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バイキンマンは考えを引き出す天才!(知的葛藤を引き出すキャラのお話) #43

 ここでは、バイキンマンの素晴らしさを、「小学校1年生の算数の授業」の様子を通して伝えたいと思います。

 私は、小学校の教員時代、教員として日々の教育実践をする傍ら、教科の専門として算数教育の研究をしてきました。その時に子ども達の問題解決の意欲を高める実践として、やなせたかしさんのアニメ「アンパンマン」のキャラクターを使わせてもらったことがありました。(しかし実は、子どもにとってはアンパンマンの登場より、バイキンマンが登場した時の方が何倍も効果があると私は思いますが‥‥。)
 ここでアンパンマンの登場と言っても、着ぐるみの「アンパンマン」に登場してもらうのではなく、算数の問題を出す挿絵のキャラとして登場してもらう設定です。
 以下その一例(のてNOTE 特別授業編)です。(やなせ先生、ありがとうございました。)

 1年生の算数の問題です。
先 生:「今日は、アンパンマンさんからの問題です。」

黒板に貼った算数の問題(アンパンマンの登場)

 子どもは、この時のようにアンパンマンの登場でなくても、日頃から出された問題を見て自分なりの方法で問題を解き出す習慣がついています。
<子どもとの会話の例です>
子ども:「先生、○(まる)図でかいていいですか。」
      「ぼくは、絵でかいてみます。」
      「私は、すぐ式がかけます。」
先 生:「式にかけたのは凄いね。でもね他のお友達にも分かりやすいよう      に、絵や図をかいてから式をかいて説明して下さいね。」

 そうすると子ども達はおもむろに下記のように○図や絵図で自分の考えをかき出します。そして式も……。

この時の子どもが考えた考えの例

 今の小学校1年生での学習では、これで終わりになりますが、30年前頃は次のような(もっと難しい)問題まで解くことが必要でした。そこでバイキンマン(のキャラクター)の登場となります。

<ここでの子ども達とのやり取りから>
先 生:「昨日はアンパンマンの問題でしたね。どうでしたか?」
子ども:「簡単だった!」
    「すぐ分かった。」
先 生:「では今日は、バイキンマンからの問題です。」
子ども:「エー!」
    「バイキンマンは意地悪だから、絶対難しい問題だ。いやだ。」  
    「でも、ぼくは絶対解いてバイキンマンをやっつけるぞ。」
先 生:「では、バイキンマンからの問題です。」

バイキンマンが登場する問題

子ども:「なんか、バイキンマンの問題は難しそう。」
            「どうしようか。困った。」
            「○(まる)図や絵図にかいたら、分かるんじゃないかな。」
              「問題のお話の順番に○でかいてみよう。」
先 生:「では、解いて下さい。終わったら、友達にも分かるように説明できるようにしてね。」

バイキンマンが出した問題に対する子どもが考えた考えの例

  詳しいことは省きますが、この2つ目の授業は難しい問題でしたが、子ども達は自身が身につけた2つの力でバッチリ解けていました。
 その2つの力とは、
① いつも解くときに(考えを進める補助として)まる図や絵図を使っているので、子ども達は迷いなくこの方法(図にかくこと)が出来ていた。
② 問題をよく読んで、図に問題の様子(構造)をかき込むことができていた。

 算数の学習では、このように、子ども自身が日頃から使い慣れた「自分の方法」を身につけていることが大事です。(これが算数で言う「問題解決学習」です。)
 つまりバイキンマンのような難敵(笑)でも、自分がいつも使う方法に慣れていると、絶対解けるという自信が身につく。このところがとても大切です。 

 この問題は、バイキンマンが問題を出すという設定をしたことで、子ども達に知的葛藤が生まれたという内容でした。小学校の学習では、このような学習を仕組み、問題解決する学習の積み重ねをしてきています。(このバイキンマンの登場は、子どもにとって「解くぞ」、「絶対解ける」という意識に繋がりました。その意味でバイキンマンは、子どもに考えを引き出させる天才キャラです。)
 今日のブログは、教育談議になってしまいました。

 最近は、タブレットを多用した学習が盛んのようですが、自分自身の方法をしっかり身につけ、黒板で学級のみんなで互いの考えを交流しながら解決していくという姿が見えにくくなっています。私はそこが少し不安です。子ども達は、本当に自分で解決できる力を身につけているのかと‥‥。
(令和6年3月29日)


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