御相伴衆~Escorts 第一章 第十三話 柚葉編③籠の外の自由は限りなく
それは、二の姫 美加璃が、再度、ランサム大学に戻る日だった。
「柚葉・・・忙しいのに、ありがとう。わざわざ、空港まで、お見送りしてくださるのね」
第二皇妃様の手前、頼まれてしまった以上、行かないわけにはいきませんから・・・車に乗り込み、空港まで、同行する。
別に、気にはしてないんだけどね。ついでに、例のSPの顔を見てやろうかな、と思って。
あああ、彼か。感じ、新人なんじゃないの。俺よりは、年上なんだろうな。社会人だから。でも、そんな面子しか、つけられなかったなんて、きっと、スメラギ皇宮は、馬鹿にされてるんだね。案外、シギノ派の差し金だったりして・・・。
ふーん、真面目そうな奴じゃないか。可哀想に。悪いのは、やはり、美加璃姫様なんだろう。誑し込まれて、脂下がったんだろうな。いいんだよ。別に、君が、ランサムで、姫と愉しんでくれれば、俺は、無事、放免されるからね。
わざと、美加璃姫と、腕を組んで、目の前を歩いてやった。
馬鹿か?目配せじゃない、それはウインクだ。このままじゃ、彼は、うちの国なら、斬首だ。バレバレじゃないか。
通り過ぎて、戻ってきてやった。ほら、驚け、慌てろ。
っていうか、いや、SP君、君が、このままじゃ、気の毒だからさ。
「君、ちょっと・・・」
僕が立ち止まって、彼の方に声をかけると、美加璃姫の顔色が、当然変わった。そんなのは、どうでもいい。
「は、はい・・・」
俺に声をかけられて、血の気が引いたのか、彼は、真っ白な顔をしている。
そうだよ、バレてんだから・・・。当たり前か。
「これ、ネクタイ、曲がってるよ。それと、この結び目、小さい方がカッコいいよ・・・ね」
「あ、申し訳ありません。そんな、お手ずから・・・」
「いい匂い、つけてるね。ティーツリーなんだね。君も。僕と同じだね」
「・・・あ、そうなんですか?偶然ですね・・・」
「僕の匂いまで纏って、代理のお務め、ご苦労様・・・僕の真似するなら、身だしなみは完璧にしてもらわないとね」
「・・・?!」
すると、面白い程に、びくついて、・・・君、SPには向いてないね。でも、彼女とは相性合うみたいだよ。いいんじゃないの?
遠目に立ち尽くす、美加璃様、口元を手で押さえている。そこからじゃ、こちらの会話は聞こえないだろうけど。
「ゆ、柚葉、どうしたの、あの人・・・」
「ああ、身だしなみをね。ネクタイを少し、締め直してあげたんだ」
彼にとって、これは警告と捉えられたのかな。余計なことしたのかもな。
美加璃姫様、バレてんだよ。本当に。スメラギ公安部(シギノ派)の情報網を馬鹿にしたらいけない。写真まで、撮られてるんだから。あれ、世間に出したら、大変だよ。でも、大丈夫だよ。今、スメラギにスキャンダルは要らないんだ。後々のことを考えて、弁えているのだからね。
「どうしたのですか?泣きそうな顔をして・・・」
「何でもないわ・・・」
「そんなに、僕にしがみついて、ほら、さっきのSPの人、見てますよ」
「え・・・?」
「前も申し上げましたでしょ。人前で、必要以上に、そのような感じは、下品に映ります。貴女ともあろう方が、スメラギ皇家の姫なのですから、ご自覚をなさってくださいね」
美加璃姫は、皇帝一族の専用機に乗り込み、スメラギを発ち、ランサムに戻られた。
あのSPの彼が、そこに同乗したかは、定かではない・・・。
~次回桐藤編①につづく~
みとぎやのメンバーシップ特典 柚葉編3 籠の外の自由は限りなく
御相伴衆~Escorts 第一章 第十三話
お読み頂きまして、ありがとうございます。
ここまで、読まれて、柚葉の印象は、あまり良くは映らないかもしれませんね。私は、結構、好きなんですよね。彼のことが。
御相伴衆の4人が一揃いで出てくるシーンが、冒頭以来ないのですが、今後、そんな場面が増えてくる予定です。
不思議な友情や連携、しかし、それぞれが背負う宿命のような流れもあり、今後、どのようになってくるか・・・お楽しみになさってください。
次回、ようやく、桐藤が登場します。
更に、創作の幅を広げていく為に、ご支援いただけましたら、嬉しいです😊✨ 頂いたお金は、スキルアップの勉強の為に使わせて頂きます。 よろしくお願い致します😊✨