「not シラフ」
飲屋街の中、酒であったまった身体で街をふらりふらりと歩いていた。
「ん?」
すると近くに見覚えるのあるラーメン屋が見えた。
シラフではいけない。クソまずいラーメン屋だ。しかし、あくまでシラフだ。
暖簾の隙間から漂ってる据えた臭いに導かれて小蝿のようにやってきた。
脂ぎった店内。厨房の奥からは今にもゴキブリが這い出てきそうだ。
注文を終えて数分後、ラーメンが来た。暖簾から漂ってきた以上の強烈な臭いが鼻を襲ってきた。
ここのラーメンは酔ってる時に食うのが美味い。冷静な感覚で食ってはいけない。
そう。つまり今は絶品だ。何だこの味は。おかしくなる。脳髄が溶ける。細胞が塗り替えられる。塩分濃度? 知ったことか。今、俺はラーメンを食っているんだ。
そうしてまんまとしてやられた俺はダシを一滴残さず飲み干した。
やっぱシラフじゃやってられんねぇな。そう呟く俺の息は据えた臭いと化していた。