絵になる美しい街並みを創造する為の粉本/ 引田(ひけた)/香川県綾歌群/朱色に彩られた街並み
引田(ひけた)は香川県の最も東に位置する街。地理的に瀬戸内海航路の風待ち港だったこと、更には高松と阿波(徳島)を結ぶ阿波街道に接していたことから、東讃随一の商都として古くから繁栄、室町時代末期には引田城も築かれ、今でも中心街には街割が残り、松の下・魚の棚・久太郎町等といった地名と街並みが残っている。
この街並みの主たる景観形成要素は江戸時代に創業した醤油醸造業者のかめびし屋と醤油・酒醸造業者の讃州井筒屋が建設した一連の建物、それに江戸時代に建てられた泉家や松村家、長崎家、山本家、等々の数多く残る町家、更には昭和7年に建てられた洋館の旧引田郵便局であり、これらが核となって美しい街並み景観を創出している。
この街並み景観の内で、見逃せないのは、御幸橋を南側に渡ってからかめびし屋に至るアプローチ。このアプローチでは最初に渡る御幸橋に取り付けられている擬宝珠付きの朱色に塗られた欄干を前景に、これも殆どの壁面を朱色に塗った街路の両側に広がるかめびし屋を中景に見た街並み景観が見られるし、前進すれば国の登録有形文化財に登録された迫力あるかめびし屋の主屋や蔵、作業場、資材置き場等、18棟で構成される朱色の様々な造形美が堪能できる。
この朱色は同じベンガラで街全体を染めた吹矢(岡山)や一力亭(京都)のそれと比べると、赤みが強く樹脂塗料を塗ったと思えるほど強烈。善し悪しは別にして、街並み景観のアクセントとして、また引田を印象付けるのに役立っている。