星新一賞没案02 「スランプ」

薄暗い一室に今回の殺人事件の関係者たちが集められた。その中心には茶色 いトレンチコートを羽織った探偵が。
ざわつく関係者を抑えるように探偵が静かに口を開く。
「それでは、今回の事件の経緯について軽くおさらいしましょう。被害者は田中さん。彼は塗装会社を経営していましたが、いわゆるブラック企業というやつで社員の中からは不満の声がありました。そして、昨夜彼は密室状態の自室で死亡しているのを発見された。一見すると自殺に見えますが、あるトリックを用いれば密室状態を作ることも可能です。そしてそのトリックとはd」

そこまでパソコンに打ち込んだところでインターホンが鳴った。久しぶりに仕事をしようと思えばこれだ。
しかしだれだろう?担当の編集には締め切りを伸ばしてもらったばかりのはずだったが。
私は、過去に何度か推理部門で受賞するほどの作家だったが最近はめっきりスランプとなってしまった。
はーい、気怠い声で返事をしながら玄関の戸を開けた。
「推理作家の○○さんですね?塗装会社社長の殺人容疑で逮捕します」
玄関の戸を開けた先には令状を持った複数の警察官が。
はぁ、確かに腕が落ちているのは実感していたがまさかここまでとは。ばれなかったトリックで推理小説を出版してきたがどうやらここまでのようだ。
牢獄のなかでゆっくり次回作の構想を練るとしよう。

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