久しぶりの散策

 今日は訳あって大須観音へ行った。勿論一人で。とは言え、出費は700円ほど。スガキヤでソフトクリームを食べ、1クレ200円の太鼓の達人を叩き、あとは交通費。電気代諸々含めれば家で過ごすよりも安上がりなのかもしれない。
 流石は日曜日、商店街は人でごった返しており、前に進むのも少ししんどい。あたりを見渡せば恋愛おみくじではしゃぐ3人組、漫画やグッズを見るオタクたち(僕も含む)、未だにタピオカを売っているお店。若い人が目立つが、大須には寄席もあるので老人だって少なくない。多様性に満ちている。
 人ごみは決して好きでないのだが、こういう色んな人が色んな目的を持ちながら同じ場所を歩く、そんな雰囲気が僕は好きだ。多様性は若年層ほど強い傾向が現れるが、中高年の人たちもその多様性には不可欠。色んな人がいると体感できるエリアに身を委ねれば、自分の存在も許されるような気がする。
 
 大須に来た目的はエレキベースの下見だ。ネットで見つけた楽器屋に入ると、中はいかにもロックな雰囲気だった。木の模様が壁や床に貼られていて、日本人の文化の気質を完全に掌握された。落ち着く……
 やっぱりベースは高いな……と彷徨っていると、店員さんが声を掛けてきた。やはり大須、20代ほどの若い方だった。僕はバンドマンに偏見を持っていないつもりだが、単純に人間を相手にすることが苦手なので、萎縮しながら質問に答える。
 「ベースは影響受けたアーティストと同じモデルがいいですよ」と言われ、その後は「何でベースに興味持ったの? アニメ?」と続いた。オタクの甘い気持ちで楽器を始めようとしていると呆れられるのが怖かったが、決死の覚悟で「ぼっちざろっく」と答える。すると、突然彼は名刺の裏を見せてきた。そこには同作のキャラクターが。「これのことですか?」と言われてお互い笑ってしまった。
 その後、山田リョウが使っていたベースと同じモデルのものを案内された。15万。高い。ランクダウンしたものも8万。僕は4万ほどで済ませるつもりだったので、やっぱり楽器に対する甘い気持ちが映し出される。「ちなみに予算は?」という質問ははぐらかした。
 まあ本気でやるならその位になるのか、と無理やり自分を納得させて、一旦別れを告げる。「劇場版の放映が始まる前に買っちゃいましょう」。オタクに優しいなこの人。
 
 楽しく過ごすことができたのは良かったが、店員さんともまともな会話ができなかったことが悔やまれる。もっとコミュ力があればと今日も呪います。明日もきっとコミュ力を呪うことでしょう。
 
 

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