第6回:日本人学校決定からの怒涛の4カ月間
派遣登録通知から始まる慌ただしい準備
日本人学校への派遣が正式に決まったのは、ある年の12月中旬からでした。その通知が届いたのは冬のある日。その瞬間は、喜びがこみ上げると同時に、すぐに迫りくる準備の波に圧倒されました。何せ、通知から2日後には書類を提出しなければならず、速達での対応が求められたのです。公用旅券の申請を含め、すぐに手続きを進める必要がありました。
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息子たちへの報告の難しさ
派遣先が決まった次の日、その日が来ました。私は3人の息子たちに、「実はパパの仕事の関係で転校することになった。行先は外国だ」と伝えました。息子たちはぽかんとした顔で私の言葉を聞いていましたが、やがて長男は泣き出し、次男も目がうつろに。そして、小学校に入りたての三男は、お兄ちゃんたちの反応をじっと見つめていました。せっかくの外食も、その日はのどを通らず、帰宅。息子たちは特に、慣れ親しんだ野球を辞めなければならないことや、見知らぬ外国への不安に、心が揺れ動いていたようでした。
その日を境に、私たちは少しずつ派遣先の国について話し合いを重ねました。子供たちが抱く不安を取り除くため、時間をかけて理解を深め、やがて3人とも徐々に渡航に前向きな姿勢を持てるようになっていきました。家族一丸となって新しい生活に備える姿勢が、少しずつ形になっていったのです。
家族全員のパスポート準備も急務
通知の翌日、仕事が終わった放課後に家族を連れて、急いで近くのカメラ屋へ行きました。家族全員分のパスポート用証明写真を撮影。8,000円の支出がかさみました。こうした準備に、気持ちが焦りながらも「いよいよだ」と実感がわいてきます。市役所で戸籍謄本を取得し、速達代金も含めて合計8,935円。この支出はほんの始まりに過ぎませんでした。
予防接種の大出費
渡航に向けて必要な手続きの中で、一番時間を要し、金銭的にも負担が大きかったのは予防接種でした。A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風…その数はどんどん増え、調べていくうちに、私と妻には麻疹・風疹混合ワクチンと日本脳炎も必要であることが判明。初めての経験であるため、戸惑いも多く、小児科の先生に何度も相談を重ねました。
幸いにも、通い慣れた病院で予防接種が受けられることがわかり、一安心。しかし、金額は驚くほど高額で、5人分の接種費用が合計426,200円。これだけの出費に、「これは必要な投資だ」と頭で理解していても、家計に重くのしかかりました。それでも家族の健康と安全を守るためには、避けて通れない道でした。
外国人体格検査という壁
次に訪れた壁は「外国人体格検査」でした。これまで聞いたこともない検査が渡航先の国では必要だということで、住んでいる地域の病院に問い合わせましたが、どこも対応していないという返答。途方に暮れかけましたが、最終的に都道府県内の大きな都市で検査を受けられることがわかり、妻と一緒に年休を取って出向くことに。
2人分で71,000円の支出はやはり大きかったですが、無事に必要な手続きを完了することができました。
限られた時間での手続きと出国準備
普段の業務をこなしながら、次々に押し寄せる書類手続きや準備。教員免許授与証明書や卒業証明書を母校に申請しに行った時は、懐かしい校舎に足を運ぶ機会ができ、少し嬉しい気持ちにもなりましたが、犯罪経歴証明書の申請や、ビザの発行手続きなど、ひたすらに書類を揃え、期限に間に合うように走り続ける日々でした。
4月3日に渡航日が決まり、ようやく日本を発つ準備が現実味を帯びてきました。ですが、その間にも家のことや家族の準備も進めなければなりません。家をどうするか、2~3年の長い間、空き家にしておくリスクを考え、最終的には実家に管理を頼むことにしました。
生活環境の整備と家族の支度
水道や電気、インターネットの解約手続き、郵便物の停止、そして自家用車の売却や保険手続きまで、細々とした準備が山積みでした。さらに、息子たちの転校手続きや教科書の手配、クレジットカードや銀行口座の対応も忘れてはならない重要なポイントです。
莫大な費用と日々の奮闘
出国に向けた準備はまさに目まぐるしく、また費用面でも予想をはるかに超える額がかかりました。これまで積み上げてきた貯蓄だけでは足りず、最終的には実家に資金を借りることになったのです。それでも、荷物を段ボール20箱にまとめ、家族全員で新しい生活に向けて歩み出す決意を固めました。
まとめ:新たな冒険の始まり
長年勤めてきた学校とも3月下旬にお別れをし、たくさんの思い出を胸に、新たな挑戦に向けての準備を進めました。渡航日は確定し、準備も整いましたが、その間の4カ月は、人生の中でも最も忙しく、同時に期待と不安が入り混じる特別な時間でした。
これから日本人学校を目指す方々には、心構えとして「準備の大変さ」だけでなく、金銭面の負担も計画的に考慮することが必要だと強く感じました。慌ただしい準備の中にも、家族と一緒に新しい冒険へ踏み出す日々は、これからの未来を切り開く大きな一歩だったのです。
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