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御相伴衆~Escorts 第一章 第五回 慈朗編①                     「新しい仕事~転落奴隷 ~これが貴方のお仕事です」

「へえ、上手いんだねえ」
「・・・え?・・・あ、・・・はい、いや、あの・・・?」
「綺麗なんだね。この皇宮の中庭って・・・気づかなったなあ・・・」
「え?」

 水彩画のセットを、勇気を出して、お妃様にねだってみた。あの日、豪華な絵の道具が、部屋に届けられた。イーゼルや、色んな画用紙やスケッチブック、色鉛筆にパステルと油絵のセットまで、山程、部屋に運ばれてきた。いいんだ。絵が描けるんだ。御許しが出たんだ。描かなきゃ。・・・そう思って、庭に下りてきた。まずは、水彩。お爺ちゃんのくれたセットもあったけど、ここに来る時に、カメラとどちらか、一つを選ばされて、水彩画のセットは諦めた。カメラは、特に、お爺ちゃんの肩身で、お守り代わりだから・・・。でも、絵、描いていいんだ。嬉しい、・・・本当に、今の僕は、恵まれてるんだ。

 この方は?えーと、まだ、初めて、お会いする方だ。誰かな?


慈朗シロウ、お前は、とても優しい子だから、人の気持ちが解る。それだけに感じやすくて、辛い思いも、悔しい思いにも遭うかもしれない。しかし、何かの形で、人を癒せる力がある。写真も絵も、それができる、良い方法なんだよ」

 

 辛い毎日の中、少しの紙と絵具で、絵を描いて過ごした。お爺ちゃんの側にいて、それができる時だけ・・・。それが、僕の安全地帯、安心できる時だった。

 おどおどして、察しの悪い僕は、お父さん、お母さんから、役立たずと言われて、他の子たちのように、人足のような力仕事も、売り子のようなことも、何やっても、ダメだった。

 お爺ちゃんが亡くなってから、数年後のある日、家に、上品そうな女の人が来て、言った。

「この子にいい働き口がある。この子なら大丈夫」

 その言葉で、やっと、家の役に立てると思った。

「上の人の言うことを聞いて、きちんと務めたら、美味しいご馳走が食べられるよ」
「慈朗、やっと、お前も役立ってくれるね」

 その時、久しぶりに、お母さんに抱き締められた。
 嬉しくて、涙が零れた。

「沢山のお金と爵位も頂けるんだよ。お前が頑張ってくれればね」

 女の子みたいに細くて、何の役にも立たない。愚図で、ドン臭くて、泣いてばかりで。そんな僕が、やっと、家の為になる。それなら、頑張ろう。

「お前のお務め先は、皇宮だよ。これは、前金。この子の働き次第では、月々のお手当ては上がりますのでね、本当に、可愛い子。女の子みたいね。身体を洗って、髪を整えて、綺麗なお洋服を着せてあげますから、恐らく、皇妃様が、面倒見てくださるから」

 この言葉で、お父さん、お母さんが、見たことないほど、喜んでいた。

「慈朗、頑張るんだよ。父さん、母さんの為に・・・」

 家を出る時は、お爺ちゃんの肩身のカメラを一つ、持っていくだけだった。

「何も要りません。綺麗なお部屋に住んで、皇子様のようなブラウスを着せてもらって、ご馳走が出ますから、お前は、身一つでいらっしゃい。ただ、もう、お前は、ここには戻れないと思うから、ご両親に、きちんとご挨拶なさい」

 そうか。そうなんだ。ここは決して、居心地の良い所ではなかったけど、ここを離れるんだ。でも、これで、家族の役に立てるんだから、泣きそうになったけど、今度こそ、頑張って、務めようと思った。皇宮で働くなんて、驚いたけど・・・。僕にできるんだろうか?

