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小説 (新作)ショートショート ひだまりの詩

私は学校というものに事件なくマトモに行けた事が一度もない。

それは幼稚園からもう始まった。
在りし日の母によると、

給食で出された野菜が嫌いで、
残された私は先生が目を離した隙に、
靴も履かず靴下のまま幼稚園を逃げ出し、
家に帰ってしまった。

家に裸足で帰ってきた私は、
母も含め全ての大人を拒み、
押し入れに立て篭ったと云う。

幼稚園は送り迎えのバスを出していて、
お迎えの時間ではないのに、
帰ってきた私に戸惑ったと母は話した。

当然、幼稚園担任教諭も含め、
幼稚園は大パニックとなっており、
当時の幼稚園にとって苦渋の選択である、
保護者への連絡によって、
家に帰って来て、
現在押し入れに立て篭っていることが、
判明した。

皆さんの最初の記憶は何だろうか?。
私が朧気に憶えているような気がする、
最初の人間としての記憶は、
この靴下の帰り道であります。

翌年、担任教諭の先生は、
「自信がなくなりました。」
と幼稚園を退職し帰郷した。と、
母は責めるように語った。

律儀な先生は以後数十年、
母と年賀状のやり取りをした。

知らんがな!
幼稚園児の責任まで取りきれんわ。

次は小学2年の時である。

また給食の野菜が嫌いで残された私は、
隣で一緒に残されていた卵アレルギーの娘の、
銀紙カップ目玉焼きを食べて逃走した。
ランデブーではなく、単独犯。

今度は悪友と秘密基地と呼んでいた、
体育倉庫の跳び箱の中に立て篭った。

当然、事態が発覚し担任教諭を含めた、
学校関係者様方はパニックとなった。
再び苦渋の選択である保護者連絡が、
行なわれたが、今回は母もパニックとなった。

事件は意外な形で解決したと
在りし日の母は語った。

母が学校に着くと、
警察署のパトカーが数台来ており、
学校にパトカーが来たことにより、
放課後の子供達が大勢集まって
見物していたらしい。
子供達は珍しいパトカーを
盛上がって見物していたと云う。
その中に居なくなった筈の、
息子が平気な顔で混じっていた。

「あんたを探しに来たんだよ!。」

おもわず大声でつっこんだ。と母は語った。
必至に探していた担任教諭や
関係者様に告げると、
警察官も含め全員吉本新喜劇並みにズッコケた。
と母は語った。

犯人はパトカーに誘い出され、
立て篭っていた跳び箱から出てきていた。
跳び箱の中はとんでもなく、
暑く退屈だったからである。

類似例は小学4年生でも起こった。
以後私に関しては特例として、
玉ねぎを食べるのは免除された。
このように食の不一致は、
不幸な結末となってしまう場合が多い。

最近のお昼御飯は、
子供達の成長期にあわせて多く炊かれ過ぎた、
お米の処分の為の焼き飯が多過ぎるのでは、
ないでしょうか?!。先生!。



嫁「知らんがな。」
  「特殊例やろ、どっちも特殊例!。」



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