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隣の席の女の子はアイドルでした…
誰しもが1つや2つくらい熱中するものやこと、思わず大きな声を出してしまう瞬間があるだろう。
例えば、サッカーの試合を観戦すること、釣りに行くこと、登山をするなどなど。
そんな熱中できる趣味で無意識レベルで声を出してしまう時があると思う、ゴールが決まった時、大物が釣れた時、山頂まで登り切った時。
僕の場合は”推し活”これに熱中している、ライブの中またはテレビで見ている時に気づけば「あーやぁぁぁぁぁ!!!」と声が出ている。
僕が推しているアイドルグループはd大村、和、奈央、彩の3人で構成されているグループだ。
特に僕はトレードマークはトマトのヘアピンの彩、呼び方はあーやを推している、あーやの可愛さに胸打たれグループが出来た当時から早2年、あーやの可愛いさを喋り始めるともう…。
ー
〇〇:おはよ、小川さん
小川:おはよう、〇〇くん!
〇〇:ねぇねぇ小川さん、d大村のYoutube見た?あーや可愛すぎない!?
隣の席の女の子である小川さんに話しかける、この前の席替えで隣になりよく喋るようになった。
小川:あー、あのトークの動画だよね?
〇〇:そうそう!あの動画!もう可愛すぎたんだよ…!
小川さんは僕の話をよく聞いてくれる、そのおかげもあり最近はそこまで興味が無いと言っていたd大村が詳しくなっている。
〇〇:あの動画の中で和をイジる展開があったじゃん、あの泥団子って言い方可愛かったなぁ…
小川:あー、あそこのところかぁ面白かったよね
最新のd大村の動画で好きだったシーンを語り合う。
小川:あのところ確かさ、和があーやに言えって合図出してたんだよね
〇〇:え?そんなところ映ってたっけ?
小川:あ…
小川:そ…そうだよね…映ってないね…うん…違う動画だったかな…はは
なぜか分からないが小川さんは焦っている。
〇〇:他の動画にそんな瞬間あったっけなぁ
小川:あっ、!奈央のところも面白かったよね!
〇〇:たこ焼きパーティーの話のところ?
小川:そうそう!あの準備を全部メンバーに任せちゃってるやつね
〇〇:あぁ…?ん…?
〇〇:あれ…そんなのあったっけなぁ…
僕の全く知らない情報を持っている小川さん、あたかもその場にいたかのような話し方だ。
少し気になるがそのことは置いておき、あーやの可愛さについて語る。
〇〇:あーやってなんであんなに可愛いんだろうね
小川:んー…スキンケアとかしてるんじゃないかな?
〇〇:いやいや絶対にスキンケアだけじゃあんな可愛くなれないでしょ
〇〇:だけどあのモチモチしそうな肌はスキンケアのおかげだろうね、あとは守ってあげたくなる小動物感が可愛いよね、僕が守ってあげたい、あと!あの小さくて可愛いサイズ感だよね、あーやに上目遣いとかされたらもう昇天しちゃうよ、あー、でもやっぱり笑顔が最高に可愛いよね、本当にあーやの笑顔に何度救われたかいつ見ても可愛いずっと見てたい、ダンスもキレキレで上手だしさ、歌だってスッと耳に入っていってすごい心地良いよね、さらにファンサも神対応だし…日々の努力が表に出てなくても感じられるほどだもん、だから結局あーやが1番可愛いよね…!
〇〇:って…喋り過ぎちゃった…
少し長く喋り過ぎて飽きてないかと心配すると、なぜかマスクとメガネ以外の部分の顔が一目でわかるほど赤くなっていた。
小川:もうそろそろ良いんじゃないかな…?
〇〇:どうしたの小川さん?顔なんか赤くなってない?
小川:なんか恥ずかしくて…
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〇〇:あー…ちょっと気持ち悪かった?ごめんごめん
〇〇:まぁ最後に聞いてよ、今週末のd大村のライブが当たったんだよね、だからようやくあーやのパフォーマンスが生で見られるんだ
小川:よ、良かったね!
〇〇:だから!もう死ぬほどあーやのこと応援するんだ!
〇〇:あ、先生来たね今日も授業は寝ないようにしないとね
ー
週末、d大村のグッズ(主にあーや)を買い込み、会場への列に並び雪崩かのように入って行く、幸運なことに座席はステージから数え1番目の最前列だ。
待ち切れない衝動をなるべく抑え込みライブの開始を待つ。
すると徐々に会場の照明は暗くなっていく、それに合わせ会場のボルテージは上昇していく。
1曲目の音楽と盛大な煽り。
「全員準備はできてるか〜!!!!」
d大村が登場してきた。
あーやのペンライトカラーである白×白2本のペンライトを振り回して叫ぶ。
〇〇:あーやぁぁぁぁ可愛いよぉぉぉぉ!!!
そんなライブの楽しみと言えば…
そう!
レスを貰うこと!
僕は最前列ということもありレスをもらうチャンスがあった。
たくさんアピールをしているとあちらからも分かるようで、和からは指差しをもらい、奈央からはウインクをもらう。
〇〇:はぁぁ…可愛すぎる〜!!!
始まって間もないのにとてつもない満足感、それに浸っていると近くに僕の推しであるあーやがやって来た。
歌の途中、マイクを持ち僕の目の前へそのまま僕を目掛けて指を差すさらにウインク、ハート、そしてとどめの投げキッスをしてきた。
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とても可愛かった、その可愛さのせいでそのまま塵になり風で飛ばされてしまうのかと思った。
そのまま時間は過ぎ、ライブは終了した。
ライブを振り返るとあーやは客席の右側に手を振ったと思ったら次は僕へ、左側にウインクをしたと思えば僕へ、なぜか僕を経由して他の人や方向にレスをしていた。
僕はその可愛さに圧倒され、もう…固まってしまった。
〇〇:な…なんだあの量のファンサは…僕は明日死ぬんか…?
