強い人
Hola Domingo
帰ってきた母からポツリと。
「彼女、もう長くないかも」
彼女との再会は、2カ国目の土地でだった。
転職が決まり、母から、ママ友がその地にいるということを知らされたことがきっかけだった。
幼稚園時代の記憶は正直なく、直接の関係ではなかったから、会うことはないだろうと思っていたんだけれど、結局2回ほどお家に遊びに行かせてもらった。
私のことを覚えていてくれたようで、かなり感激してくれていたのを思い出す。
彼女は離婚をし、その地で新しい恋人と生活をしていた。
母が言うには、彼女はなんでもそつなくこなす、前向きで強い人。良い意味で破天荒な人生を送っている人だった。
南米を旅行中、COVIDでその土地に移住。
キャラクターの声優のお仕事をしながら、休みの日にはウクレレ、フルート、小旅行を楽しんでいたそうだ。
太陽の光が差し込む大きな部屋で、ベランダにはハチドリが蜜を吸いにくる。
まだ慣れない地で奮闘していた私の話を、嬉しそうに、ときには心配そうに聞いてくれた。
まだ自作のトルティージャしか食べていない私に、久しぶりの日本食を振舞ってくれたことも懐かしい。
今こうして書いていると、昨日のことのように鮮明に思い出す。
そして一年前頃、コロナにかかった。
治りが遅く、病院に行ったところ、癌が見つかったということだった。
少しの間は、同じ生活を続けていたようだが、状態は悪化、日本に帰国せざるを得なくなった。
帰国をしてから、最初、顔を出した時には、まだ歩けていた。涙を目に浮かべ、「日本でまた会えるなんて」と。
そして、2度目。
ベッドに横たわった彼女の姿が脳裏から離れなかった。
こんなに短い時間で人が弱くなっていく姿を間近で見るのは、初めてのことかもしれない。
そんなときでも、彼女の心は強かった。
Adios Domingo