「さあ、慈朗、行きますよ。車に乗りなさい」

 大きな車に乗るのも、初めてだった。嬉しかった。スラム街の見慣れた建物、もの珍しそうな人々の目線、僕の顔を見つけると、指をさして、笑っている人もいる。なんでだろう。

 そう、あの時は、僕だけが、意味が解ってなかったんだ・・・。



 皇宮に着くと、その上品そうな女の人は、態度を変えた。宮の裏手の目立たない木戸をノックする。

「連れてきたわよ。綺麗にしてやって。二の妃様が、きっと、お待ちかねだから、さあ、お前、ここで、洗ってもらって、可愛い服、着せて貰いなさい。いい?ここで、一番偉いお方だから、粗相のないようにね。言われたことに従って。もし、あらがったりしたら、お前のあの親も、罰を受けることになるから、わかったね」

 そう言われて、背を押されて、木戸の中に入れられた。ドアが、締められると、その中には、女の人が三人いて、スッと、僕を取り囲んだ。

 ・・・・怖い。さっき言われたことも手伝って、怖くなった。

「えー、どうかしら?」
「お前、大丈夫?ちょっと、身体を見せて、随分、痩せてるじゃない」
「でも、目が大きくて、顔は可愛いわ。女の子みたいね」
「二の妃様、変わり者好きだから・・・まあね、まずは、綺麗にしないとね」

「あ、やめて・・・」

 着ているものを強引に脱がされ、その服が、すぐ、ゴミ袋の中に入れられ、奥に放られた。

「ねえ・・・好い感じじゃない?」
「うん、今の、可愛かったね」
「・・・大丈夫よ、お前、きっと、二の妃様のお好みだから、頑張るんだよ」

 裸にされたまま、一人の女に手を引かれ、また、奥の扉を通り、綺麗な明るい部屋に連れていかれる。住んでた家よりも、広い部屋だった。もう一人の女の人が出迎えた。その人は、いくらか、優しそうに見えた。

「こんなとこ、来たことないでしょう?」
「・・・はい」
「ここは浴室、・・・身体を洗うことも、そうそう、なかったんでしょうね。病気がないかも見たいから、ちょっと、身体、見させてね」
「あの、お医者さんなんですか?」
「まあね、そう思っていて頂戴。私は維羅いら。お前の状態によっては、数日、面倒を見る役です。さて」

 その維羅という女の人は、服を脱ぎ始めた。

「さあ、いらっしゃい。洗ってあげるから、ほら」

 シャワーのお湯を浴びせられた。たまに、川で身体を洗うことあったけど・・・。わあ、あったかい、・・・温かいお湯だ。気持ちいいと思った。

「まあ、酷いね。とにかく、長年の垢を、全部、落とすよ」

 維羅は、シャワーを、まず、僕の頭に当てて、髪を洗った。

「ほら、見てご覧、流れた水が真っ黒だよ。可哀想に。とにかく、綺麗にしなくちゃね」

 頭に石鹸を付けたのか、泡が立ってきた。維羅は、ゴシゴシと、頭を洗ってくれている。流れてくる泡が、目に入って、滲みた。

「馬鹿ねえ、目ぐらい、瞑りなさい。まあ、しょうがないね、習慣がないんだものね」

 お湯を流すと、今度は、維羅は、僕の手に、溶けた石鹸みたいなものを、入れ物から流し入れてくれた。

「泡立てて・・・ああ、こうやるの」

 手を合わせて、擦ると、溶けた石鹸が泡立つ。

「本当に、何も知らないんだね。一から教えないと難しいかしらね?目を瞑って、それを顔につけるのよ、洗う為にね、こうやって、」

 維羅は、顔を洗う仕草を示してくれた。それに従って、顔を洗う。すると、維羅の顔つきが変わった。

「・・・成程ね。よく見つけてきたわね。綺麗な子。今みたいに、身体を洗ってご覧なさい。手も足もそこ、お腹も、よく洗うの、これ、ボディーシャンプーね。これをよく付けて、ああ、タオルで、背中は擦ってあげるから・・・」

 事も無げに、身体を洗いながら、「肌が白いのね」「綺麗な細い手足ね」と、その間も、維羅は、なんとなく、僕の身体を褒めているように聞こえた。

「全部、洗った?ああ、大事な所はしっかりね、解る?お尻とその前よ」

 慌てて、そこに、そのシャンプーとやらを付けて、洗う。

 あ・・・

 この時に、初めて、気づいた。目の前の維羅のこと、その姿が目に入った。

「どうしたの?お前、・・・遅いよ、反応が。まあね、半分、子どもだから、仕方ないね。でも、そんな反応するんだから、今が、どういう状態が解ったみたいね。真っ赤になって、可愛らしい」

 そう言いながら、頭を触りながら、恐らく、ちゃんと洗えてるか、見てるのだろう。腕を持ち上げ、指先まで触り、両腕終わると、背中と、胸やお腹を時々、擦るように触る。確認しているようだ。でも、・・・そんなに見られると、急激に、恥ずかしさが溢れてきた。

