御相伴衆~Escorts 桐藤追悼特別編 Family Editionより「Iron Rose」② (第138話)
彼女は、小道具の造花の薔薇の花束を抱いて、バンドの演奏に合わせて、歌った。
「先の大戦の時に流行った曲らしいな」
「皮肉なもんだな、異国の地で、軍服で、こんな歌を聴くなんて」
「歓迎の意でも、あるんじゃないのか?この演目で」
曲終りに、「ミスター、ソルジャー」と、女たちは、揃ったように、俺たち異国の軍服に声を掛けてきた。灯りが落ちた。スポットライトで、再び現れた彼女は、着ていたワンピースの裾の部分を剥ぎ取るようにして、背後に投げた。ワーッと、フロアから、歓声が上がり、指笛が鳴った。手拍子が始まった。舞台の中央から、ポールが迫り上がってきた。
彼女は、先程とは、打って変わっての、その長い脚を余す所なく披露した、ポールダンスを始めた。舞台傍からは、紙幣が投げ込まれ、中には、それを紙屑のように投げつけるものがいたり、ネックレスのように折り繋げたものを、彼女が舞台の際にきた時、首にかけてやる者まで現れた。
「美亜凛よ。人気があるの。歌とダンスが上手いからね」
「そう・・・典型的なランサム美人だ」
「まあ、なんて言い方なの?私は?」
「個性的だな、・・・」
「どっちが、お好み?」
寛喜と、その隣の女の会話が、耳に入ってきた。他の尉官たちも、言葉は解らなくとも、隣にいる酌婦が甘えるように姿垂れかかると、その相手の女に目配せをする。
「向かいの宿、行けば、解るようにしてある。軍服を見れば、通してもらえる」
寛喜は、一応、ここは慣れているらしい。段取りをつけてあった。小躍りするような仕草で、甘える女たちが、尉官たちの手を引く。俺の隣で、眼鏡をかけた女が、甘えた声を出してきた。
「ねえ、皆、行ってしまったわ」
寛喜が、その子の手を引いた。
「ダンサーの子、頼んだ」
「おい、ちょっと、待て・・・」
俺は、ソファテーブルの席に、一人、取り残されてしまった。そこへ、元のワンピース姿の彼女が戻ってきた。
「こういうの、なんていうんだっけ?」
「え?」
「残り物の福?・・・だったかしらね?」
「Iron Rose」③につづく
御相伴衆~Escorts 桐藤追悼特別編 Family Editionより
「Iron Rose」② (第138話)
お読み頂きまして、ありがとうございます。
作中の歌「Iron Rose」は、いわゆる反戦歌として、このスメラギでも、市井で歌い継がれているとのことです。
さて、本日より、この「御相伴衆」も、メンバーシップの皆様、並びに、一般の皆様が、同一の条件で読んで頂く形となりました。
一般公開のマガジンから、遡って、お読みになって頂きますと、お話の全容が明らかになります。
メンバーシップの皆様におかれましては、1か月6話のご提供を、より超えた状態になりましたので、この条件で、一般公開となったことを、ご了承頂きたいと思います。
これにて、皆様が読める形で、ラストまで進んでまいります。
あと少しの間ですが、宜しくお願い致します。
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