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「御相伴衆~Escorts 」これまでのお話と第六十一話「次世代会議①」~隣国の王子編スタート

これまでのお話 第1話から第60話

 スメラギ皇国の皇宮に集められた、世界各国の独特の美しさを持つ、4人の少年たちは、主である、第二皇妃に見いだされ、「御相伴衆 (エスコーツ)」として仕えていた。

 東国出身の旅芸人の数馬、スメラギのスラムから連れてこられた慈朗(シロウ)、素国の王室の遠縁の者として迎えられている柚葉(ユズハ)、スメラギ礼賛のナショナリストである桐藤(キリト)の4名は、それぞれ、姫付などの役割を与えられている。

 一時は、桐藤と柚葉の虐めを、慈朗が受けていたりと仲間内の関係性が悪かったが、優しい数馬が入ることによって、穏やかなものとなった。そして、それぞれの立場が、その働きにより、同等にもなり、この頃から「御相伴衆」は、立場、組織としても、正式な形のものとして、確立する。

 四人は、皇宮での役割を果たしながら、ハイスクールに通う。ここで、一般の生徒たちと関わりながら、教育を受ける。そもそもがその生まれから、幼い頃より教育を受けていた、桐藤と柚葉だったが、数馬と慈朗は一般の教育が不十分な立場だったため、補習の期間を経て、普通のクラスで学んでいる所だ。文化祭や市井の生徒との交流もあり、普通の高校生の生活を体験をしている真っ最中である。

 彼らの一番の役割は、姫たちの御付としての役割、そして、高官接待の為の要員であるということ、場合によっては、それぞれ個別に任を負っている場合もあり、お互いの距離感は、今後、複雑な関係性を持っていくこととなる。

 そして、その一つである、姫付としての役割を、それぞれが、果たしつつある。

 一の姫と桐藤、こちらは皇統を含む、先々を見込まれた、後任の仲となる。お互いに尊重し合い、深く結ばれている。理想的な恋人同士になっている。

 しかしながら、二の姫と柚葉、このカップルは、二の姫の一方的な片思いだった。柚葉が本当に好きなのは、その実、皇妃付きの慈朗である。つまり、彼は、女がダメな人種だった。立場上、柚葉は自分に嘘をつきながら、この皇宮で過ごす日々を送っている。

 素直で、天真爛漫の三の姫付きは、満を持して、数馬と決まった。そして、数馬は「御指南役」となり、三の姫を導く、その役を担った。

 一の姫の桐藤、二の姫の柚葉、と比べ、その場合の、数馬の「御指南役」というのは、立場を逸しているという。

 これまでの日々の生活で、数馬と三の姫女美架は惹かれ合っていたのは、周囲から見ても解るものだった。数馬には、その役割の意味が、未だ理解不十分だった。桐藤から受けた忠告が、頭を過りながら、三の姫を導いていかなねばならない。
 
 皇妃からの命で、数馬は、三の姫と初めての夜を迎え、二人は皇宮公認の恋人同士となったが・・・

✨🏰✨

 スメラギの西南に、海を隔てた大陸に、ランサム王国という国がある。世界の大国の中では、新しい設立の国であり、代々、温厚なランサム王族の統治者が、その国を統べている。国民は、比較的、富裕層が多く、福祉的に進んだ、平和的で、穏やかな国家である。

 南北に伸びた、大きな地形で、北には、雪の積もる、オーギュスト山脈があり、寒冷期の娯楽の地、クランツァがある。ここは、スキーなどのウインタースポーツで有名で、多くのアスリートが輩出されている。

 南は温暖で、湿度の低い快適な気候の、世界有数のリゾート地である、ラウラタウンがある。観光・芸能立国の要として、世界をリードし、各種芸能分野の聖地とも言われている都市である。そこでは、四年に一度、あらゆる芸術を讃える、ランサムエンターテインメントフェスティバルが、大々的に執り行われ、各国の様々な分野のアーティストが、その表現に磨きをかけ、集結する。

 その南の海沿いのラウラタウンの少し内陸に位置する、首都ランサムシティには、王宮があり、現在は、アーギュ・エレンツァ・ランサムⅣ世が統べている。既に、老齢を期し、この数年の内に、引退し、息子の第5代目に引き継がれようという頃である。

