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生意気な末っ子プリンセスがしっかりもの長女プリンセスになりました…



彩お嬢様の執事になってから早1年程が経過した

ここ最近の彩お嬢様の様子が今までと違う

一体どうしてなのだろう…

今、彩お嬢様はベッドメイキングを”自ら”していらっしゃる

何かに取り憑かれたのか、それとも頭でも打ってしまったのか…



振り返ること1年程前、私〇〇はこの小川家に仕えることになった

事前の旦那様との会話で彩お嬢様についてこう言われた

「私の娘の彩だが、私達が甘やかしてきたのもあって少しワガママで〇〇君にとって生意気かもしれない、苦労はすると思うけども頑張ってほしい」

さらにどうやら話を聞くと頻繁に執事やメイドさんが変わるらしい

それまでに酷いのか…

少し身構え彩お嬢様に挨拶へ向かうことにした

コンコン

〇〇:失礼します

〇〇:本日から…

彩:あぁ…貴方が新しい執事さんですか

〇〇:〇〇と申します、よろしくお願いします

彩:〇〇ね、最近頻繁に執事が変わるから…今回はいつまでですかね

彩:まぁ…よろしくね

〇〇:はい、よろしくお願いします

こうして彩お嬢様の執事としての生活が始まった

そこから1週間程が経過した、そして分かったことがある

旦那様が思っている以上にワガママであるということ

〇〇:ん〜…なかなか、これは辞める人もいるかもなぁ

朝7時、彩お嬢様の起床の時間である

おっと、お部屋が荒れてるな

〇〇:彩お嬢様、おはようございます、彩お嬢様

〇〇:お目覚めの時間ですよ、彩お嬢様

彩:んんぅ…まだ…

朝には弱いみたいだ

〇〇:もう起きないと間に合いませんよ

彩:あと…10分…だけ……

〇〇:では10分後にまた起こしに来ますね

彩お嬢様はそのまま寝続けている

10分後起こそうと部屋に戻ると彩お嬢様は起きていた

〇〇:彩お嬢様、おはようございます

彩:ふわぁぁ…今何時…?

〇〇:7時10分でございます

彩:は…?え?

彩:間に合わないじゃん!昨日7時に起こしてって言ったじゃん!!彩、もう間に合わないんだけど!

〇〇:しかし…彩お嬢様があと10分と…

彩:うるさい!

彩:朝の10分はでかいの!明日からは絶対に7時!ほんとありえないわ…

彩:あと朝食の準備もしといて

〇〇:はい、承知しました…

そうして彩お嬢様はバタバタと準備を始めた

数分後、食事のためにテーブルに小走りでやって来る

彩:あ〜、前髪ちょっと微妙だし…、横もはねてる…

文句を言いながらご飯を食べていると彩お嬢様が

彩:ねぇ〇〇?

〇〇:なんでしょう

彩:トマトは?

〇〇:はて?トマトですか?

彩:なんで?彩の朝ご飯にトマトは必須なんだけど…

彩:毎日トマトは入れてって言ってるんだけど!

〇〇:申し訳ございません…

彩:はぁ…あとピーマンは入れないで食べれない

彩:もういいや…学校行く

学校に行ってしまわれた

あぁ…失敗続きだ…、まだ彩お嬢様との関係も築けてすらいない、働き始めて1週間少し先が思いやられる…

4時頃、彩お嬢様が帰ってこられた

〇〇:おかえりなさいませ、彩お嬢様

彩:ただいま、〇〇

そのまま彩お嬢様はご自分のお部屋へ

彩:〇〇、着いてきて

〇〇:はい

彩:このあとは何か予定はあったっけ?

〇〇:何もありません

彩:分かった

ここで少し親密度を高めておこうと思い質問をしてみる

〇〇:彩お嬢様、学校は楽しいですか?

彩:まぁ、楽しいよ

会話が終わってしまった…

どうすればいいんだ!

そんなこんなでお部屋に到着する

彩:〇〇、着替えるからそこで待ってて

〇〇:分かりました

しばらくして

彩:〇〇、入ってきて

彩お嬢様のお部屋に入る

彩:この服とこれをクローゼットにしまってきて

〇〇:分かりました…

ここで今朝思ったことをお聞きしてみる

〇〇:彩お嬢様?

