御相伴衆~Escorts 第一章 第111話番外編①「暗殺の夜」
「本日、全ての処理が終わり次第、帰還の途に就く予定です」
「長い間、ご苦労だった。あと一息となったな」
「その前に、まず一つ、不確定ではありますが、ご報告を」
「スメラギ第三皇女 女美架姫は、妊娠中のようです。まだ、ご本人の自覚もありませんが・・・。アーギュ王子の落胤の可能性もさることながら、時期から見て、恐らく、『御相伴衆』で『御指南役』の数馬の子を宿していると予想されます。これについては、今後のスメラギと、ランサムの関係性に大きく影響すると思われますが、・・・こればかりは、その子が生まれてみない限り、解りません。まずは、王子かどうかということ。そして、大事なのは、見かけのスペックが、どのように出るかということです。はっきりする形としては、東国の瞳の色が出るということ。この場合、最悪となると思われます」
「スメラギ皇后と第一皇子・・・それと、同様のことが、ランサムに起こるということだな。いや、それは、最悪ではなく、最良、もしくは、最適と言い直すべきだ。我が国にとっては、大きな可能性を見ることとなる。新王妃の席は、まだ埋まらず、その子どもが後継者ではない、ということだからな・・・」
「第二皇妃の巧妙な仕掛けが、ここにある結果を産む可能性を齎してもいます。アーギュ王子、つまりは、数馬の髪の色、『濡烏』です。髪色がそれで出たとしても、アーギュ王子の落胤と見なされ、スメラギとランサムに追い風となる組み合わせとなります。その完璧な組み合わせが、父アーギュの髪色、つまり、数馬の髪色のその『濡烏』と、母女美架の目の色です」
「成程・・・、君を御殿医に据えたことは、間違えなかったようだな。ご苦労であった。この件は、引き続き、別部隊にて、監視を続ける。このタイミングで、この事が発覚したのは、幸いであった。では、最後の命令を確認する」
「はい、この度、先日の高官接待の折、キナ0.2㎎を無事、頂いております」
「為すべき事は、解っているだろうな」
「皇帝陛下に、最期のお薬を投与するのが、私、御殿医の役目にてございます」
「失敗は許されない。その時は、その命を賭して被ること、その時は、自刃により、我が国にその責が及ぶことの無きように。実行後は、速やかに出国し、帰還すること」
「承知致しております」
「確実な結果を待つ。これは絶対命令である」
「わかりました。お任せください」
「無事、成功を祈る・・・彩香」
✿
数馬、部屋にいるのね。
この小さなカプセルは、特別調剤師の資格の者しか、調剤できないものなの。インクレイズをベースにして、コーティングされた睡眠薬が溶けた後、気付け薬が利く仕掛け・・・つまりは、身体が惹き上がった後、眠りにつき、必要な時に目が覚める・・・。
・・・私が動き出さないと、「何か」は起きないのよね・・・。
一か八かなんだけどね。火がどこで出るか、までは、計算はできないから・・・。とにかく、まずは、騒ぎが起こったら、月が、君を援けに来ることになってるからね。そしたら、指示した通り、上手く、逃げ伸びるのよ・・・。
いつも通りに、この部屋のドアを開ける。
今夜も、何の疑いもなく、私の側にいるのね。いい子ね。
君なら、きっと、どこでも、何があっても、生きていける力があるから。
「私のこと、好き?」
今日まで、楽しかったわ。ありがとう。
・・・さようなら、数馬。
御相伴衆~Escorts 第一章 第111話番外編①「暗殺の夜」
お読み頂きまして、ありがとうございます。
これはもう、こちらを読んでいたら、ネタバレしていたんですが・・・。
ちなみに、本編と対応している部分は、この話です👇
最後の台詞が、この話の中で、数馬との最後のやりとりに繋がっていきます。
暗殺者は維羅でした。
維羅については、第二章のどこかで、出てきた「彩香」という名前で、登場の予定です。
維羅の正体は、紫統とも繋がりがあるという、若い頃のエピソード
「紫の深淵」で解ります。
実は、noteでの最初の短編連載で、なんとなく、ネタバレしていたのです。
第二章に影響を及ぶ、展開が見えている部分もあり・・・?
いかがでしたでしょうか?
次回はまた、時間を巻き戻して、慈朗のエピソードになります。
お楽しみになさってください。
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