 対して、このスメラギ皇国は、その小さな地形を利用した、山々の斜面に位置している。国は、独裁体制を取り、国民はそれぞれの立場での等級に分類されていた。

 皇帝一族をトップに、政府関係者、軍族を中心とする貴族階級、その下には、唯一の原資である石油産業に関わる者、また、皇宮御用達の食品、服飾などの従事者等の富裕層が位置し、これを除く、以下の90%の国民は、各産業において、重税を課せられ、搾取されていた。

 皇宮を中心に、その住みわけされた地域は、一目瞭然で、下に下がる程、位の低い者たちの居留となっている。国民の権利や人権を顧みない、その古い体制に、近隣各国が、眉を顰め、介入と支援の必要性を唱えている、という現状だった。

 そのような、北の大陸の、極西南端の小さな、このスメラギ皇国という国に対し、唯一、正式に、国交を保っているのが、海を隔て、南西に位置する、その大国、ランサム王国であった。

 この度、次世代の国王となる王太子である、アーギュ・アルゴス王子が、非公式に来皇し、皇宮に招かれることとなった。非公式とはいえ、ただの物見遊山の筈はなく、水面下で進んでいる政治的な目論見が、双方の国にあるのは、当然の事である。

🦚

 アーギュ王子は25歳。歴代の王と同様に、ランサム王族の特徴である、大柄の体躯の、濡烏の艶やかな、大きなウェーヴの髪が肩まで伸びた、青緑の瞳の丹精な美男子だった。当然の事ながら、スメラギ皇帝並びに、第二皇妃は、心から歓待し、贅を尽くして、この王子を迎えた。

「非公式ですから、このようなことは、と、常々、申し上げておりましたのに・・・」

 王子の側近である、同行者で通訳を務める、一の家来のジェイスが溢す。

「今宵、第一皇女様が主催される、皇宮の若い方たちの懇親の席が、設けられるそうですが、いかがなさいますか?」
「・・・実は、こちらが狙いでね。そのメンバーから、熱烈な密書を頂いていて。別のルートで、2通、同じ物が届いていて、・・・面白い国だよね。こちらは・・・」
「ああ、・・・成程ですね。解ります」
「まあ、この2通の招待状を見るにつけ、才覚のある若者が2人はいるということだ。次世代の各国を司る方もいると考えると、これからは、同胞として、やっていく可能性のある方々ともお見受けする。話をするのが、実に、愉しみだ」

🏰

 まずは、歓迎会が行われ、アーギュ王子は、皇帝陛下と、第二皇妃に迎えられた。その後に、一の姫柳羅リュウラと、三の姫女美架メミカが、歓待を示す、挨拶をする。

「女美架姫様、なんか、美しくなって・・・っていうか、今までの可愛い感じもさることながら、女っぽくなったわね。デコルテ姿、キラキラしてるの・・・、ちょっと、色っぽいぐらいで、ドッキリしたわね」
「すごいわね。男の手が入ると、変わるものだわ・・・あ、すみません」

 歓迎会で給仕をする、数馬の耳に、女官の囁く、噂話が入ってきた。

 ・・・何を謝られたんだろう?
 女美架が褒められてたのは、解ったが・・・。

 噂は、この間の女美架の変化についてだった。誰でも気づく、幼いばかりでなくなったその姿。髪を上げ、ローブデコルテを纏った彼女は、一の姫に負けず劣らずの美しさだった。

 16歳の三の姫は、この時、そもそもの可愛らしい容貌に加えて、女性らしい美しさが備わってきていた所だ。その程に、数馬は、女美架を惹き上げたのだ。その会場で、遠目に見ている、柚葉ユズハ慈朗シロウでさえ、その事に気づいた。一の姫に懸命な桐藤キリトまでも。

