絵になる美しい街並みを創造する為の粉本/奈良町・奈良公園(ならまち・ならこうえん)エリア/奈良奈良県奈良市 /古都奈良の風情を感じる街並み
近鉄奈良駅は都市計画や景観計画に配慮してか、地下に納められているが、構内は古都奈良の雰囲気を醸し出す空間ではない。しかしながら、地上に出て散策を始めれば、奈良らしくしようと努力している戦後建てられた比較的新しい建築群で形成された街並に出会える。よく見れば、巷でカッパ屋根と称する陸屋根のパラペット回りに瓦張りの庇を付けたり、漆喰風の色彩を施した外壁に格子を付けたりで、余り様になっていない。
その訳は伝統的建築を真似た建築で形成された街並みだからで、本物と比べればお粗末だ。
その伝統的建築によって形成された美しい街並みを2ヶ所お薦めするとすれば元興寺周辺の江戸末期に建設された町家で形成された奈良町と奈良公園エリア、中でも東大寺大仏殿の北側から二月堂に登って行く参道に沿った街並み。
奈良町は瓦葺き屋根の上に煙出しを付けた切り妻タイプの町家が連なる街並みだが、外壁面を二層に分け、上層部には漆喰塗りの壁に虫篭窓を、下層部には京格子より太い奈良格子を付けた開口部を設けているのが特徴。建物に袖卯建やのれん、ランタン、ばったり床机、軒先に吊された赤と白の布で作った庚申さんの身代わり猿等、奈良町らしさを増幅する小物が適度に取り付けられた景色は結構絵になる。
一方、東大寺裏の参道は二月堂に向かってほんの少し湾曲している街並み、坂道の両側に連なる白壁の塀や土塀の先に二月堂が見える景色が心地良い。これらの場所を訪れると時々、絵を描いたり、写真を撮ったりしていることから、誰もが同様な気分になる空間なのだろう。私も好きで度々訪れる。