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御相伴衆~Escorts 第一章 第九十九話 暗躍の行方4「高官接待③」

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 柚葉、マジ、知ってるんだな。維羅のことも、はっきり知ってて、関わりもありそうだな。多分、維羅とよく話しているのは、今の感じだと、俺より、柚葉かもしれない。でも、解らないな。「従ってる側」って?第二皇妃様の指示なんじゃないのか?

 でも、維羅との約束は守る。本来的な位置づけというか、その辺りを、俺が知らなくても、大事な役割を貰ってるのは、解るし。推測で、柚葉に打ち明けたことで、何かが、不味くなるかもしれないし・・・。

「大丈夫よ。護ってあげるから」

 維羅の力が働いて、俺は、高官との夜伽もパスになったってことかな?

「俺の初めてなんだよね。維羅」

 柚葉、それって、・・・慈朗と一緒ってこと?

「解ると思うけど、俺、紫統シトウ様とあれじゃん。あれね、昔っからなんだよね。紫統様とは親戚で、カッコいい高官だって、ずっと、憧れていた。勉強や、作法、特に、身体の使い方というか、所作については、教えて貰った。本当に、カッコよくて。今だって、好い感じのロマンスグレーだろ。だから、教えを請うたのは、俺の方だったんだ。通うようになってね、その内、夜も泊まるようになって、可愛がって貰うの、驚いたけど、抵抗はなかった。文字通り、俺は純粋培養の男色を仕込まれたんだろうと思う。やっぱ、上がるのは、女より男だし、結果、良かったんだ。そもそもの素質があったんだよね」

「・・・そうか、そうだったんだ」

 なんとなく、柚葉って、無理くりそうなった感じはしない、と思ってはいたけど・・・でも、別に、今、俺に、そんなこと話さなくてもいいのなぁ・・・

「で、初めてのスメラギとの石油交渉の時、紫統様についてきたんだ。その時に、第二皇妃様に初めてお会いして・・・。あの方、無遠慮に俺のこと、じろじろと見てきてね。おもむろに『この子を頂けるのならば、交渉に応じましょう』って、紫統様に言ったんだ。あの時、ショックだった。『解りました。置いてまいりましょう』ってね。以来、俺、ここにいるんだけどね・・・」

「・・・」

「あの頃、俺は、名目というか、桐藤の遊び相手という位置づけだったんだよね。まず。まあ、正直、あの頃は思い出したくないぐらいに、桐藤に虐められた。あの数馬の初日みたいな感じでね。まあ、それは置いといて。そんな感じで、ゲスト扱いだったんだけど、一年経ったかどうかの時に呼ばれたんだ。それが維羅だった。それまでに、桐藤の虐めから助けて貰ったりして、面識はできてたんだけどね。男の能力がきちんあるか、試されたのを含めて、その日、初めてね・・・、女の身体が柔らかいことに、違和感はなかったんだけどね。母を思い出していたから」

 うーん、慈朗の時と似てるかな、その時のことって・・・。

「維羅って、そういう感じがあるだろ?皇妃様より、若いけど、包容力みたいなの、温みと愛情みたいなのは、不思議と感じられてね・・・でも、それは、それっきりで。その晩、桐藤と一緒に、皇妃様の私室に呼ばれた。初めてのお相手だった」
「それって?桐藤も、ってこと?」
「そうだよ」

 俺の初めての御渡りも、慈朗と一緒だったから、そんな感じだけど・・・柚葉もだけど、桐藤は、もっと、ショックだったんじゃないかな・・・お母さんだと思っていた人に・・・

「んで、維羅はお前と、で、御相伴衆制覇だな。皇妃様以外、唯一の女。それで、奥殿の女は、二人とも、御相伴衆制覇・・・ってこと」
「・・・決めつけやがって」
「バラしてもいい?」
「なにを?なんで?」
「取引」
「はあ?」
「ふふん」
「真実は関係ない。お前が困ればいい」
「どういうことだよ、柚葉」
「少しぐらい、いいじゃん」
「あー、結局」
「そう、結局」

 しつこいと思ったら、やっぱなあ。口封じへの要求ね。全然、無傷じゃないじゃん。高官接待。っていうか、柚葉、個人的な意味合いってことだけじゃないね。これって。

「これは『踏み絵』。帰ったら、維羅に聞いてご覧。そしたら、わかるさ」
「嫌だ、って言ったら、どうする?」
「俺とドロドロの関係だって、一番、聞かせたくない人物にバラす」
「・・・」
「言わないよ、誰に、かなんて」

🔑

 数馬、すごい顔したね。言わないよ。聞いたら、彼女、泣いちゃうからね。自分の所為で、数馬がそっち行ったって、思っちゃうから。

「わかった」

 柚葉は、満足そうに笑った。


🏹🔑

「・・・案外、素直で驚いたんだけど・・・」

「・・・色々、考えたけど、柚葉とは悪くなりたくない。だから、仕事として割り切った・・・」

 できるだけ、呆気なく、物事を運ぼうと思った。
 これ、途中から、お互いに、作業的になっていたのに、気づいてた感じもあって、・・・それが解って・・・すごい、変な感じだった。