そんな幸せの裏に隠れた恐怖を味わいながらも楽しむことができた。
そのままの流れで事前に応募していた握手会の方へ足を運ぶ。
並んでいると前の人とあーやの会話が聞こえてくる。
オ:あの…今日始めてライブ来たんですけど…可愛かったです…!
彩:えぇ!ありがとう!
オ:また来ます!
彩:うん!待ってるね!
こんな会話を右から左に流しながら今にも破裂してしまいそうな心臓を抑え込む。
直前まで話す内容をぶつぶつ唱えていると自分の順番が来てしまった。
収まらない緊張と伴にあーやの目の前へ。
〇〇:は…はじめまして…
彩:はじめまして〜!
〇〇:か、かわいい…
彩:いつもかわいいって言ってくれてありがとう
〇〇:え…いつも…?会話するのが今日はじめて…
彩:いつも〇〇くんの声が聞こえてきてるんだよ?
〇〇:え…名前も…なんで?
彩:ないしょー!
彩:ほら早くしないと握手の時間が無くなるよ?
〇〇:は…はい…
この幸せな時間も終わりが来る。
剥がし:時間でーす
剥がしの人の指示に従い横に捌けていこうとしたのだが。
〇〇:あれ…手が離れない…
彩:〇〇くんまた来てね?
〇〇:は…はい…また来ます…!
剥がし:あの…時間なんで…
彩:〇〇くん絶対だよ!
ようやく手が離れその場を後にした。
剥がしの人は困惑していた、だってアイドル側が離さないんだから。
〇〇:あー…最高だった…また行きたいなぁ…
その日はd大村のライブと握手会、あーやの余韻に浸って良い睡眠を取ることができた。
ー
奈央:いやー!今日も大成功だったねー!
和:そうだね、今日も楽しかったね、奈央
奈央:あーやはどうだった!?
彩:彩もすごい楽しかった!
奈央:そっか!あーやも楽しかったか〜!
和:てかさ、今日のあーやなんか1人の男の子ばっかりに手振ってなかった?
奈央:あ〜!確かに!
奈央:なんでなんで!
彩:あの男の子ね〇〇くんって言うんだけど、学校で彩の隣の席なの
彩:〇〇くんは彩が隣なの気づいてなさそうだけどね
和:へー、じゃあ私達と同じ学校なんだ
奈央:え!好きなの!?
彩:そ…そんなんじゃないよ!
和:あんなに一生懸命ウインクとかしちゃってさー
和:ほんとかなぁー?
彩:そうだよ!
彩:でもね〇〇くんのおかげで頑張れてるところはあるよ…
奈央:きゃー!!
彩:奈央、和!もういいでしょ!
ー
楽しかった週末は明け月曜日、学校へ。
〇〇:おはよ、小川さん
小川:おはよう、〇〇くん!
〇〇:小川さん聞いてよ、週末のd大村のライブ行ってきたよ!
小川:どうだった?
〇〇:サイコーだったなぁ…
〇〇:また行きたい…あーや可愛かった…
小川:そっか…へへ…
そんな話をしていると。
?:小川さんいるかな?
誰かに呼ばれているみたいで小川さんはその人のもとへ。
小川:〇〇くん、ちょっと行ってくるね?
〇〇:うん、いってらっしゃい
そう言い立ち上がり向かおうとしたとき、小川さんのポケットから赤色の何かが落下した。
小川さんは気づいていない。
〇〇:あれ、小川さん何か落としちゃってるよ
〇〇:あとで返してあげよーっと
それを拾ってみると。
〇〇:え…!?これって…!
〇〇:あーやのトマトのヘアピンじゃ…!?
〇〇:これはグッズにもなってないし完全オーダーメイドの世界に1つなはず…
〇〇:もしや…?でもでも!
〇〇:……
〇〇:あれ確か…この前動画にもないようなd大村の情報を喋ってたような…
〇〇:ってか…!小川さんの下の名前って彩…
〇〇:握手会…あーやが僕の名前を知ってたのは…!
〇〇:小川さんがあーやだったから…!?
そんなことを考えていると。
小川:もうー!委員会があるなら先に言って欲しいよね!
小川さんが戻ってきた。
〇〇:あ…
小川:どうしたの〇〇くん?
〇〇:あの…えっと…これ…ヘアピン…
小川:あ!落としちゃってたんだ!
小川:ありがとう
ここで勇気を振り絞り質問をしてみる。
〇〇:あ…あのさ…
〇〇:間違ってるかもしれないけど…
〇〇:もしかして…あーや…?
〇〇:このヘアピン…あーやしか持ってないやつだよね…?
小川:……
しばらくの沈黙の後。
彩:あー…気づいちゃった?
〇〇:それじゃあ…
彩:へへ…〇〇くんいつもかわいいって言ってくれてありがとう
〇〇:この前の握手会であーやに言われた言葉…
彩:実はね、〇〇くんの推しのあーやなんだよ?
彩:ずーっと〇〇くんは彩だと気づかないで本人にかわいい、好きだーって言ってたんだよ
彩:でもねすごい嬉しかったよ!
〇〇:ま…まじか…
彩:〇〇くん内緒だよ?
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なんと隣の席の女の子はアイドルでした…