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絵になる美しい街並みを創造する為の粉本/鷺浦(さぎうら)/島根県出雲市大社町/北前船の寄港地としての面影が残る街並み

 

 かつて出雲大社の裏手に聳える山々を幾つも超えて辿り着く陸の孤島だった鷺浦だが、今は23号線を島根半島の西側から上り、途中から出会う八千代川に沿って下れば何とか辿り着く。
 遠望の第一印象は小さな漁村だが、細い街路に入って観察すれば、過去に繁栄した証である重厚な街並みが乱開発されず凍結されたように残っているのに驚かされる。
 歴史を顧みると古くは出雲大社領7浦の一つとされていたことや松江藩領となった江戸時代から日本海を行き来する北前船が風待ち・潮待ちのために立ち寄る天然の良港だったこと、更には鷺浦鉱山が開山されたこと等から発展、これらを築いたらしい。

 その街並みの骨格となる街路は有機的に設けた他の漁村のそれとは異なり港と背後の山の間にある狭い平地に区画整理でもしたかのように、港へ誘う平行に設けた12,3本の細い街路とそれらと直交する1本の街路で構成されているのが特色。また、街並みを構成する町家の多くがこれも他とは異なり間口が広く奥行きが狭いのが特色。これらの町家の多くは往時財を成した廻船問屋などで、揚げている塩飽本島の塩を商った「塩飽屋」等、屋号を見れば何を生業としていたのが分かる。その形態は屋根に赤い石州瓦を葺き、壁の腰を板張りにし、上部を白漆喰で仕上げた伝統的な平入りの立派な建物だが、一味違うのは港に面する町家の壁面には屋根まで届く風避け・雪避けの間垣を設けていること。
 これらにより形成される独特の街並み景観は山陰の日本海に面する鷺浦の気候風土の成せる技、そのままの姿で残して欲しいものだ。

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