「あ、あの・・・」
「なあに?はい、足見せて、ちょっと、この椅子に掛けて、私もここに掛けるから、私の膝の上に片脚のせて、そう、上手、いい子にして。ああ、まだ、こんなに、足の先は、なかなか取れないかしらね・・・ちょっと、もう一度、洗うから、数日、ここでお風呂に入らないと、ちょっと、上には上げられそうもないわね。はい、交替。もう片方も出して」

 維羅は、少し微笑んで、僕の脚を、タオルでしごくように洗っている。

「お風呂なんて、初めてでしょ。大丈夫、私が、お前の脚先、見紛みまごうように、手入れしてあげるからね。踵の硬さは、仕方ないにして、後で、爪を切りますからね。髪も切り揃えて、綺麗にします。あと、悪いけど、ここが、一番大事。見せてもらうからね。四つん這いになって」
「あ・・・、何?」
「大丈夫、見るだけ、ごめんね。もう少し、洗うから、すぐ済むから」
「あ・・・、や、やだ」
「ほら、終わった。大丈夫、そしたら、そのまま、この柔らかい床に、仰向けになって」

 つまりは、後に、わかったことだけど、僕に、その能力があるか、手入れを兼ねて、確認していたようで・・・

「ごめんね、私も仕事だから、ほら、いい子にして・・・」
「やだ、そんな・・・やめて・・・」
「・・・大丈夫、これなら、早く終わらせてあげられる。自分の身体のこと、解ってるの?お前は。こんな風になるの」
「あ・・・、え、それは、・・・」
「見てご覧、自分の」
「あ、ああ、・・・そんな、」
「これがダメだったら、戻されるとこだよ。ただ、まだ、これから、育つ途中の身体だからね。自分で構って、惹き上がったことはある?」
「え・・・、あ、・・・?」
「わかんないのね・・・、それは、それは、どうしようかな。このまま、即座に、上に、お渡ししたい所なんだけどね・・・あああ、こんなになって・・・解ったわ。教えるから、自分で構ってみて」
「構うって?・・・ああ、これ、変だよ・・・」
「・・・可愛い子ね。お前、大丈夫、合格だよ、きっと。やってあげたいんだけど、お前の価値上げる為にね、私はこれ以上、お前に触れないから。その代り、よく見てご覧。私のこと、・・・、自分で構ってもいないなんて、全く、手垢がついてないんだね。お妃様、大喜びだよ」
「あ・・・ああっ、やだ、こんなの・・・」
「そう、そうやって、しがみついておいで・・・」


「偉かったわ・・・合格だわ。脚の件は、許してもらうことにして、今夜から、お妃様の所に行きなさい」

 え?数日、ここにいるんじゃないの?・・・なんとなく、維羅と一緒にいたい、と思っていた。これ、こういうことするのか・・・ぼんやりとして、すごい、疲れた感じがする。でも、もう、・・・。

「なんか、ごめんなさい・・・」
「え?・・・そう、そうよ、いいの、これで。珍しいぐらい、純粋なのね。数日、留め置いたら、私のものにしたくなってしまうから、もう、行きなさい」
「・・・でも、こんな・・・」
「はい、次は、衣装合わせよ。次の担当に引き渡すから、最低限の下着をつけて、次の部屋に行きましょう。さあ、もう一度、身体をシャワーで流して、髪は濡れたままで、そちらでして貰うから」
「いいの?こんな・・・」
「いいのよ、・・・これが、貴方のお仕事です。慈朗」

                        ~慈朗編②につづく~


みとぎやの小説・慈朗編① 
新しい仕事~転落奴隷~これが貴方のお仕事です

 これを出すかどうか、神様にお尋ねしたぐらいで、
「よく考えて」という声が聞こえたような・・・。

 数馬編を遡ること1年前のお話。
 慈朗が、皇妃付きの色若衆として連れてこられた時の話になります。
 まだ、御相伴衆エスコーツが組織として成立していない頃となります。
 このお話の登場人物のスピンオフ、同時にお読み頂くと、よりお話が深く理解できると思います。いずれも、「Family Edition」のマガジンから。

 維羅の少女時代 ↓ 

 慈朗の祖父、スゥォード・ナヴァリの生涯 ↓

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