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絵になる美しい街並みを創造する為の粉本 /吉良川(きらがわ)/高知県室戸市吉良川町



 高知市内から吉良川へ車で行く場合、高知自動車道を使い、南国ICから国道55号線を室戸岬に向かえば1時間半ほどで着ける。吉良川は明治後期より近隣の山で産出するウバメカシを原料にした土佐備長炭を阪神方面に送り出す港町として栄えたことから、旧街道沿いには平成9年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された外壁を土佐漆喰で白く塗った切妻・平入・桟瓦葺の立派な町家で形成された街並が残っている。地理的に太平洋に直に接していることから、温暖で黒潮の恵みを得る地域だが、台風の常襲地で、それらが来襲すれば保有勢力のままを受け止めなければならない地域でもある。

 その対策は国道から見ても余り気が付かないが一歩町内に入れば、暴風雨から家々を守るために先人が考えた工夫が垣間見られる。その一つは暴風雨から家を守るための「いしぐろ」と呼ばれる石積みの塀。この石積み塀は一般的な方法で台風の来襲が多い地域でよく見られるが、もう一つの対策は建物の妻側や桁側の外壁に何本もの水切り瓦と呼ばれる庇を設けていること。この庇は工学的、幾何学的に見ても興味深く、これがこの街の景観を特色付けている。建物を風雨から守る一般的な対策は屋根庇を長く出すことだが、尋常でない暴風雨に襲われるこの地域では屋根庇が風に煽られて飛ぶ被害に備えて、その必要な屋根庇長さを分けて、外壁に取り付けることにより、屋根庇長さの持つ効果と同様な効果を持たせているのだ。

    この工夫はこの地域の風土を建物デザインに取り入れたもので、吉良川に取ってのかけ替えの無い社会資産だ。

★絵になる美しい景観形成要素
#歴史 (保存修復継承)、#気候(台風対策)、#風土(土佐漆喰等地産材料利用)、#構図構成(同類連続、調和と若干の変化、アクセント〔壁面の瓦庇〕
、#個性(壁面の瓦庇の多用)


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