慢性腎不全患者の疼痛有病率:4万人のデータによるメタ解析
▼ 文献情報 と 抄録和訳
慢性腎臓病患者における疼痛の有病率についてのシステマティックレビューとメタアナリシスによる検討
Lambourg, Emilie, et al. "The prevalence of pain among patients with chronic kidney disease using systematic review and meta-analysis." Kidney International (2021).
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景・目的] 慢性腎臓病(CKD)患者にとって,痛みは一般的な症状でありながら,十分に治療されていないことが多く,その有病率は一般人口よりもはるかに高い。このシステマティックレビューの目的は,CKD患者における痛みの有病率と痛みの種類について理解を深めるために,入手可能なすべての定量的エビデンスを統合することであった。
[方法] 2021年1月15日までに,4つのデータベースと灰色文献を検索した。研究間の異質性をさらに検討するために、複数のサブグループ分析とメタ回帰を用いてランダム効果メタ分析を行った。収録された研究の質はNewcastle-Ottawaスケールを用いて評価し、エビデンスレベルはGRADEアプローチを用いて決定した。
[結果] 116件の研究が40,678人のデータを報告した。メタアナリシスの結果、疼痛の全体的な有病率は60%(95%信頼区間56~64)、慢性疼痛は48%(42~55)、神経障害性疼痛は10%(6~15)であった。痛みの有病率は、腎移植患者では46%(37-56)、透析患者では63%(57-68)、非透析CKD患者では63%(55-70)だった。筋骨格系の痛みは、CKD患者では42%(28-56)、透析を受けている患者では45%(36-55)、腎移植患者では腹痛が41%(7-86)と最も多い痛みの症状であるようだった。
[結論] このように、CKD患者のすべてのサブグループは、痛みの負担が大きい。したがって、この問題に対する認識を高め、この分野の政策やサービス提供に反映させることが重要です。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
慢性腎不全のイメージをもつための概論として、以下のnoteがとてもわかりやすかったので参照あれ。
さて、今回の研究を臨床に当てはめて考えてみると、以下のようなものがある。
■ たとえば、Hip fracture患者の合併症にCKDがある。ということは病前から疼痛を有していた可能性は60%、特に筋骨格系の疼痛の可能性が高い
■ また、その疼痛は慢性疼痛だった可能性も高いから、心理社会的なケアも必要になってくるかもしれない
■ そして、その疼痛と今回の受傷による疼痛は明確に分けた上で評価・介入をしていく必要がありそうだ
すなわち、疫学を知っていることは、準備された心;プリペアードマインド(事前に症状の予測をしたり、評価・介入の照準を合わせること)をつくることに役立つ。
チャンスは、準備された心に降り立つ Chance favors the prepared minds
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