴェンの交響曲第7番、ブラームスがハイドンの主題による変奏曲を自らの指揮で初演した1873年11月の定期公演でもブラームスの盟友だった指揮者オットー・デッソフの指揮でこの第7番が演奏されています。20世紀の名演奏も枚挙にいとまがありません。
ベートーヴェンの「交響曲第7番」を聴いてみて
ワーグナー曰く(ベートーヴェンの交響曲第7番について)「この交響曲は舞踏の聖化そのものである。その最も高度な本質からして舞踏である。」
今までの交響曲と比べて心の高揚感がより感じられるのはきっと舞踏➡躍動感溢れるリズム動機、ここに秘密が隠されていた。今までは個人的には特に第2楽章がエモーショナルな感じがして好きだったけれど、この第2楽章でもこれらのリズム動機に支えられていたのだなぁと、今回はより味わいながら聴くことができた。
こういう音楽に仕掛けられた「秘密」や「しかけ」を考えながら聴くと、音楽の味わい方もより深まっていく。良い時間となった。