彩:なに?

〇〇:お部屋が少し荒れ過ぎでは?

彩:別に良くない?生きていけるし、なんなら掃除は〇〇の仕事じゃないの?

〇〇:ですが、彩お嬢様ご自分で片付けられた方が良いと思いますが…

〇〇:このグミの袋などはしっかりゴミ箱に捨ててください

彩:〇〇、やっておいてよ

〇〇:本当にそれで良いんですか?

彩:うん、よろしく彩はお昼寝するから

〇〇:では、こちらに落ちてたくまさんの下着から…

彩:あっ!何してるの!変態!バカ!このトマトのへた!

彩:出てって!

〇〇:うぉぉ…!

すごい勢いで追い出されてしまった…これは嫌われたか…

その夜、どうすれば彩お嬢様と仲良くなれるのかと頭捻っていると

〇〇:う〜ん…どうすれば…、あ…イタ

美空:どうしたの?

同じ彩お嬢様の下にお仕えするメイドの美空さんがやって来た

〇〇:美空さん…今彩お嬢様と仲良くなるために頭を捻っていたところで…イタ

美空:物理的に捻っても痛いだけだと思うけど…

〇〇:じゃあ、頭をフル回転させてみます!

キュルルルル!

〇〇:おぇぇ…

美空:何をしてるの…本当にフル回転させる人いないでしょ

〇〇:美空さん落ち着いてください

美空:それはこっちのセリフ

〇〇:それで…彩お嬢様と仲良くなるためにはどうすれば良いと思いますか?

〇〇:美空さんはすごく仲が良いですよね?

美空:私は彩お嬢様が小学生の頃から一緒にいるからね

〇〇:そうですか…やっぱり時間の問題かぁ…

美空:それなら、彩お嬢様の好きなものでも教えてあげようか?

〇〇:教えてください!!!

美空:すごい迫力…

美空:彩お嬢様はね、グミが好きなのよ色んなグミを買い漁ってるの

〇〇:だからお部屋の中にグミのゴミがあったのか…

美空:あとはやっぱりトマトかな

美空:朝食にトマトを出さないと不機嫌になっちゃうの

〇〇:あ…朝にトマト出し忘れちゃいました…

美空:それはだめだよ、明日から忘れないようにね

〇〇:はい…

美空:彩お嬢様、最近お部屋でトマトを育ててるの一緒に育ててみるのはどう?

〇〇:……

美空:?

〇〇:いいですね!!!

美空:すごい迫力…

〇〇:では今からトマトの苗を買ってきます!あとグミも!

美空:いってらっしゃい、いつでも相談にのるからね

〇〇:ありがとうございます!美空さん!

こうして美空さんのアドバイスを参考に彩お嬢様とのコミュニケーションを取り始めることにした

ある日は

〇〇:彩お嬢様、私最近トマトを育て始めたんです

彩:え?

〇〇:この前、彩お嬢様の朝食にトマトを出すのを忘れてしまったので、あとは彩お嬢様との共通の何かがあるともっと仲良くなれるかと

彩:ふ〜ん…そうなの

〇〇:シュガープラムというのを育てております

彩:え!?彩もそれ育ててるんだけど!

〇〇:偶然ですね、困ったら相談させてくださいね

彩:彩に任せなさい!

ある日は

〇〇:彩お嬢様、買い物に行ったのですがそこでこんなものを見つけてきました

彩:ん?な〜に?

〇〇:グミです

彩:え!これ…彩も今日同じの買ってきたんだけど!

〇〇:偶然ですね、少し気になったので

〇〇:こちら彩お嬢様に差し上げますね

彩:ありがとう!

彩:あとで〇〇にもあげるね

そんなことをしていると気づけば…

彩:〇〇!早く!早く!マリオカートしよ!

〇〇:少しお待ち下さい

〇〇:お部屋の掃除が終わってませんので…

彩:いいじゃんいいじゃん!彩の部屋の掃除は他の人に任せればいいでしょ?

〇〇:マリオカートの相手は他の人に任せれば良いのでは…?

彩:〇〇が1番強いから、他の人じゃつまんない!

