サミットプッシュ
どうしてそんな過酷な事をするのか?
山登り達にそれを問うのは野暮な事で
僕にとっては東京で日常を送る方が過酷で
寝て起きて働くだけの生活の方がよっぽど辛い
真っ当に生きると言う事が一番難しいのだ。
一番最初に想像で登った山は赤岳だ
ありきたりだが、そのありきたりを一番最初に選んでよかった。
始めて想像で登って気づいた事は
思ってたより、山は寒いと言う事だ
山は過酷だが、ご褒美もちゃんとある
稜線(峰から峰へと続く線)を雲を見下ろしながら歩く時間は贅沢だ。もちろん妄想だが。
鎖場は大好物で
冒険心をくすぐる
どこまで信用していいかは、分からないが
信用しなきゃ疲労が山頂まで持たない
恐怖を麻痺させすぎると死に近づくが
恐怖を恐怖のままで居ても死に近づく
塩梅が大事なんだ。
苦しみや不安も自然の一部であると同時に
ただそこにあるだけである
妄想登山仲間のキレットはやとに訪ねる
『昨日はどんな山を想像で登った?』
キレットはやとは答える
『コジオスコ山さ、難しい山はまだ想像登山しないね』
憧れの山を、すぐに登るのは勿体無いって事か…
そう思いながら俺はウイスキーを喉の奥に流した
妄想登山家たちは
空想をリュックに詰めて、下界でチャーハンを頬張るのだ。
高い所は苦手なんだ。