 少なくとも、柚葉にしてみれば、大好きな慈朗に対する感じではなかったんだろうし、そんなだったら、俺も違うと思った。


「ふふ・・・糠喜びしちゃったかも・・・だが、俺は、少なくとも、前より、お前のこと、解った気がする。まあ、いいや。させてもらったお礼、というわけではないのだが」

 互いに、元の通りに、ベッドに横に並んで横臥している。
 柚葉は、改まった感じに前置きをしたが、普通に、その後を話し出した。

「・・・何?」
「近いうちに、皇宮で何か起こるらしい」
「何か、って・・・?」
「いや、俺も掴んだばかりの情報なんだが・・・、その時には、もう少し詳しく話す。慈朗も一緒にだ」
「・・・悪いこと?」
「うん・・・、今まで、経験してなかったことが起こる可能性がある」
「なんだろう・・・?」
「俺も、未確認で。・・・ただ、もしもの時に、守りたい人いるよな、数馬には」
「うん、まあ、皆と言えば、皆だけど・・・」
「多分、お前が一番、未だに護りたいのが、三の姫だろ?」
「また、蒸し返すか?」
「いや、そうじゃない。命に関わることだとしたら?」
「柚葉、どういうことだ?」

 数馬は、思わず、身体を起こした。
 柚葉は、大きく、深呼吸するようなため息をついた。

「今は、まだ、細かいことは、解らないから、何も言えないんだけど、間違えなく、何かが起こる。三の姫が、ランサムに行くのは聞いてるか?」
「ああ・・・」
「もしも、守りたいなら、極少の人数の人間に協力して貰って、ここ1週間以内には、ランサムに向けて、出国させた方がいいかもしれない」
「そんな・・・」
「いいか。これは、お前と慈朗とアカツキ、ぐらいで進めた方がいい」
「どういうこと?」
「出国できるのが、一番いいんだ。二の姫もランサムだし、まずは、そのような予定のある人間から守りやすくなると思う」
「じゃあ、一の姫と桐藤にも伝えるんだね?」

 柚葉は、天上を見つめたまま、少し、黙っていたが、その後、元のように話し出した。

「これは極秘なんだ。知っているということが、まず、危険なんだ。だから、桐藤たちには言わないでくれ」
「柚葉?」
「頼む、聞き入れてくれ。何かあったとしたら、二の姫と、三の姫は、スメラギに、二度と戻れないかもしれない」
「そんな・・・」

 柚葉も、ここで身体を起こし、数馬の目を見た。

「俺がさっき、お前を試したのは、これを伝えられるかどうか、その為だ」
「・・・それって・・・そんなに重要なことなの?」
「維羅とのこと、俺と交わしても、黙ってただろう?信頼できる、ってことが解ったんだ。変なやり方してごめん・・・今、ここなら、本殿や奥殿と離れているから、話がしやすい」

 数馬の表情が変わった。
 
 俺が、今、していることって・・・?

「高官接待に選ばれた理由も、それ?」
「・・・も、あるのかもしれないな・・・とにかく、俺もよく解らない。俺も守りたいんだ。関係のない人たちを巻きこみたくない」
「関係のない人達?トラブルに巻き込まれていい人なんて、いないんじゃないの?」
「・・・うん、というか、言いかえれば、やはり、守りたい優先順位のある人から守る、ってことだ。少人数で、多くの人は守れないからだ」

 つまりは、皇帝一族に関係する者は、できるだけ、国内にいない方がいいってこと、・・・なのかな?

「よく解らないけど、・・・三の姫様の件は、そのようにするよ」
「間近になったら、お前と慈朗の身の護り方も伝えようと思う。その時には、明確なことが解ると思うから」
「解った」
「くれぐれも誰にも言わないでくれ。維羅にもだ」
「わかったけど、柚葉は、大丈夫なの?」
「俺は、大丈夫だ。お前が他言しなければ、俺も守られる」
「解った。慈朗と暁で、一週間圏内で、三の姫をランサムに出国させるんだな。アーギュ王子には、何か、伝えなくてもいいのかな?」
「国内のことだ。それこそ、国際的に大騒ぎになったら、大変だ」
「柚葉、そのトラブルは、防ぐことはできないの?」
「できたら、お前にあんなの強いないよ。合意の上の方が好きだから、そんなの、当たり前だろ」
「・・・わかった。柚葉の立場も辛いんだな」

 柚葉は立ち上がり、身支度を始めながら、話を続けた。

「お前が極秘で動いているのに、俺も似た部分を背負ってる。お互い、それを護っているのを、この件だけは、苦肉の策で伝えてるんだ」
「うん、上手く進められるといいんだけど・・・」
「多分、予定通りなら、三の姫様は、1週間以内に出国すると思われる」
「想定としては、・・・ひょっとして、戻って来れないかもしれない、ということ?」
「そう」

 数馬も、その言葉を受けて、身支度を始めた。

「だから、・・・例えば、大事なものを持って行って貰うとか、その辺りは、重要になるかもしれないな」
「・・・わかった、帰ったら、早速、慈朗と暁と打ち合わせをするよ」
「信頼してる、数馬」
「なんか、不安だな、柚葉、気を付けて」

 窓から、朝日が差し込んできた。とっくに、夜は明けていた。

~「暗躍の行方5」につづく


御相伴衆~Escorts 第一章 第九十九話 暗躍の行方4「高官接待③」

 
お読み頂きまして、ありがとうございます。
 
 さて、様相が変わってきました。
 話は、ただの学園ドラマでもなく、王子様とお姫様のロマンスでもなくなってきたようです。
 次回はいよいよ100話を迎えます。
 今後は、どんなお話の流れになりますか。
 お楽しみになさってくださいね。

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