〇〇:でも…

彩:対戦相手がいないと楽しくないでしょ?早くぅ〜!!

〇〇:仕方ないですね少しだけですよ

仕方なくマリオカートに付き合う

彩:ちょっと…青甲羅!?

彩:サンダーも!?

彩:キラー…

彩:…ボム兵……

彩:12位……

〇〇:よっしゃっぁぁあ、1位!!!!!

彩:〇〇…手加減って知らないの…?

〇〇:日頃の恨みと実力です

彩:あ〜!悔しい!もう1回!

〇〇:すみません、まだ仕事が残っているので…

〇〇:私に勝てるように練習でもしておいてください

彩:生意気〜…!

〇〇:彩お嬢様ほどじゃありません

〇〇:では、失礼します

仲良くなっていた

びっくりだ、今では私がそばにいないと大声で呼んでくるほどに

そのまま時間が経過して現在

彩お嬢様は”自ら”ベッドメイキングをしている

朝7時の起床時間、私はドアの隙間からずっとお部屋の中を見ているが自ら起床され今までは私がやっていたベッドメイキングもしている

どうしたのだろう

そうしてお部屋に入る

〇〇:失礼します、おはようございます彩お嬢様

彩:おはよう〇〇

〇〇:彩お嬢様、ご自分で起きれるようになったんですね…

〇〇:うぅぅ…

彩:どうしたの?

〇〇:感動で前が見えません…

彩:何言ってるの!これくらい普通でしょ!

〇〇:あの彩お嬢様が…

〇〇:では朝食の準備をしてきます!

彩:〇〇頼んだ〜!

そこから彩お嬢様の様子を観察していると

今まで私がお手伝いしてきたことが全てできるようになっている…

なんてことだ!

これからは私が付きっきりでなくても大丈夫ということ

悲しい気持ちもあるがそれ以上に成長を嬉しく感じる

明日からの朝は他のお仕事でもしよう



最近、〇〇が側にいない

彩:なんで!?

彩:彩何か悪いことしたかなぁ…

せっかく〇〇に好きになって貰おうとしたのに…〇〇がいないと意味ないじゃん!!

彩は一緒の時間を過ごすうちに〇〇のことを好きになった

最初は特になんとも思わなかったし、今回の執事もすぐ居なくなるんだろうなとも思った

だけど一生懸命に彩と仲良くなろうとトマトの栽培を始めてみたり、トマトの相談をしてきたり、なったトマトを食べさせてくれたり

あれ…?トマトばっかり…?

でもそういうところが今までの人とは違って好きになっちゃった

それでどうしたら〇〇が彩のことを好きになってくれるかなと頭を抱えながら移動しているときのこと

彩:ん…頭ってどうすれば抱えられるんだろ…

するとある部屋から声が聞こえてきた

〇〇:美空さんどうしたんですか?

美空と〇〇が喋ってる!

美空:いやぁ〇〇くんってここで働いてるけどお休みとかプライベートとかの時間取れてるかなって

美空:最近休みある?大丈夫?

〇〇:大丈夫ですよ、彩お嬢様のお側にいるのは楽しいですし

美空:そう?それなら良かった

嬉しい…

美空:そういえばさ、〇〇くんって恋人とかはいるの?

〇〇:いないですよ、いたら普通の企業に就職してます

美空:そうだよね、ここだと恋人との時間あんまり取れないだろうしね?

よかった…こんなところで振られるとこだった…

美空:ところで〇〇くんは女性の好みのタイプとかあるの?

…っ!!これ重要すぎる…!!〇〇に好きになって貰えるかも…

〇〇:そうですねぇ…身の回りのことは自分でできてほしいですね〜

〇〇:正直、家事はできなくても僕がやるので良いですけど朝起きるとかゴミを散らかさないとか

〇〇:彩お嬢様と過ごす様になって思い始めましたね

なっ…!!恋愛対象外なんだけど彩…!

美空:あ〜…なるほどね

〇〇:それ以外は特に求めませんね

美空:意外と無いのね

〇〇:まぁ僕は好きになった人がタイプなんで

この話を聞いたその瞬間から部屋の掃除を始めた

〇〇が起こしに来る前に起きるようになった

好き嫌いせずにピーマンも食べるようになった…

そうして今

それなのに…なのに…

彩:肝心の〇〇が近くに居ない!!!

