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前世紀の洋楽鑑賞 その3
原題:Duke
邦題:デューク
1980年3月発表の第12作。
「親しみやすいメロディ・ラインを備えた簡潔な作風を推し進め、シングル・ヒットもコンスタントに」(FM STATION 1987年no.8より)
今でも切り抜きを保管している当時の音楽誌のレポートでは「簡潔な作風」と評価されていますが、あくまで以前の作品との比較論。
普通のポップスやロックファンが聴けば、単純なサウンドではない。
最近、筋トレ・有酸素運動中のBGMとして再び愛聴しております。
感想
1曲目
Behind the Lines(Banks/Collins/Rutherford)
とにかく冒頭部分が素晴らしい。
聴いた瞬間、勝った!という感じで、アドレナリンが高まります。
筋トレ開始時に用いる理由はそこにあります。
ライブ映像を観ると、ラザフォードはギターをサポートメンバーのダリル・ステュアーマーに任せ、ベースを演奏。イントロ部分は、コリンズとサポートメンバーのチェスター・トンプソンによるツインドラム。
コリンズは、ヴォーカルパートでマイクスタンド前に立ち、カッコいい!
コリンズのソロアルバムでもリメイクされ、ホーン入りのポップなアレンジで、そちらもなかなか良いので聴いてみてください。
2曲目
Duchess(Banks/Collins/Rutherford)
前曲と3曲目のGUIDE VOCALと組曲。
フォロワーさんがトニーバンクスのインタビューを引用して詳しい解説をされています。
4曲目
Man of Our Times(Rutherford)
コリンズ&ラザフォードの重低音の効いたリズムと、分厚いバンクスのキーボードが心地良い。
5曲目
Misunderstanding(Collins)
離婚による傷心だったらしいコリンズの心象を反映した曲。ポップで聴きやすい。YouTubeでこの曲のPV、見れますよね。
6曲目
Heathaze(Banks)
バンクス作の彼らしい叙情的な曲。
Invisible touchのThrowing It All Awayに通じる部分があると思うのは私だけ?
7曲目
Turn It On Again (Banks/Collins/Rutherford)
曲を作り始めた時は、もう少しゆっくり目のメロディだったらしいですが、コリンズがコードを弾くラザフォードに、もっと速く!とテンポを上げさせて、この曲に仕上げたそうです。
ライブでは、ラザフォードとステュアーマーはギター2本とベースペダルで演奏。
1980年代、アンコールの定番曲。この曲に、Satisfaction(The Rolling Stones)、Pinball Wizard(The Who)などのヒット曲を挿入して演奏し、聴衆を盛り上げていました。
10曲目
Please Don’t Ask (Collins)
コリンズのインタビュー記事で、離婚で妻と子供たちが去り、がらんとした部屋に残された子供のおもちゃが転がっている、というのを読んだ記憶があります。
そんな彼の喪失感漂う心象を描いた哀しげな曲。でも、サウンドはジェネシス。
11曲目〜12曲目
Duke's Travels
Duke's End
仕上げの有酸素運動の最後を彩る、失礼。アルバムの最後を締めるインストゥルメンタルナンバー。最終曲では1曲目と同じメロディが登場し、再びアドレナリンが高まります。
見事な終章。アルバムとしての完成度は素晴らしい。3人体制になってからのアルバムの中では一番愛聴してます。
まとめ
3人それぞれの作曲だと個性が出ますね。
ポップ志向のコリンズと、ラザフォードも同様ですが彼の場合は英国的な癖を感じます。そして、バンクスは叙情性。
ゲイブリエルの脱退後、コリンズがヴォーカルを取るようになってしばらくは、分厚いサウンドに溶け込み、ある時は背負って歌っている印象を受けましたが、このアルバムから歌が前面に出始め、ヴォーカリストとして自信を深めた感じがします。
このアルバム以降、ジェネシスは1986年のInvisible touchに向け快進撃を行うことになります。
歴史の長いバンドですが、ポップ・ロックバンドとしては、このアルバムから始まったと言えるでしょう。