虹緒(ニジオ)明ぐま(アグマ)の「花咲ける東都の宵はRARARA」

ショートショートなテキストのアップをしていきます。たまに、描いた絵も出すかもしれません。 虹緒明ぐま

虹緒(ニジオ)明ぐま(アグマ)の「花咲ける東都の宵はRARARA」

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最近の記事

just right

近頃僕の中の「箱」のおさまりが悪い。 おそらく、僕の身体と箱のサイズが気付かないうちに合わなくなってきているのだろう。と、推測している。 箱の角が妙に当たってひりひりと痛かったり、箱の大きさを意識し過ぎて、動きが鈍くならざるを得なかったり、している。だが見た目には何も変化していないので、特に生活に支障はない。 箱のせいで動きが以前と違う僕を見て、友人のドナルド・マクドナルドが笑うくらいは支障のうちには入らないだろう、多分。 「特に生活に支障はないわけだ。なるほどね」 そう

    • 螺旋

      「見事な芸術ですね」 「はい。アール・ヌーヴォーでございます」 「そしてこの位置、屋敷の中で階段として存在させるには不思議な位置ですね」 「…そうでございますね」 「なんと言うか、単純に下のフロアーから上のフロアーに昇る、という目的だけで造られてはいないような」 「…そう、かもしれません」 「それにしても、こうして、一段一段、昇りながらも、手摺りの装飾に、気を、取られて、しまいます、が……おお!知らぬ間に随分と高いところに来ている?!いや、そんな筈はない。おかしいな目の錯覚

      • つるばら

        靴を履く時も、その音が深夜の家の中に気配と共に響くような気がした。決めた気持ちのまま、そっとドアを開けた。 冷気はこの冬一番くらいの冷たいためいきを一吐きすると、僕には用がないと言わんばかりに玄関をすりぬけて行った。 門までの踏み石は硬く凍っていた。僕は、今しがた通り抜けて行った冷気の奴のせいなんだな、と思った。誰のせいだろうと、滑らないように気を付けて踏み石の上を踏んでいかないといけない。転んで痛い思いをするのは僕なんだ。踏み石だって迷惑だろう。 門の手前で月を確認した。

        • 真夜中の特製メープルメロンパン

          「さあ!東の空に太陽がその姿を現す前に急いで食べるのです!特製メープルメロンパンを!」 「偉大なる魔女、カルロロブリジータ様!もし、月が太陽と入れ替わる時までに、この特製メープルメロンパンを食べつくせなかったら、そんな、考えるだけでも、怖い。その時!特製メープルメロンパンに異変が生じるとか!いったい特製メープルメロンパンは、どうなってどう変化してしまうのでしょうか?!」 「いや、普通のメロンパンになるだけだが」 偉大なる魔女、カルロロブリジータ様はそう仰いました。