「アーギュ王子の隣に並んでも、恥ずかしくない姫君になられたのだな・・・」

 蛹が殻を破り、蝶となる如く、女美架の潜在していた、その女性の艶やかな部分が輝く。あかつきも気を入れて、女美架の身支度をした。

 華やかな行事の悦びの中にありながら、皆が、数馬には、周りが、却って、よそよそしく振舞っているように見えた。この短い時間に、女美架の美しさを惹き上げたのは、数馬なのに・・・だ。

 恋に目覚めた、女美架の美しさは、最高の状態となり、そのまま、アーギュ王子の前に立つことになる。これは、第二皇妃にとっても、思いの外の効果であった。アーギュは、この歓迎会で、既に、女美架を見止める。美術館の話で終始するも、その姿を目に刻んでいた。

🏰✨

 その夜、アーギュ王子を迎えようと、若者の懇親の宴を設けた、本来の主催者は、桐藤である。その指揮に基づき、柚葉が、社交界で面識のある、アーギュ王子の為の設えを準備した。それに、数馬と慈朗が手伝う形となった。アーギュ王子側としては、各国語に精通する、側近で、通訳のジェイスのみを参加させる形となった。

 第二皇女美加璃ミカリは、近々、行われる、ウインタースポーツ世界選手権の準備で、スメラギには戻っては来れない為、(彼女の仕事は、この分野でのスメラギ代表としての広告塔的なものであるので、こちらが優先されていると思われる)参加することはできなかった。

 第一皇女 柳羅、第三皇女 女美架は、あまり、華美に飾ることなく、平素のパーティのドレスで参加することにした。まつりごと中心という、桐藤の思惑におもんぱかった、柳羅姫の心遣いである。既に、公式の歓迎会で、ローブデコルテを着用していることもあり、女美架姫もそれに従い、慎重にドレスを選んだ。それでも、三の姫付きの女官の暁は、少しでも、女美架姫の美しさが引き立つような設えを勧めた。

 王子の好みである、色とりどりのバラの花が、室内には飾られた。少人数でのお忍びの宴になる為、開催する部屋は、極小さな場所の方が何かと良いだろうということで、柚葉の私室を利用して、その家具を出し、丸ごと、貴賓室のように、設えを作り上げたのだ。

「整ったようだな。歓迎会から、間がなかったが、皆の協力でこのように設えられた。感謝する」

 桐藤が、御相伴衆の他の三人や、一部の給仕係、暁やルナという直属の女官たちに、頭を下げた。その態度は、皇宮の中で、弱いものを甚振いたぶっていた頃とは、全く違うものだった。誰もが、次世代の皇帝に相応しいと思う、そんな振る舞いに、数馬は感じていた。

「そろそろ、アーギュ王子をお連れしたいので、申し訳ないが、ここは、私達、御相伴衆と、姫君だけの席に。あちらも、アーギュ王子と、その方腕という通訳のジェイスという者を一人伴うだけとなるそうなので」

 柚葉は、そういうと、慈朗に目配せをした。
 桐藤は、それぞれに、設えの仕上げを確認した。

「人払いの方、よろしく頼む、暁」
「わかりました。ドア前では、私とルナで、お酒などの控えを、ご準備しておりますので」
「では、僕と慈朗で、王子のお迎えに参ります。いくぞ、慈朗」
「・・・緊張する・・・ランサム語が解らないから」
「アーギュ王子は、スメラギ語に堪能だ。心配しなくていい」
「そうなんだ」
「というか、俺の後ろについて、周りに気を付けて、お連れする役だからな」
「はい」
「では、お迎えを頼む。柚葉、慈朗」

 ドアが開き、アーギュ王子が入室した。
 これから、初めての「次世代会議」催される。
 そして、この宴には、もう一つ、大切な狙いが・・・。

                       ~次世代会議②に続く~


みとぎやのメンバーシップ特典 第六十一話 
       「次世代会議①」~隣国の王子編 御相伴衆~Escorts 第一章

 

 今回も、お読み頂きまして、ありがとうございました。

 さて、いよいよ、満を持して、ランサム王国のアーギュ王子の登場です。
 扉絵も彼です。
 彼のキャラクターを物語っているお話は、こちらから👇

 そんな彼が、皇宮に訪れて、何をしに来たのか?
 今後の展開もお楽しみになさってくださいね🍀✨

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