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加齢とともに弓状に変形し、空洞が大きくなる大腿骨シャフト

▼ 文献情報 と 抄録和訳

大腿骨シャフトの年齢および性別による形状の違いに関する人口ベースの3次元解析

Jung, I. J., et al. "Population-based, three-dimensional analysis of age-and sex-related femur shaft geometry differences." Osteoporosis International (2021): 1-8.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[概要] 本研究は、大腿骨の反りと幅に焦点を当てた大腿骨の幾何学的な違いを扱ったものである。三次元骨格解析を用いて解析した結果、大腿骨の反りと幅は生涯にわたって増加し(女性に多い)、髄管の広がりは50歳以降の女性のみで、男性にはないことがわかった。

[背景・目的] 加齢に伴う大腿骨形状の変化が、脆弱骨折や不全骨折につながるかどうかは、まだ不明である。特に非定型的な大腿骨骨折においては、大腿骨や大腿骨弓を含む下肢形状の役割が議論の対象となっている。本研究では、3次元スケルトンを用いて大腿骨軸の形状を解析することを目的とした。

[方法] 両大腿骨のコンピュータ断層撮影画像を入手した。年齢と性別に合わせて1400人の参加者を登録し、年齢(10年単位)と性別に応じてサブグループに分けた。このCT画像を用いて,これらのデータセットから再構成とパラメトリック処理を行い,ヒト大腿骨の解剖学的要素の3次元サンプリングを行った.大腿骨のコンパクトな表現を得るために、スケルトン化のプロセスを行った。このスケルトン化により、すべてのパラメータを年齢と性別に応じて比較することができた。

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a スケルトン化の投影図(加重中心点:緑の点、内側のスライスポリゴン:青の点、最大円と半径:緑の円と線)。 b 大腿骨の3次元スケルトン化の結果。重み付けされた中心点の延長線:緑の線、X軸、後顆の延長線、Y軸、X軸に直角な線。 c 最大円(緑の円)とその半径(r)。髄液の直径=2r

[結果] 大腿骨の長さは424.4±28.6mmで、男性の方が長かった(P < 0.001)。髄管の最小直径は8.9±2.0mmであった。曲率半径(ROC;大腿骨の弓状変形の大きさを示唆する-小さいほど曲がっている)は906.9±193.3mmであった。男性は、大腿骨の長さ、大腿骨の外径、髄管の最狭径が大きかった(それぞれ、P < 0.001)。女性はROCが有意に小さかった(P < 0.001)ROCは、20歳から89歳の間に、男性で19.4%、女性で23.6%減少した。大腿骨の幅は、男性で11.4%、女性で24.5%、生涯にわたって増加した。50歳から89歳までの間に、女性では髄管が32.7%増加したと思われる。

[結論] この形状分析により、大腿骨の曲がりと大腿骨の幅は加齢に関連して増加し、女性では50歳を過ぎると髄管が広がることが明らかになった。この横断的な研究により、加齢に伴って生じる大腿骨シャフト形状の重要な年齢および性別関連の違いが明らかになった。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

股関節骨折後の患者のレントゲン画像を見ていると、「なんだ?大腿骨が丸く弓状に変形している」という方がいる、特に女性に多い印象があった。
今回の論文は、こと女性において、弓状変形が強くなり、骨の内部を見てみると空洞が大きくなっているということを明らかにした。
骨折の脆弱性は、骨密度などの骨実質の性質から紐解くことができる(以下noteの関連図がわかりやすい)。

今回、もう一つの視点が加わり、骨の構造的特徴・形状からも解釈できそうだ。
弓状に変形していれば、鉛直方向の力の「折れ応力」への分散が大きくなりそうだし、空洞(髄管)が大きければ、そりゃ折れやすいだろう。

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