行ったこともない合法風俗~バンドの娘~
少し日に焼けた肌に、首から下げられたチョーカーが特徴的な嬢でありました。
シルバーのチョーカーは「JB」と型どられており、昔の英語であそぼのアイツのまんまソレでありました。何処で手に入れたのか。
「アタシね、昔、バンドやってたんよ。」
「へえへえ、バンドですか。」
確かに言われてみれば、何処と無くそんな感じするような。私は興味を惹かれ嬢をジッと見ました。
嬢は少し恥ずかしそうに照れながら続けました。
「ええ。三人組のガールズバンド。売れる前に解散しちゃったんだけど、ライブじゃあ結構人気あったんよ。」
「へえへえ。そりゃ凄い。」
「うん。アタシって目元が田中眞紀子に似てるところを抜かせば、それなりに美人じゃあない。身体だって、普通に、エロい。」
「身体だって、普通に、エロい。」
嬢は誇らしげにこちらを見ておりました。
「だからね、最初のPVは、メンバーみんな水着で撮ったのよ。可愛いは正義ってね。」
「それゃ凄い。」
「でも、PV撮り終えた辺りから、メンバーの一人の出っ歯が、急に何かに怯えだしたの。」
「出っ歯。」
「何に怯えてるのか問いただしたら、『チャットモンチーが恐い。』って泣きながら訴えてきたの。」
「チャットモンチーですか。」
「そう、新進気鋭の三人組のガールズバンドが調子にノリ始めるとチャットモンチーに目をつけられて足腰立たないくらいにボコボコにされるって言う業界内の噂があったのよ。」
「へえへえ。そりゃ恐い。」
「でも所詮、噂だから気にするな殺すぞ、ってその場は眼鏡出っ歯を落ち着かせたんだけど、ずっとプルプル震えていたわ。まるで、子犬のように。小型犬。」
「そいで、どうなったんですか。」
「ボコられたわ。噂通り。」
「あいや。」
「ある日のライブの演奏中に、急にチャットモンチーがステージに乗り込んできて、真っ先に眼鏡出っ歯ガリを引っ捕らえると、狼狽える眼鏡出っ歯ガリを抱えたまたテーブルに上がって、そのまま高速パイルドライバーでドスンですわい。あまりに唐突な惨劇がに呆然と立ち尽くすアタシともう一人は割れたテーブルの破片で順々に脳天をぶん殴られたわ。一瞬目の前を火花が散ったのが分かったの。その後は、ひたすら謝って謝って……」
嬢はブルブルと震えていたのです。
その時の恐怖や緊迫感がありありとコチラに伝わってまいりました。
「何度謝っても、『私たちに謝るな。川合俊一に謝れ。』の一点張りで許してもらえなかったの。何故と、疑問には思ったけど、其よりも何よりも、許してほしいから、川合俊一にも謝ったけど、それでも駄目で……。
チャット8川合2の割合で謝ったけど駄目だった。じゃあ、チャット6川合4なら。それでも駄目。まさか、チャット3川合7なの。チャットモンチーごめんなさい。チャットモンチーごめんなさい。チャットモンチーごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一ごめんなさい。川合俊一……」
「ちょ、ちょ、落ち着いて」
「許してもらえたの。チャット3川合7で……。やっと……、やっと、誠意が伝わって……」
嬢は気づくとポロポロと涙を流していた。
「よかったですね。それでバンドは。」
「その日を最後に解散したわ。チャットモンチーの恐ろしさを身をもって体感したし、アタシはアタシでもうバンドに飽きてたし、出っ歯(笑)はダメージが甚大で下半身不随になってたし、悔いはないわいや。」
嬢は涙を拭い、眩しい笑顔を此方に向けた。
「さあ、お客さん何にいたしやしょう。」
まだ、二人のライブは始まっていなかったのでありました。
ウルトラピース
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