父は海で育ち、海に還る。
父の遺言はただ一つ。
「墓はいらない、骨は海へ撒いて欲しい。」
父は2年前の寒くなりかけた秋に自宅で倒れ、そのまま不帰の客となりました。
3回忌となる今年、父の願いをようやく叶えることができます。
・大海原を独り占めに
父は福島県相馬市生まれ。
近くには松川浦があり海が大好きでした。
松川浦には遠浅の原釜尾浜(はらがまおばま)海水浴場があります。
夏休みはここで海水浴するのが恒例でした。
父は海に入るなり沖の方までグングンと泳いでいきます。
どこまで行ったのか見えなくなり、毎回いつまで経っても心配するほど戻ってきません。。。
海は深くて波があるのに何であんなに泳げるんだろう???
私は子供ながらに不思議で仕方ありませんでした。
ちなみに、私と弟は水が苦手。。。
父から泳ぎを教わっても結局海では泳げませんでした。
そして母も同様。
母が海に入ったのを見たことがありません。
後から聞いた話ですが、母には「水難の相」があるとか、、、
(父は知らなかったのでは、、、)
(そもそもどこで占ったの? すごく気になる)
私たちは浅瀬でチャポチャポ。これで満足。
父からしてみれば「せっかく家族で海水浴なのに〜なんて物足りないんだ!」と海に来るたびに思っていたかもしれません。
なら仕方ない!
父は大海原を勇ましく自由に独り占めにすることでそんな気分を挽回していたのだと思います。
・海へのお礼、そして散骨へ
父の遺品を整理していたら松川浦散策マップを見つけました。
震災復興で海岸の景観が整備され松川浦大橋から昇る朝日の写真がとても綺麗です。
(朝日に照らされた橋の影にオレンジに染まった空とのコントラストがなんとも美しい)
父は亡くなるその日も相馬に行ってました。
数年がかりで実家じまいをしており、この日は更地にした土地の滅失登録申請でした。
どうやらこの申請が実家しまいの最終作業だったようです。
実家が無くなる寂しさと全てをやり終えた安堵が入り混じった父の気持ち、、、
生まれ育った家であり、少年だった頃の楽しい思い出がいっぱいいっぱい詰まっていた家。
そんな家を最後に残された父が取り壊して引き払う。
その時の父の思いはどんなに寂しくて悲しくて悔しくて辛かったに違いありません。
最後、大好きな故郷の海へ報告とお礼に行ったのだろうと思います。
そんな父の散骨への願い。
父が育った松川浦周辺の海域あたり又は東北の太平洋側で実現したいと思い、色々と情報を調べてきました。
・親父へ
親父、
改めて今まで本当にお疲れ様でした。
うちらのことどうもありがとう。
母ちゃんはね、施設で元気にしてるから心配いらないよ。
散骨までに2年も時間をかけてしまいごめんなさい。
松川浦じゃないけど、夏休みに連れていってくれたことがある松島の海でね。
何十年ぶりに家族で船に乗ろう。
最後の親父との海。
色々な思いが巡ってきてしまうけど。
親父の願いを叶えることが出来て良かったよ。
当日は松島の海が晴れるといいね!
天国からもお願いしておいてね!
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