彩:アピールが届かない!!!

彩:意味が無ぁぁぁぁい!!!

彩:〇〇…一体どこにいるの…

そろそろ我慢の限界なんですけど、とりあえず探そう

彩:〇〇〜!!〇〇〜!!

大きな声で〇〇を呼び出していると

また、近くの部屋から何か喋り声が聞こえてきた



美空:ねぇ…〇〇くん…美空ぅ〇〇くんのこと好きになっちゃったぁ…♡

〇〇:いや…ちょっと…

え…?なにこの状況…美空さんに詰め寄られれるんですけど…

さっきまでただ普通に最近の彩お嬢様事情について話してただけなのに…

美空:美空ねぇ?〇〇くんが彩お嬢様のために誠心誠意頑張ってるところ大好きなの…♡

美空:だからぁ…これからは美空にもぉ…尽くしてほしいなぁ…♡

美空:もちろん美空もぉ…〇〇くんに尽くすよぉ…♡

美空:美空と付き合ってくれない…♡?

〇〇:いや…なんで?あの今仕事中なんですけど…

美空:え?ちゅー?していいのぉ…♡?

壁際で逃げ道がないガッシリと顔をつかまれもうすぐそこまで美空さんの顔がきている

目を瞑り覚悟を決めた瞬間

彩:ちょっと待ったぁぁ!!

彩:美空!アンタ何してるの!!

彩お嬢様がドアをぶち破り入ってきた

美空:あら彩お嬢様、どうされましたか?

美空:夕食は19時からですよ?

彩:分かった19時ね

彩:じゃなくてぇ!なんで〇〇にキスしようとしてるの!?

美空:それは私が〇〇くんのことを愛しているからですよ?

彩:〇〇!アンタもなんで拒絶をしないの!

〇〇:思ったよりも強くて…

美空:彩お嬢様、早くお部屋にお戻りくださいここからが本番なんです

彩:いやだめ!だめ!

彩:美空今すぐ離れて!

美空:無理です

彩:生意気ぃ…!

必死に美空さんとの距離を離そうとしている

彩:なんで…

彩:うぅぅ…

〇〇:彩お嬢様…大丈夫ですか…?

彩お嬢様が泣き出してしまった

彩:彩だって〇〇のこと好きなのにぃ…うぅ…

〇〇:え…?

〇〇:ん…えっと…?

彩:彩は〇〇のことが好きなのにぃ…グスッ!!!

彩:なんで一緒にいる時間が長い彩じゃなくて美空を選ぶのぉ…グスッ!!!

彩:この前〇〇が身の回りのことは最低限できてほしいって言ってたから好きになって欲しくて部屋の掃除とかも頑張ってたのに…!!!

〇〇:聞いてたんですね…

彩:彩の側から離れるしぃ…!!!

彩:彩のこと見てくれないし…

〇〇:それは彩お嬢様が全部できるのでもうやらなくて良いと思って…余計なお世話かと…

彩:今すぐ彩のもとに帰ってきてぇ!!!

ちょっと…脳の処理が…

美空:彩お嬢様よりも私の方が身の回りのことができます

〇〇:なんで今そんなこと言うの!?

彩:〇〇!彩と付き合って!

〇〇:……

〇〇:えぇ…!?

彩:好きなの!!!

彩:〇〇のことが好きなの…

美空:それは厳しいですね彩お嬢様、彩お嬢様と〇〇くんは主従関係という大きな壁があります旦那様はそれを許しません

美空:よって無理です

なんで今そんなことを言うの…!?

彩:壁がある方がいいもん!

彩:てか!彩の言うことならお父さんなんでも聞いてくれるし!

美空:残念ですが、私のほうが〇〇くんのことを愛しています

彩:いや!彩のほうが愛してる!!

彩:メイドなんだから彩に譲りなさいよ!

美空:〇〇くんは譲れません

彩:〇〇はどう思うの!?

〇〇:えっ!?私ですか!?

彩:どっちを選ぶの!?

彩:彩を選ばなかったらお父さんに言うもん!

美空:そうなった場合は美空と一緒に退職して結婚しましょう?

「どうするの!?」



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