御相伴衆~Escorts 第一章 第七十七話暗澹たる日々⑦「一矢報いて・・・」
「数馬、一矢報いたくない?」
「え?」
「あさってにはさ、ここでさ・・・」
「・・・ん、・・・あ、そゆこと?」
まあ、そうなんだろうけど、・・・一矢報いるって、どういうこと?
「なんか、むかついてきた」
「え?維羅が、なんで?」
・・・それ、俺の方だと思うけど。
そういうと、維羅は、脚立から、直接、ベッドの上に降りた。
「どいて、もう少し、そっち」
「あ、・・・はい」
「よいしょ」
「維羅?」
「黙って」
「・・・ん・・・わぁ・・・急すぎ、こんなの・・・」
「全然、急じゃないよ、こんなの」
一矢報いるって、そういうこと?急襲された。
・・・の割に、キスは優しい。
✿🏹
「脚、無理だから、寝てていいよ、何かしようとか、思わないでいいから」
「維羅・・・ああ、ちょっとぉ・・・」
「まあね、あの狭い病室で、どうのこうの、無理でしょ。だから」
「マジ、男みたいなんだけど・・・維羅って、そんな感じなの?」
「嫌ならいいよ。帰ろうか」
「あ、・・・嫌とかでもないけど・・・でも、なんかな・・・あ・・・」
ライトを見上げたまま、仰向けに寝た、俺の横で、顔を覗き込んでる維羅。うつ伏せで、時々、脚をばたつかせてる。綺麗な脹脛が、白くチラチラ、動いて見える。行動の男っぽい感じに相俟って、擽るように女っぽさが、見え隠れする。・・・この感じ、あの女(ひと)にそっくりだ。
「一応、数馬付きなんで」
「あああ、それいうか、また」
なんなんだろうな。決定権がそっちにあって、リード強くて、上手くて、やられっぱなしになった。あの時も。似てるなあ。こんな感じ。
「本当に、そういう意味だよ。第二皇妃様からのお命じだからね、従わないと」
今日の維羅。さっき、ライト見つつ、しっかり、見上げてた。いつもより、身体のラインの出るワンピースで、脚立上った時に、腰が細いのに気づいた。というか、お尻が大きいのかな?・・・あああ、怒られそうだ、こんなこと言ったら。
「・・・あ・・・んっ」
・・・くすぐったいな、これ・・・。こんなの、するんだ。
維羅、離れて、俺のこと、見降ろしてる。顎までの長さの髪が、頬の辺り、両サイドから、揺れてる。何度か、髪を掻き上げてる。・・・ヤバい、好きな仕草だ。こんなの、全然、忘れてたのになあ・・・。
「数馬、少し、落ち着いたんじゃない」
「え、ああ、そうかなあ」
「怪我が治るのに、似てるのかもしれないけど、やっぱり、時間が必要だよね」
「・・・それは、・・・そうだね」
うーん、多分、俺の一番好きなゾーンというか、範疇の人なんだろうなあ。比べちゃ、いけないんだ、いけないんだけど、もう少し上のお妃様でもなくて、・・・ごめん、初めてぐらいの君でもなくて・・・。
そうか、どうせ、ここで、色々するんだろうから、先回りしてやれ、って、維羅は言ってるのか。考えると、確かに、胸糞悪いから、それもいいかもしれない。でも、それが、彼らに伝わるわけでもないけどさ。
このベッドで、ってこと?・・・そうなんだ。
「ん?決心着いた?」
「え・・・」
「まあた、色々、考えてたんでしょ?」
「・・・うん、まあ・・・」
維羅は、ゆっくり、口角を上げて、微笑んだ。それだけなのに、妙に、色っぽくて。
「本当に、俺のこと、好きなの?」
「そうよ、言ったでしょ。何度、聞き直すかなあ、それ・・・」
維羅と俺って、えーと、11歳も違うのか。
確か、向こうも、そのぐらい・・・
「もう、そろそろ、いいかな、襲っても」
「え・・・あ・・・わ・・・いきなりなの、維羅」
