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庭
勤め帰りの暮れ方、ふと立ち寄った町で「庭」に出会った。夕闇の中から、男が現れて言った。
「この庭はいけません。私はこの庭の管理人です」
「この庭のどこがいけないと仰るのですか?」
管理人と名乗った男は少し言いよどんでいたが、思い切ったように
「この庭では、不味いのです」と、言った。
「それならば、」と私は管理人の前に1歩近付きながら
「待ちます。この庭が不味くなくなるのを。昼も夜も、雨が降れば傘を差し、太陽が照りつけても傘を差し、庭の片隅に座り、待ちます」
※drawing ごごんまる