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上ときどき下、それとたまに前

家までの500m。なんとなく下だけ見て歩いてみた。

つまらない。視界にはコンクリートと白線だけが映る。でも早い。いつのまにかアパートに着いた。いつも引っかかる水たまりにも一つも引っかからなかった。

次の日。

空を見上げながら歩いてみた。首が疲れる。でもなんだか上を向くと気分が晴れる。目に映るのは濃い青空と可愛らしい小さな雲。春の心地いい日差しを顔のすべてで受け止める。

またまた次の日。

前をしっかり見て歩く。家までの体感時間は早くも遅くもない。首が疲れることもない。しかし見落とした側溝の穴にひっかかりこけそうになった。

上を向いて歩こうなんて歌もあるけれど、上だけ見てても疲れてしまうし、どうしても上を見れない、見たくない日はある。かといって下をずっと見ていると、足元の危険は回避できるが退屈で周りが見えない。じゃあ前だけ向いて歩けばいいのか、と言われるとそうでもない。

一年365日。気分が沈んで下だけを見てしまう日もあれば、なんでもできるような気がして笑顔で上を向く日がある。はたまた特に何もなくて前を見つめてぼーっとする日がある。

そうやっていろんなところを見つめながらちょっとずつ生きていければいい。


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