「これはね、処置」
「あ・・・ヤバいやつ、・・・あれ以来だから・・・」
「どれ以来?・・・」
「聞かないでよ・・・あ・・・、やめ・・・」
漏れなく、お姉さん系だ。素早いな、喋りながら・・・
・・・色々、含めて、やっぱり、上手い。
維羅の髪の色って、ブルーグレーっていうのかな、艶のある直毛のサラサラな髪。俺の下の方で、頭が揺れてる。少し、柚葉の髪色に似てる。そっと、頭に触ってみる。あ。
・・・あああ、見ないで、こっち。そんなのしながら、俺のこと、見ないでよ。来るじゃん、そんなの、もう、ダメだって・・・。
✿🏹
「あのさ」
「何?」
「俺だけ」
「うん?ああ、今度は、お返ししてよ。君、脚まだだから、今、難しいでしょ」
「ああ、ごめん」
「湖の方、行かない?あっちで、お昼にしようか。ゆっくり、立って。そう。玄関からは、一応また、杖ついてね」
「わかった」
「よし、じゃあ、行こうか」
維羅は、入り口で来た時のように、鍵をかけて、車に乗り込んだ。
こういうことの後に、何もなかったようにすまして、普通のことができるのって、本当に大人だと思う。切り替えっていうのかな。
事の後に、すぐ、舞台メイクしたりしていた、彼女たちを思い出した。数分で、舞台なんて人もいて、驚いた事もある。
維羅に、車、運転して貰ってのドライブ、俺の方が、女の子みたいだな。して貰ってばっかりだ。でも、しっくりくるんだ、この感じ。なんだか、よく、わかんないけど。
何故か、慈朗が、柚葉が「受け」の時、♀味の声上げる、って言ってたのを、思い出した。
「この辺、綺麗でしょ、いいねえ、薔薇も咲いてるしね」
薔薇ねえ、誰かさんの好きな花だ。
「ああ、これ、暁がね、持たせくれたんだよね」
「なんで、暁?」
「ランチに、何か、ほしいって言ったらね、これが来たの」
「これ?・・・嫌味かなあ、暁も」
「フルーツサンドだけど、ああ、私が好きなの。ごめん、なんか、リンクしたのかな?」
「ああ、維羅の好みだったら、いい、そういうことね」
「暁は、意地悪しないと思うよ」
「うん、そう思う」
「食べたら?こんなのね、女子は、皆、好きだから」
なんか、泣けてきた。イチゴサンドとか、なんだよ。
「数馬ぁ、解った。帰ったら、きちんとしよう。一緒にお風呂入るから。そんなんじゃ、困るんだけど?私だって」
「なんか、まだ、ダメだあ」
「今夜、完全に、恋人にしてもらうからね」
「維羅、無理してんじゃないの?」
「してない、こんなチャンスないと思ってる。手負いの黒髪の美少年が、心まで、こんなに傷ついて、私の前で、メロメロなんだよ。物にしない手はないでしょ?義理でできると思ってんの?」
「本当に?」
「うん、馬鹿ねえ、あんなにされても、わかんないんだ」
「・・・そんなこと、ないかも・・・」
維羅は、あやすように、キスをしてきた。
その後、しっかり、抱き締めてくれた。
やっぱり、維羅は柔らかい・・・。
~暗澹たる日々⑧につづく~
みとぎやのメンバーシップ特典 第七十七話 暗澹たる日々⑦
「一矢報いて・・・」 御相伴衆~Escorts 第一章
数馬の脚は、治ってきましたが、心の傷は、まだまだのようですね。
この辺りは、リアルに思いが心に刺さります。
彼女の好きなものを見たりするにつけ、ぐずぐずと心が崩れてしまう。
多分、一番、その辺りが、脆く、弱くて、そんな数馬が大好きなのですが・・・次回は、もう一つのカップル。その三の姫とアーギュ王太子の話が進んでいきます。
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