木枯らしが吹く街で…第4 話
第4話:始まりの季節
『あのさ…優菜…来週火曜から秋休みだろ?』
『うん…?』
私は小さく頷いた。
『いや…その…』
煮えきらない態度を取る涼介
『秋休み、俺に買わせてくれよ』
涼介は真っ直ぐ私を見て、そう言った。
『はあ?何言ってんの?』
私は吹き出して笑ってしまった。
『お前の秋休み…俺が買って、その期間、恋人にしてやるよ』
涼介は至って真面目な顔で言う。
『秋休み買うってなに?恋人にしてやるって何なの?バカにしてる?』
悪い冗談だと想った。
『100万…100万で買ってやるよ』
そうか、そっちがそう来るならと
私はこの【悪い冗談】に乗ることにした。
『ふーん分かった、いいよ…売ってあげるよ。ちゃんと100万くれるなら…』
『ホントか?』
『なんか、よく分かんないけど、暇だしいいよ…ただ…』
涼介は不思議そうな顔をして
『ただ…?』
と聞き返してきた。
『たださ…なんでずっと上からなの?ムカつくんだけど…』
と私は笑った。
『出資主だからだよ』
涼介はそう答えた。
『なんかよく分かんないけど、一応は楽しみにしといてあげるよ、その恋人の真似事』
私は腕を組んで笑いながらそう言った。
『優菜も上からじゃん』
涼介はようやく笑ってくれた。
私が感じていた違和感は、こんな事を伝えたいためだったのだろうか。
『とりあえず、秋休み中はうちの別荘で一緒に暮らしてもらう…いいな?』
なんだか今日の涼介は、ずっと強引な言い方をしてる。
涼介らしくない。
これから恋人の真似事するのに、なんだか嫌いになりそうだ。
『はあ?なんで涼介と毎日…しかも一緒に暮らさなきゃいけない訳?』
『出資主が決めたルールだ…』
ほんの一瞬、涼介はまた淋しげな顔をした。
その雰囲気に飲まれそうになった。
『わかったよ…まぁお金のためだし、我慢してやるか…』
その雰囲気を壊すように私はそう答えた。
涼介は一瞬下を向き、私に聞こえないくらいの声で
『ごめんな…』
と言ったが、もちろん私は聞き取れなかった。
−続く−
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