私を救ってくれた牧師さんの話
人生の中で困難にぶつかった時に 人は何かに救いを求める。
辛くて、苦しい時には 何かにすがりたくなる。
それは、悪いことじゃない。
それによって 自分も周りも 幸せになっていくなら何も問題はない。
私は何かの宗教に属している訳ではないけれど、試練の時には色々な人達に助けられて生きてきた。
今回は私に救いをもたらしてくれた牧師さんの話です。
私は結婚後、夫のDV、倒産寸前の会社の資金繰り、借金取りの対応、姑の看病、家事、子育て…と言う精神的にも肉体的にも苦しい時期があった。
長女の夜泣きと姑(ガンの末期)の看病で睡眠時間は毎日2時間、極貧生活で栄養状態も悪いうえに過敏性腸症候群で毎日下痢が止まらず体重は36キロまで落ちた。
毎日金策に追われながら育児と看病で私は疲れ切っていた。
過敏性腸症候群の症状はどんどん酷くなり 食べると下痢になるので怖くて食事もまともに取れなかった。
姑を東京の病院に連れて行く時は途中でトイレに行きたくなると困るので介護用の紙オムツを履いて運転していた。
夜は長女の夜泣きが毎日続き手を焼いていたが、同居の姑も「痛い!痛い!」と泣き叫ぶのでモルヒネを注射してもらう為に夜中でも朝方でも病院に連れて行った。
夜中も長女と姑の世話で私の睡眠時間はほとんどなくなってしまった。
借金取りのヤクザの嫌がらせも続いていたし、夫のDVもあり、そこから逃げたいと何度も思った。
でも、直腸ガンの末期で脊髄まで転移して何もできない姑とパーキンソン病の義祖父、足の不自由な義祖母を置き去りにして逃げる事は私にはできなかった。
夜中に睡魔に襲われウトウトしていた私に「痛い!痛い!痛いよ~」と泣き叫ぶ姑を見ていたら、心の中で悪魔が囁いた。
(早く死んでくれればラクになるのに...
私だって泣きたいよ。私だって苦しいよ。
早く、死んで!)
そう思いながら 必死で看病している私がいた。
私は 何処にも逃げ場もなく相談する人もなく、1歳の長女を抱きながら行くあてもなくフラフラと町の中をさまよっていた。
十字架に吸い寄せられるようにある教会に入ると、白人の神父がいたので、「すみません、少し話を聞いて頂けませんか?」と訊ねた。
「今、用事があるので又時間がある時に…」と断られてしまい、
冬の寒い道を 長女を連れて 私は又トボトボと歩き出した。
しばらくすると、又教会に辿り着いたが、夕方の忙しい時間帯だったので又断られるかと思い私は恐る恐るチャイムを鳴らした。
すると、私と同年代位の女性が赤ちゃんを抱いて「こんばんは、どうされましたか?」と優しく声をかけてくれた。
「教会に来るのも初めてで何もわからないのですが、ただどうしても神様の前で祈りたくて来てしまいました。」と私が困ったように言うと、
その女性は「どうぞ、中に入って下さい。今牧師を呼んできますから」とあたたかく中に入れてくれた。
その女性は牧師さんの奥さんだった。
「外は寒かったでしょう。 これを飲んで少し暖まって下さいね。」とホットミルクまで用意してくれた。
牧師さんに
「私は 世間ではいい奥さん、しっかりした奥さん、優しい奥さんと言われていますが、心の中は鬼です。
心の中では何回も姑に死んで欲しいと思いながら看病しています。
主人の事も憎んでいるし、私は何にも優しくないし、良い嫁でも良い妻でも何でもないんです…。」
そう言いながら私は号泣していた。
目の前にいる牧師さんも奥さんもポロポロ泣いていた。
そして、牧師さんは「あなたは鬼なんかじゃありません。
愛があって 優しいから 苦しいんです。
愛がなければ とっくに その家から出て行っているでしょう。
あなたは 愛深く素晴らしい人なんですよ。
神様は 全部 わかってくれています。
大丈夫です。一緒に祈りましょう」
そう言って 本当に心から 私の為に長い時間祈ってくれた。
他人の為に涙を流し、こんなにも愛を込めて心の底から私の為に一生懸命に祈ってくれる牧師さんの姿にただ涙が流れた。
相談する人も頼る人も誰もいなかった私に 一筋の光が見えた瞬間だった。
牧師さんは「いつでも来て下さい。朝でも夜でもいつでも。
一緒に勉強しましょう。」そう言ってくれた。
それから、時間があれば長女を連れてその教会に行って聖書や神について学んだ。
それも自宅でマンツーマンで教えてくれた。
勉強している間は奥さんが長女の面倒を見てくれた。
私は自由になるお金をほとんど持っていなかったので、1000円か2000円位しか献金できなかったが、それも牧師さんはほとんど受けとらなかった。
私の苦しい状況を察して何も言わずに私と長女を受け入れてくれた。
そして、牧師さんはその間 キリスト教に入信するようにとか、洗礼を受けるように勧める事も一切なかった。
その教会もそんなに豊かには見えなくて、本当に3人家族が質素に暮らしているように見えた。
それなのに、奥さんは私と長女にいつも手作りのお菓子やケーキもご馳走してくれた。
本当に神様みたいなご夫婦だった。
その牧師さんは、「神はあなたの中にいます」
「一瞬も離れる事なくあなたと共にいます」そう私に教えてくれた。
私が「今は 何もお礼ができないので、しっかりと生活できるようになったら必ずお返しします。」と言うと、
「私にそんなお礼とかお返しはいらないので、その分 あなたが 何かをできるようになったら 困っている誰かの為に何かしてあげて下さい。
あなたなら、きっとできますよ。
それが 一番、神様が喜ぶ事なので。」と言ってくれた。
私はその時、その言葉を深く心に刻んだ。
今、こうして癒しの世界に携わり活動を続けている私の出発点はそこから始まっていた。
あの時、あの牧師さん夫婦に出会っていなければ
今の私はいなかった。
神は苦しみの中に沢山の愛を私に届けてくれていたのだ。